原子力規制委、独善的な行動を改めよ

2014年05月28日 08:54

吉村元孝、伊藤英二 共著
(NPO「日本の将来を考える会」理事)

2012年9月19日に設置された原子力規制委員会(以下「規制委」)が活動を開始して今年の9月には2周年を迎えることとなる。この間の5名の委員の活動は、本来規制委員会が行うべき「原子力利用における安全の確保を図るため」(原子力規制委員会設置法1条)という目的からは、乖離した活動をしていると言わざるを得ない。

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独立性の強い三条委員会として新たに組織された規制委は、制度としては素晴らしいものである。しかしながら、一部委員の偏った審査判断によって再稼働の異常な遅れがもたらされている。この大きな問題を解決するには、任期が来た委員については交代させ、体勢を立て直させるしかない。

まず問題となっている具体的事例を見て行こう。

1・各原発から申請されている再稼働の審査が遅々として進んでいない

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現在まで約9カ月で約100回の審議が行われており、原子炉の設計を分担する更田豊志委員と地震対策を行う島崎邦彦委員長代理が主査を務め、それぞれ40-50回程度精力的に立ち会っている。その活動には頭が下がるが、多数の原発からの申請を並行して迅速に審査することは不可能である。

その結果、優先的に審査をする原発(九州電力川内原発)を決めざるを得ず、速やかな審査が行われる状況にはなっていない。このような状況になっている原因は、本来審査をする規制庁(昔の原子力安全保安院)を信用せず、自らの指揮のもとで審査を進めようとしているからである。

2・断層の有無による立地の適合性の判断

能登半島地震、中越沖地震などに見られるように、これまで想定されていなかった断層によって地震が発生した。このような状況を踏まえて、原子炉の安全を考える際に、想定すべき地震の大きさを見直し、耐震性の確認が必要となった。

この確認のために、活断層の調査が事業者によりまず実施された。再稼働の審査にあたっては、島崎委員長代理は重要施設の下に活断層が無いことなどの新たな条件をつけながら審査を始めた。

そのような条件とは、活断層の定義を従来規定されていた活動の時期を3万年以降から、12万年以降に延ばし、確認が難しい場合は40万年以降まで延ばした。そして、震源にはなりえない破砕帯やグレーの活断層についても「活断層でないことは否定できない」との理由で範囲を拡大した。

ここまで活断層の範囲を広げれば、再稼働が可能な原子炉の範囲は限られてしまう。その結果、敦賀、もんじゅ、六ヶ所村の再処理工場などについては、再稼働・稼働の審査にすら入れない。我が国のように地震国で無数に断層がある国で、活断層の範囲を拡大して判断するならば、原発の立地はできなくなるかもしれない。

米国ではその様な地点でも、工学的に対処できることが証明できれば原子炉を設置できることになっているが、規制委は、この様な地点では工学的な対処ができるはずがないと決めつけ、原子炉の設置を困難にしようとしていると思われる。

3・どうして過剰な基準ができるのか

原子力規制委員といえども勝手に規制基準を作れるわけではない。従来の原子力安全委員会は諮問委員会の審議を経て基準を策定してきた。規制委では、そのような委員会の整備ができていなかったことから、法律的に根拠がない有識者会合なるものを作って、自らの判断に都合の良い有識者を集めて基準を策定したのである。

5つの発電所の活断層の評価に際して、規制委員会は「活断層の専門家」の推薦を4学会に要請した。結果として、活断層・変動地形学の専門家が多く選任されたのであるが、彼らは「破砕帯等の調査」の専門外である。広島大学の奥村教授によれば、調査対象は「破砕帯等」であって「活断層」ではない。破砕帯調査は断層岩や断層物質分析、構造地質学の範疇であって、活断層の調査を行う変動地形学者の専門ではなく、専門が異なるとのことである(注1)。また、京都大学岡田名誉教授も委員の選任の隔たり、本質的な問題を議論せず、活断層であるか否かだけの議論に終始しているなど指摘している(注2)。

更に、選定された変動地形学を専門とする有識者の多数は、日本活断層学会の役員等であり、この日本活断層学会は、島崎委員長代理が震災前まで会長を務めていた学会で、この人選には恣意的な意図を感じざるを得ない。また、一部の委員は青森、福井、大阪など各所で原発反対派の会合でも活断層の講演するなどしており、予見を持った有識者には公平な判断は期待できない(注3)。

注1・東北エネルギー懇談会 ひろば435号特集 「活断層調査を巡る問題~原子力施設直下・近傍の断層と地震~
注2・「大飯発電所における破砕帯と海成段丘の調査と問題点」岡田篤正京都大学名誉教授2011年11月、日本活断層学会 2013年大会論文
注3・大阪での講演会チラシ

