バロンズ誌:アリババ、アップル、長期金利低下が示す今 --- 安田 佐和子

2014年05月12日 07:25

バロンズ誌、アップ・アンド・ダウン・ストリートではもちろんアリババの新規株式公開(IPO)に触れています。19世紀から世界経済のナンバーワンだった米国からその地位を奪取するタイミングで、中国の電子商取引最大手が米株市場に殴り込みをかけるわけですから、当然でしょう。

しかもアリババ、米国でいう電子商取引のアマゾンというだけでは説明できません。簡易ブログのツイッター、旅行サイトのオービッツ、オンライン・ストレージのドロップボックスなどといったサービスを提供する中国版企業を抱えています。

一言では片付けられない、グーグルをもしのぐ競合。

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(出所 : Quartz

IPO規模は200億ドルともいわれ、フェイスブックの160億ドルをゆうに超えること必至。IPO史上最大とまではいかずとも、中国農業銀行の221億ドル、中国工商銀行の219億ドル、AIGグループのアジア子会社AIAグループの205億ドルに次ぐ水準となりそうです。

時価総額をみると、上限と下限で大きな違いが横たわります。

alibaba-1

(出所 : WSJ

問題は、上場のタイミング。ダウ平均が終値で最高値を更新しS&P500も最高値をうかがうなか、思い出されるのが投資運用会社ブラックストーンのIPOです。

ブラックストーンは2007年6月にIPOを実施しました。最高値を射程距離に収めていた時期で、IPOから約4ヵ月後にダウ平均は当時の最高値を更新。その約1年後、金融危機の激震が走ったことは言うまでもなく。ブラックストーンは、2014年まで上場来の高値を回復するのを待たねばなりませんでした。

アリババはというと、米連邦公開市場委員会(FOMC)が量的緩和を縮小するタイミングで上場に踏み切ります。アリババの共同創業者ジャック・マー氏は、ブラックストーンのスティーブ・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)のように高値で売り抜けられるのか。バロンズ誌は疑問を投げかけています。

アップルのビーツ買収にも、同コラムは懐疑的です。ヘッドフォン・メーカーで音楽ストリームサイトを展開するビーツの買収は、オンデマンド型の音楽配信事業に本格参入する証ともてはやされています。ところが、アップ・アンド・ウォールストリートは手厳しい。アップルが業界の先駆者らしく第一線で画期的な商品を世に送り出して来た関わらず、「がなり立てるベースとゴテゴテしたロゴマークで空の旅を居心地悪くさせる」会社を買収したことに不快感を隠しません。ソニーの隆盛まで持ち出し、「栄光は移りゆく(sic transit gloria)」と結んでいます。

米国ではむしろ、ビーツの共同創業者のドクター・ドレが「ラッパーとして初のビリオネアになる」とセンセーショナルに伝えられています。確かにカリフォルニア州で最も治安の悪い地域「Straight Outta Compton(コンプトン出身)」のドクター・ドレがビリオネアに成り上がるというのは、アメリカン・ドリームそのものであります。

ドクター・ドレ、アップルの幹部に就任するとの報道も。

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(出所 : hiphopdx)

アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートとストリートワイズの両方で取り上げられていたトピックは、低水準にある長期金利。かつてはグリーンスパン元FRB議長が2005年2月に議会証言で「長期金利の謎(connundrum)」と語り、バーナンキ前FRB議長は2005年3月(当時はFRB理事)「世界的な貯蓄余剰(the global saving gluts)」と説明していましたよね。

アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートではカットウォーター・アセット・マネジメントのクリフ・カルーソCEOの言葉を引用し、長期金利低下のポイントを3つ挙げています。

1)独債をはじめ欧州債よりも割安(独10年債利回りは1.5%、米10年債利回りは2.6%)

2)公的・民間の年金基金6兆ドルのグレートローテーション(例えば10%が株式から債券へシフトすれば6000億ドル、QE2の規模に匹敵)

3)利回り追求は変わらず(債券強気相場が終了しても、利回りに着目した投資フローが流入へ)

ストリートワイズはドイツ銀行のストラテジスト、アラン・ラスキン氏の指摘を取り上げ、必ずしも米経済の異変を意味しないと伝えます。テーパリング中とはいえ継続するFedの資産買い入れ、年金のリバランス、ショートカバーなどが長期金利を押し下げており、ラスキン氏は「米金利の低下は株式市場にポジティブ」とまとめていました。

イエレンFRB議長は少なくとも量的緩和終了後も低金利を維持する構えをみせ、小型株にバブル警戒をちらつかせる程度。女将がお酌する手を止めない限り、流動性相場という宴には継続の余地があるのでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年5月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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