為替も株価も地球規模で俯瞰して考える時代 --- 岡本 裕明

アゴラ

昨日の株式市場はすっきりと上昇しましたが、為替と株価は概ね狭いレンジの膠着状態に入っています。為替は101円台、株価は14000円を挟んだ動きでその値動きは小さなものとなっています。通常、この持合いは、エネルギーが蓄積された後、どちらかに大きく動き出すことが多いとされています。株価は過去の持合い18回に対して11回が上だったという指摘もあります。


さて、上放れ、下放れと称するその大きな動きを決めるのは拮抗した先行きの見方を決定づけるニュースが往々にしてそのシグナルとなります。今回、チェックポイントであった日銀の政策決定会合では想定通り、特段、目新しい発表が行われず、より一層、混迷を深めたということでしょうか?アメリカ側からも前回のFOMCの議事録が開示されましたが、特段大きなニュースとなる状況になく、動きづらい展開が想定されます(カナダの市場関係者からはsleepyと揶揄されてます)。

では少し、外に目を向けてみましょう。

中国とロシアは遂にその天然ガスの供給に関するディールをまとめました。10年越しの交渉でした。その結果、ロシア、ガスプロムが中国に供給する天然ガスは価格にして40兆円という途方もないボリュームであり、中国の20%の需要を賄うことになるそうです。

これが日本の株価や為替にどう影響するか、地球儀を一周、反対に回さねば答えが出ません。

まず、ロシアは苦しんでいた資源輸出について一定の成果を上げることができました。これはまず、外交的に(いや、表面的に)中国とロシアの結びつきをより強固にする結果となります。日本はやりにくい状態になりますが、プーチンのことですからしらっと日本にも天然ガスは売り込みに来るはずです。つまり、ロシアの東方政策はいよいよ本格化するとみています。

では、天然ガス料金の支払いを滞納しているウクライナ。ロシアは強硬な姿勢を維持しており、ガス代の前払いがないならガス供給を止めるとしています。80%も値上げしたロシアもロシアですが、過去の巨額の未払いが溜まっているウクライナもウクライナです。ロシアの強硬姿勢は中国とのディールをまとめた今回、その意思を貫く可能性は高まったとみた方がよいでしょう。

そうなれば困るのはヨーロッパです。まず、ウクライナ経由のパイプが止まれば欧州へのガスの供給量が不安定になりかねず、また、ウクライナへのガスないし代替燃料の供給を欧米側が支援することで燃料資源のひっ迫も考えられます。現在、原油価格が100ドルを超えており、ガソリン等の価格上昇を引き起こしている中でそれをさらに後押しする可能性があるということでしょうか?

また、日本では紹介されていませんが、メドベージェフ首相の「『第二冷戦期』が刻々と迫ってきている」という発言を通じたリスクもいやおうなしに目線に入ってくるでしょう。これは世界経済がスタグフレーションを引き起こすリスクを背負うということになります(いわゆるインフレ率はコアと称され、顕著な値上がりのガソリン価格は反映されていない点に留意すべきです)。

欧州はGDPと失業率の回復遅延により金融緩和も取りざたされています。アメリカもFOMCの議事録からは決してフルスピードで回復しているような状況にはありません。日本は労働力不足から今後、物価上昇が見込まれますが、企業収益には必ずしもプラスに転じない可能性もあり、もろ手を上げて喜べる状況にはないかもしれません。

とすれば、基本的には地球儀ベースで考えると微妙な経済状況が見て取れるように思えます。

日本の株価が円安、アベノミクスという材料で上げ、私も昨年末は2014年も快調な回復を期待しておりましたが、ここから先は一進一退の状態で世界経済のみならず、政治や外交問題を含め、極めて神経質な展開を想定した方がよさそうな気がします。

世の中、経済を取り巻くファクターが増え続け、株価を語るにも地球儀を俯瞰しなければいけない時代になったのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年5月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。