必要な仕事内容の「文書化」とその課題 --- 玄間 千映子

2014年04月30日 13:40

ようやく、日本の雇用に「春」がやってきそうです!

今、アベノミクスの政策の一環で、「柔軟な働き方のあり方」が検討されているといいます。

「柔軟な働き方」ということを文字通りに受け取れば、働きたい人がいつでも自分の気の向くときに、気の向いた場所で働けばよい、ということでしょう。

それって、今はやりの「ノマドライフ」とか、「フリーエージェント」とか云われているのと似てるじゃないって、私は思うのですが、「いやいや、甘いね。それって残業代がゼロなんだぜ!」ということを囃し立てている記事も目にします。

実際の会議では、どんなことが討議されているのでしょう?


ものの見方が分裂したときは、「元々はどうなの?」を確かめることが必要です。そこで、発端となったネタ元を下記に付けておきました。↓

第4回 経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議 配布資料

「残業代ゼロ!」を声高に唱える方は、たぶん資料2の中の9ページ目、「新たな労働時間制の創設」のところを見落としているのでしょう。

そこで、そこから肝心な部分を抜き出しておきます。

(1)基本的な考え方

・業務遂行・健康管理を自律的に行おうとする個人が対象
・一定の要件を前提に、時間ではなく、成果ベースの労働管理

職務内容(ジョブ・ディスクリプション)の明確化は前提要件

・目標管理を活用し、職務内容・達成度、報酬などを明確にした労使双方の契約とし、業務遂行の自由度を拡大

肝心なのは、前提条件のところです。

このように、この考え方を適用するには「職務内容の明確化」が前提条件なのですね。

つまり「仕事の文書化」ってことです。

「ジョブ・ディスクリプション」は、雇用のインフラ!

仕事を文書で記したものを、「ジョブ・ディスクリプション」といいます。

完全雇用が長らく続いた日本では、全くといってよいほど馴染みは薄いものですが、それを社会に備えている他国では、その文書が経済変動から人の暮らしを守り、ワークシェアや在宅勤務を円滑に進める機能を果たしている、といってもよいものです。

もちろん、「賃金と働きのバランスを取るため」に生まれてきたという背景はありますが、そこだけに着眼し、あたかも「社畜」や「ブラック職場」の大量増産かのような記事や意見は違うと思います。

そういう意見は、「ジョブ・ディスクリプション」という文書が働く側にとってどれだけメリットがあるかに、気づいていないところから生まれているとしか云いようがありません。

このメリット性については、私が2003年に出版した本「リストラ無用の会社革命-ジョブ・ディスクリプションが雇用を変える」にまとめてあります。

「ブラック職場」予備軍の見分け方

そういうことから、雇用の社会インフラとして、是非とも備えることが必要な文書なのですが、大きな課題があります。

それは、「書き方」です。「ジョブ・ディスクリプション」を備えても「書き方」で、ブラック職場になってしまうことも十分にあるのです。

もし、示された職務の内容が「受付、電話対応……」というように取り組む課題や業務名が列記されているもの、「…など」「…その他」という曖昧な表現が付いているものは、アブナイですね。ブラック職場となる可能性大です。

そういう書き方をしない文書というものの代表が、「マニュアル」です。

でも、多くの仕事はマニュアル化なんてできません(その道を進んだ結果、生まれたのが膨大な量のマニュアル化、という米国手法です)。

では、どうすればいいのか?

人の「内面で行っている情報処理の様子」を文書にすれば、よいのです(この活動を文書化することが、なかなか上手くできなかったので、ジョブ・ディスクリプションのことを日本の社会に紹介はしたものの、私は姿を潜めてました(笑)。

さんざん文書化の研究をした結果、ようやく研究職という「内面で行っている情報処理」そのものが職務という方々の働きも、文書化することができるようになりました。

私は、その文書の名称を「業務内容取り決め書」というように、職務記述書とは異なるものとして、呼び分けています。

誰と、取り決めるのかっていえば、「IT」とです。ITとの業務分担が混乱していることが、日本の雇用の最大の課題です。

ITとの協働が、肝心です!

日本の会社は元々、年功序列型を運用していました。

人こそが財産という、考え方が日本企業のベースだと思います。

それが上手く機能しなくなったのは、ITとの協働が上手くいかなくなってきたからなのです。

人と人との協働はお手の物の日本の人々でも、相手がITという機械との協働は少し事情が違っていたのです。

雇用が混乱している現象は、米国社会も同じように見えます。

ですが、米国社会とは問題の原因が違います。

ITは、人間から雇用を奪います。
ITは、利便性をもたらします。

ですから残念ながら、人間から雇用を奪うというのは避けようのない流れです。

その流れに対応することがIT時代に暮らす、私たちには欠かせないのです。

IT時代に人の雇用を守るには、ITと人との協働の体制を整えることが必須であり、それには、仕事の文書化-「ジョブ・ディスクリプション」の整備に基づく雇用管理は正道です。

・在宅勤務で家庭で育児をしながら勤務を続けたい
・定年後でも自分の職場経験を社会に役立てたい
・そして何より、地方の活性化です。

在宅勤務が加速できれば、会社が首都圏集中していても、雇用の場を地方に拡散させることも容易なことになるでしょう。

玄間 千映子(げんま ちえこ)
(株)アルティスタ人材開発研究所 代表

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