このような状況から、2013年8月には、福井県知事から内閣官房長官あてに以下のような提案が出される事態となっている。
(1)委員会には活断層の評価等を行う常設の専門組織がなく、公平・公正な科学的結論を得るためには、これを専管する新たな政府機関の設置が必要不可欠である。
(2)委員会の規制活動が孤立・独善に陥らないようにするためには、委員会の運営状況を常時監視し、改善を勧告できる「監視・評価機関」を政府内に設置することが必要不可欠である。

4・法律的に根拠をもった外部委員に切り替えて改めて判断すべき

2013年7月の規制委員会の席で、大島委員は「・・・また必要に応じて、外部専門家の出席を求め意見を聞くにしても、(中略)、大いに想定されるのは、日本原電側の主張と、それから、規制委員会側、有識者会合の結論が平行線になってしまう。外部専門家の出席、どういうふうに外部専門家を決め、その運用など方法論をきちっと決めるべき」と意見を述べている。

福島原発事故を経験した日本では、従来からの規制を抜本的に見直すことに意味があることは容認できる。しかし、そのような重大な変更は、正当に選任された専門委員会の審議を経て、総合的に判断すべきであり、委員とその仲間による少数で専横的に決めてよいものではない。とりわけ活断層の有無についての判断基準が大幅に変更になった点は、多くの関係者の納得が得られていない重大な問題である。

まさに、法律で規定されていない有識者会合ではなく、この度設置法に基づき設置された原子炉安全専門審査会など、法律的に責任を有した委員によって重要事項の審査を実施すべきであろう。

5・審査に当たり電気事業者が排除されている

電気事業者は、原発の運転に関して重要なステークホルダーであるにも拘らず、審査の事前説明などを電気事業者に対して行うこと無く審議を進めるような、意見交換を軽視する態度が目立つ。また13年1月には、有識者会合に有識者に手渡している事前資料を電気事業者に対して手渡したことに対して規制庁職員が処分を受けるなど、不合理な例が散見される。

6・海外からの意見が軽視されている

海外の規制機関の経験者から専門的な意見を聞く機会が設定されているが、形式的に聞きおいているというだけであり、多くの有意義な意見が規制委の態度、体制、活動に反映されていない。規制委は透明性を標榜しているのであるが、海外からの意見あるいは13年6月に実施された海外から訪日した外部専門家との会議を記載した議事録も公開されていないのが実情である。(会合発表文・原子力規制委員会

7・新しい規制委員に交代すべき

今年9月には大島委員、島崎委員の2年の任期が満了し交代することになっている。(編集注・退任は決定。5月27日、入稿は26日)現規制委員は国会の承認もなく、国会が開かれていないことから緊急事態として前政権が選任したものである。前回の衆議院選挙で政権が変わったが、自公政権は規制行政の滞りを考慮して事後承認をしてしまった。これからは現政権が責任をもって新しい委員を選任しなければならない。これまで問題のある行為の多かった島崎委員を再任するならば、断層問題を理由として廃炉になった場合や原発の再稼働の遅れの責任は現政権が負うものと認識しなければならない。

まとめ

規制委の本来の役割は、従来の原子力安全委員会と同様に、その下に置かれている規制当局(以前は原子力安全・保安院、現在は原子力規制庁)に具体的な審査を実施させ、当局からの審査報告書を吟味し、両安全専門審査会の助言を得て最終判断するということである。しかし規制委員が規制基準の整備、多数の個別の審査に直接乗り出し、規制委員が判断を下すという非現実的な対応となっているのである。

なお、遅ればせながら4月には原子炉安全専門審査会委員及び核燃料安全専門審査会委員が選任された。これは専門家が集まって、技術的な問題について勧告を行うことを目的とする組織である。

これまで指摘した問題点が改善されると期待していたところであるが、将来の見直しはあるとしても、委員長は「原子炉安全専門審査会には、国内外で発生した事故、トラブル及び海外における規制の動向に係る情報の収集、分析を踏まえた対応の要否について助言を求めることから始める」こととしている。これまでのやり方を変えたくないとの意図が見え隠れしている。

規制委が尊重すべき上位法である我が国の原子力基本法では、原子力発電を有効利用することがその基本精神として謳われているのであるが、規制委はこの法律の存在すら認識していないのではないかと思われるほど、原子力の有効利用とはかけ離れた活動を行っている。このまま現状を放置しておいたのでは、日本の国力は益々そがれ、次世代に大きな禍根を残すこととなろう。

この状況を改善するには、例えば優れた規制を行っていると評価される、海外の規制当局(米国NRC等)の規制経験や、あるいは既にある規制体制を参考にすることができよう。原子力規制委は、三条委員会という独立性の高い組織であることから、政府の干渉を排し独立して判断を下すべきであるが、一方、国民の意見を尊重しなくて良いということにはならない。三権分立の精神から、国会による規制委の活動の監視を充実させることが喫緊の課題である。

これらの改善提言については次号以降に改めて取り上げることとしたい。

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