国民の祝日「山の日」追加で、日本人はまた貧しくなる --- 内藤 忍

アゴラ

昨日の衆議院本会議で、8月11日を「山の日」とする祝日法改正案が可決されたそうです。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」のが目的で、今国会中に成立する見込み。2016年から、国民の祝日は年間15日から16日に増えることになります。

そもそもの経緯は、創立100周年を迎えた日本山岳会という組織が 「海の日があるなら山の日があってもいいのではないか」と国民の祝日を目指す活動を始めたことにあるそうです。


休みが増えるのが単純にうれしいという人もいるかもしれません。しかし、私は国民の祝日を増やすことにはネガティブです。

独立して、自分で時間をコントロールするようになってわかったことは、平日に休みを取ることの豊かさでした。

箱根や伊豆といった近場の施設は、平日は渋滞もなく車で2時間もあれば気持ち良く到着できます。平日限定のお得なプランもありますから、空いていて、サービスも良いのに、価格が安いのです。

平日の午後、青山界隈のカフェに行くと、優雅にティータイムを楽しんでいる女性のグループをたくさん見かけます。週末に行くと行列のお店でも平日なら2時間、3時間とゆったり時間を過ごすことができるのです。会社で仕事をしていた25年間、そんな優雅な世界の人たちの存在さえ知りませんでした。

あるいは、月曜日に都心の飲食店に行けば、休日には2時間3時間待ちの人気店に並ばずに入れたりします。週の前半はお客さんが少ないですから、お店によってはワンドリンクサービスしてもらえることも。出かける人が少ないので、お店が込まず、店内もスペースをゆったりと使うことができます。

昨年から、個人投資家の皆さまとスタディ・ツアーで海外に行くことが多くなりました。7月3日からも、「内藤忍と行く!2泊5日バングラデシュ海外不動産視察ツアー」に出かけますが、基本は週末を使って、平日の休みを極力少なくするように日程を立てます。そうしないと、会社で仕事をしているビジネスパーソンがお休みを取りにくいからです。しかし、週末を使ったプランは、予約が取りにくく、価格も割高になりがちです。平日に行けばもっとリーズナブルでフレキシブルなツアーが組めるのにと思います。

ゴールデンウィークやお盆、そして正月。特定の時期に多くの人が一斉に休みを取って、観光地に押しかける。どこも混雑して、渋滞で時間がかかり、価格は割高なのにサービスのレベルは下がる。

国民の祝日は、このような「集中による豊かさの阻害」を促進します。

日本人が豊かになるためには、休みを分散すること。そうすれば、多くの人が働いている時に稼働していない施設を、もっと有効活用できるからです。国民の祝日でみんな一緒に休むのではなく、分散して休暇を取得することを促進させる。そうすれば、多くの人が、もっと優雅な休日をリーズナブルに楽しめるようになるのです。

「山の日」制定で、国民の祝日が無いのは6月だけ。そのうちに6月にも今度は「川の日」が出来るのではないかと揶揄したくなります。個人的には、もうこれ以上国民の祝日は必要ありません。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年4月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。