第2外国語選択における時代ごとの傾向 --- 片桐 由喜

2014年05月01日 09:45

■はじめに

新年度が始まった。小学生から大学生まで、新入生も在校生も新たな春には希望とワクワクとした昂揚感を持って校門をくぐるにちがいない。ところで小学校から高校までは、学生たちほとんど同じ授業を受ける。高校の場合は、幾分、選択肢が広がるが、それでも、国語、英語、数学などの基本科目は、クラス全員が同じ教室で一緒に勉強する。そして、同一科目の場合、クラスや教える教師が違ったとしても、教科書は同じである。


しかし、大学はそうではない。授業の大半が選択制であり、これは小学校から高校までと大学の大きな違いの1つである。つまり、大学ではどの講義を履修するかは、多少の制約はあるにせよ、基本的には学生の選択に委ねられている。さらに同じ科目でも(英語など)、担当教員が異なれば教科書も異なる。ただし、教員養成系、医歯薬系を含む理系は必修科目が多く、社会科学系に比べて選択の幅は狭い。

さらに、高校までと大学の違いとして、大学では英語に加えて、第2外国語の履修がほぼ必修として課されていることがあげられる(最近では、第2外国語の授業がある高校も増えているが)。この第2外国語選択には、その時々の社会情勢が大きく影響する。入ったばかりの1年生でさえも、これに敏感に反応する。

もう一つ、選択に影響を及ぼす要素が教員の『鬼・仏』度である。この要素は語学選択以上に、他の選択制科目において、いっそう大きな影響力を持つ。教員の単位認定が甘いか、厳しいか、などに左右されて選択科目を決めるなど言語道断と言いたいところである。しかし、かつての我が身を振り返ると、とても学生のことを言える立場ではない。それゆえ、この点については言及しないこととする。

本コラムでは第2外国語の選択における時代ごとの傾向ついて概観しようと思う。

■1970年~80年代前半の傾向

多くの大学では入学式に先立ち、第2外国語を選択させる。クラス分けや担当教員配置などをすませ、早々に授業を始めることができるようと考えてのことである。したがって新入生は簡単な案内文を頼りに、そして、見聞きする世の中の情勢などを眺めながら、初めて接する言語を選択する。

1970年~1980年当時、日本はまだ欧米諸国から学ぶことが多いと考える学生たちが大半であったように思う。したがって、第2外国語の主流はドイツ語、フランス語であり、ちょっと変わった選択肢が中国語、ロシア語などであった。

■1980年代後半以降の傾向

この頃、中国や他のアジア諸国が大きな経済成長を示し、NIEsと呼ばれるようになったことは周知のとおりである。これらの国々が日本のビジネス交渉国となり、彼らとの取引が商機をもたらすとみなされ始めた。その雰囲気を素早く察知して、中国語を第2外国語として選択する大学1年生が大幅に増えた。中国語人気の始まりである。

■2000年代の傾向

2002年のサッカーワールドカップの日韓合同開催、2003年から始まる「冬ソナブーム」によって、日本人は韓国に対して積極的に関心を持つようになり、これを反映して、韓国語を第2外国語に選択する新入生が激増する。これに併せて、それまで韓国語の授業を開設している大学は多くなかったことから、各校が韓国語の講義開設を積極的に進めるようになった。

■最近の傾向

本学の第2外国語選択において異変が起きている。これまで定員超過で履修者を抽選で決めていた中国語と韓国語の定員割れ現象である。他方でスペイン語、ロシア語の履修希望者が増えたそうである。

中国語と韓国語の希望者減は、おそらく全国的な傾向であろう。その背景は、いうまでもなく、この間の日中、日韓関係の悪化である。これ自体の是非はともかく、イマドキの大学1年生であっても、多少は世の中の動向に関心を払っていることがわかる。また、日本と同様のことが韓国でも起きている。大学において日本語を履修希望する学生の激減である。その結果、韓国語の開講数を減らす大学もあると言う。

■今後のゆくえ

外国語を学ぶ重要性と必要性を否定する者はいない。そもそも、私たちにとって外国語の習得は目に見えない財産である。だから、学ぼうとする動機が、どんなものであれ、かまわない。あってはならないのは、ある国の言葉を学ぼうとする若者の気持ちを削ぐような社会の雰囲気や国の外交姿勢である。

片桐 由喜
小樽商科大学商学部 教授


編集部より:この記事は「先見創意の会」2013年4月29日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった先見創意の会様に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は先見創意の会コラムをご覧ください。

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