初めて都の「不健全図書」に指定されたマンガを読んでみた --- おときた 駿

アゴラ

ドワンゴとの経営統合が本日のトップニュースとなっているKADOKAWAですが、一方でこのような都政マターでも一部を賑わせております。

都の青少年育成条例、新基準を初適用 KADOKAWA「妹ぱらだいす!2」不健全図書に


コトの背景を説明いたしますと、東京都の条例には

「東京都青少年の健全な育成に関する条例」

というものがありまして、青少年を保護するために様々な規制が設けられています。そしてこの中の

「不健全な図書類等の青少年への販売等の制限」

という項目が平成22年、石原都政の時に改正されました。従来の条例では、全年齢を対象とした図書類の中で

・性的感情を刺激するもの
・残虐性を助長するもの
・自殺または犯罪を誘発するもの

は条例に基づき東京都が「不健全図書」に指定し、青少年に対して販売等の制限がかけられるというものでした。

平成22年の改正で何が変わったかと申しますと、上記の3点に加えまして

・強姦や近親相姦を社会的に許されるかのように描いているもの
・性交等に対する抵抗感を弱め、性に関する判断能力の形成を妨げるもの

についても「不健全図書」として指定されることになりました。旧来からある基準は通称で「旧基準」、改正によって追加をされたものは「新基準」と呼ばれています。

そしてこれが制定された時に新基準に曖昧かつ主観的な部分が多く含まれることから、

「表現の自由が侵されるのではないか」
「過度な自主規制が進み、作品の文化性が失われる!」

ということが大いに懸念されて議論が巻き起こり、それは国会における「児童ポルノ禁止法」とともに現在に至るまでも議論が続いています。

このあたりについて詳しく知りたい方は、下記団体のサイトが一番親切かと思います。

AFEE エンターテイメント表現の自由の会

前置きが長くなりましたが、今回なぜこれがニュースになっているかと言うと、新基準が施行されてから丸2年以上、「新基準」が適用された不健全図書は一冊たりとも出てこず、今回が初めての適用となったからです。

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これについて、

「児童ポルノ禁止法が国政でまさに実務者協議に入っている
このタイミングとは、何か『大いなる力』が働いているのではないか?」

なんて疑惑があるとも聞きましたので、この流れが『表現の自由』規制に向かう第一歩とならないかという懸念も含めて事実関係を知りたいと思い、早速担当局にレクチャーをお願いしました。

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(画像はITmediaニュースより)

不健全図書に指定された作品は、

「妹ぱらだいす!2 ~お兄ちゃんと5人の妹のも~っと!エッチしまくりな毎日~」

…なんか、タイトルを書いてるだけで恥ずかしいんですが。。
議員のブログの中に、こんな表現があっていいのであろうか!←

先に私の結論から申し上げますと、「こりゃ仕方ねーわ」という感じです。この件での東京都の判断は極めて妥当なものかと思います。

今回、新基準に該当した作品は

・主人公♂とその妹5名が同居し、性行為に及ぶという近親相姦行為の描写がある
・もともとは18禁のアダルトゲームが原作で、そのスピンアウト作品である

ということで、まあ控えめに言っていわゆる「エロ本」です。むしろなんでこれを成人指定じゃなくて、全年齢対象で売ろうとしたんだ…。

その作品を「不健全図書」とするかどうかの決定は、「東京都青少年健全育成審議会」という都議会議員も含めた有識者で構成される第三者機関で行われるのですが、そこに至るまで

・設定にどれだけリアリティがあるか(ファンタジーではないか)
・(局部や性行為への)修正の度合いはどの程度か
・擬音がどれくらい出ているか
・体液はどれくらい出ているか

など、かなり多角的な検討がなされているようです。特に後者の2つ、すごいな…。

実際に担当局が調査に使った「不健全図書」を見せてもらいましたが、すさまじい量の付箋がびっしりと本につけられ、しっかりと読み込まれている跡が見えました。

というわけで、権力者が恣意的に「表現の自由」を奪うことも懸念されている本条例の適用ですが、少なくとも今回の件については極めて妥当な運用がされたと言えそうです。

とはいえ、「自由」は放っておけば守られるものではありません。

今後もこうした条例がしっかりと適切に運用されるかどうか、都議会議員や市民が監視していかなければならないでしょう。

そして青少年を守るため、日夜「不健全図書」の発見に粉骨砕身している東京都の活動にも、今回の件をきっかけに少しだけ興味をお持ちいただければ幸いです。

東京都青少年健全育成審議会

それでは、また明日。


編集部より:この記事は都議会議員、音喜多駿氏のブログ2014年5月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった音喜多氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。