バロンズ誌:強気派はやや後退も楽観は変わらず --- 安田 佐和子
2009年3月から開始したブル相場は5年に突入し、61ヵ月目を迎えようとしています。1871年からみると、ブル相場の中央値は50ヵ月、平均は67ヵ月。統計だけで判断すると、息切れの予感が漂います。
ウォールストリートは今後の相場展開をどうみているのでしょうか。バロンズ誌が最高投資責任者(CIO)やポートフォリオ・マネージャーなどウォールストリート関係者152名を対象に実施した「ビッグ・マネー調査」で教えてくれます。
米株相場へのスタンスは「強気」との回答が56%と、6ヵ月前に実施した前回の68%から低下していました。ただ米株相場が「過剰に評価されている」との回答は18%で、「適正に評価されている」が73%。米株に及び腰になっているわけではなく、「慎重ながら楽観」のスタンスをとっているんですね。対して米株相場に「弱気」との回答は9%で、前回とほぼ横ばいでした。
強気・弱気派の米株予想平均をみると、
▽ダウ平均
(強気派)
年末 1万7418ドル(4月25日時点の引け値から約10%の上昇)
2015年6月末 1万8702ドル
(弱気派)
年末 1万5375ドル(4月25日時点の引け値から約6%の下落)
2015年6月末
1万5000ドル
▽S&P500
(強気派)
年末 1980p(4月25日時点の引け値から約6%の上昇)
2015年6月末時点 2063p
(弱気派)
年末 1713p(4月25日時点の引け値から約8%の下落)
2015年6月末 1673p
▽ナスダック
(強気派)
年末 4649p(4月25日時点の引け値から約14%の上昇)
2015年6月末時点 4855p
(弱気派)
年末 3919p(4月25日時点の引け値から約4%の下落)
2015年6月末時点 3857p
強気派は、春にかけ調整が著しかったナスダックに上昇余地が大きいと予想しています。弱気派もナスダックも、そんなに悲観的でないのがポイントですね。弱気派ですら2015年末までにダウ平均に対し1万5000ドルは割り込まないと予想しているということは、弱気相場入りの確率が極めて低いという認識の現れともいえます。
「向こう12ヵ月間に市場が10%下落し調整局面に入る」との予想は63%ながら、基本的にウォールストリートの大勢はやっぱり楽観度が強いんです。
調査内容から判断して、マーケット関係者が楽観的な理由は、以下の3つ。
1)米経済が2.5-3.0%とゆるやかながら安定的に成長する
2)低金利
3)約半数が安定的なインフレを予想
3)のインフレについては「前年より脅威となる」との回答は51%でしたが、「変わらず」は44%で「定かではない」も5%。ざっくり半数は、インフレ急伸シナリオを描いていないのです。
だからこそ、ポートフォリオに占める株式の割合が大きい現状は今後も概して変わらず。
▽株式
現状 71.1%
6ヵ月先 71.2%
12ヵ月先 70.5%
▽債券
現状 17.6%
6ヵ月先 17.5%
12ヵ月先 17.9%
▽キャッシュ
現状 6.6%
6ヵ月先 6.0%
12ヵ月先 5.9%
▽その他
現状 4.8%
6ヵ月先 5.3%
12ヵ月先 5.7%
米連邦公開市場委員会(FOMC)が量的緩和第3弾(QE3)を年内に終了させるとの見方が64%である点を踏まえると、キャッシュの割合が低下し続けその他が上昇している点も興味深いです。ただし金先物に対しては、前回に続き弱気派が大勢で66%に達しました。年末予想は1326ドルと、4月25日引け値から3%しか上昇余地をみていません。
アウトパフォームする株式相場の国・地域はというと、12ヵ月先は米国がトップでした。
▽12ヵ月先
・米国 58%
・欧州 23%
・エマージング 14%
しかし5年先になると、エマージングに熱い視線が注がれています。
▽5年先
・米国 33%
・欧州 11%
・エマージング 45%
6-12ヵ月先に選好する銘柄としては景気拡大期にあり企業もうず高く積み上がる手元資金を設備投資やM&Aなどに振り向ける兆候をみせるなかネラル・エレクトリック、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、バークシャー・ハサウェイ、デルタ航空、グーグルなどが挙げられました。モメンタム銘柄では、1-3月期決算がC型肝炎治療薬「ソバルディ」の驚異的な売上に支えられ利益3倍増を達成したギリアド・サイエンシズ、セルジーンなどが顔をのぞかせています。
反対に回避銘柄は、モメンタム銘柄のツイッターを筆頭にフェイスブック、ネットフリックス、テスラ・モーターズなど。他にチポトレ・メキシカン・グリルや決算が嫌気されたアマゾンが加わっています。
個別銘柄では、大型優良株が人気。
▽FOMCが第1弾の利上げに踏み切る時期、予想一覧は以下の通り。
・2015年1-3月期 9%
・2015年4-6月期 28%
・2015年7-9月期 28%
・2015年10-12月期 12%
・2016年1-3月期 7%
・2016年4-6月期 5%
・2016年7-9月期 3%
・2016年10-12月期 0%
・2016年以降 8%
2015年4-6月期と同年7-9月期に集中するなど、2015年内を予想する回答者が全体で78%と圧倒的多数を占めました。2016年内および2016年以降は23%にとどまっています。
▽第1弾の利上げ後、米株の反応はどうなるかとの質問には
・下落 54%
・上昇 25%
・影響なし 21%
▽イエレンFRB議長は良い仕事をしているかとの質問には
・イエス 83%
・ノー 17%
イエレンFRB議長と米株に蜜月関係が築かれているだけに、絶大なる信頼感が寄せられています。だからこそ、第1弾の利上げにも米株は「上昇」、「影響なし」との回答が46%と半数近くに達したといえるでしょう。
▽米10年債利回り予想、その割合は以下の通り。
(1年先)
2.5% 6%
3.0% 44%
3.5% 44%
4.0% 4%
4.5% 0%
5.0% 0%
(5年先)
2.5% 2%
3.0% 5%
3.5% 12%
4.0% 24%
4.5% 25%
5.0% 31%
最後にご紹介したいのは、ウォールストリートで活躍する回答者の成績見通し。顧客向け運用成績でS&P500を上回るとの見通しは72%と、6ヵ月前時点の65%を上回っていました。バロンズ誌は「改善の余地が残る」と辛口なものの、今年の運用が困難と見る向きが少ないことは確かです。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年4月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。
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