危機感が煽られない危機 ~ 原発停止によるCO2排出増加 --- 石川 和男

アゴラ

5月30日の読売新聞ネット記事によると、来月中旬に閣議決定される予定の2013年度エネルギー白書の全容がわかったとのこと。

<記事抜粋>
・原子力発電所の運転停止で電力会社が出す温室効果ガスが10年度から2年間で約30%増。
・日本全体の排出量も約8%増。
・「原子力政策の再構築」との目標も掲げ、原発再稼働を進める方針。
・電力会社の排出量が増えたのは、発電時に二酸化炭素を出さない原発の代わりに、大量排出する火力発電がフル稼働したことが要因。

記事にある温室効果ガス排出量の増加に関しては、経済産業省が昨年から試算を公表している。下の資料1にある「うち電力分」の 374 → 486 が約30%増を示している。これを今回の2013年度エネルギー白書に明記するという話。


エネルギー起源のCO2排出量が増えたのが原子力発電所の停止に伴う火力発電量の増加であることは、誰が計算しても同じ結果になる。CO2排出量の増加を原発再稼働の理由に挙げるのはけしからん、との声が必ず出される。

しかし、世界の常識に対して無責任に当り散らしても何ら解決にならない。福島第一原発事故以降、日本国内ではCO2問題への危機感は鳴りを潜めた感があるが、地球規模の議論では、CO2問題には危機感が満ち溢れている。

それをいかに抑制・削減していくかに、相当の力が傾注されている。今の日本におけるCO2問題は、危機感が煽られない危機である。こういうのが一番怖い。

京都議定書の達成状況と、CO2など温室効果ガス排出量の推移を、それぞれ下の資料2、資料3として掲載しておくので、適宜参考にされたい。カネのかかるCO2対策よりも、カネのかからないCO2対策の方が好いに決まっている。

<資料1:京都議定書目達期間の温室効果ガス排出量の推移>
0001
(出所:経済産業省資料

<資料2>
0002
(出所:環境省資料

<資料3:温室効果ガス排出量の推移>
0003
(出所:環境省資料


編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2014年6月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。