「国会待機」を廃止せよ

池田 信夫

日経新聞に「官僚の残業減へ半歩」というコラムが出ている。「4月末から与党議員が国会審議の質問内容を事前に各府省に伝える期限を2日前の午後6時とするルールを導入。女性陣に喜ばれ、霞が関での評価も高くなった」という話だが、こんなことを自慢する政治家にあきれた。


官僚の残業時間の半分以上は、この国会待機だ。ひどいときは当日の朝まで引っ張る議員がいるので、関係各部署の職員が徹夜で待機する。世界にも例をみない悪習だ。そもそもこんな議員のために事前に答弁資料をつくる必要はない。「ご質問の件については、調査してのちほど答える」といえばいいだけだ。

それを大臣に恥をかかせないために、膨大な人的資源の無駄が発生している。私が昔、天皇金貨の取材をしたとき、答弁資料を見せてもらったら、ロッカー一杯あった。「何回答弁したんですか」と聞いたら、榊原英資課長(当時)は「1回」といっていた。

国会論議のほとんどは、こういう無内容な儀式だ。議会政治の本場イギリスでは、与野党が討論するが、日本の野党は永久に政権につかない野次馬だから、政府に恥をかかせることで得点をあげる総会屋のようなものだ。昔の社会党は文字どおりの総会屋で、「1回横になったら300万」などという「国会対策費」の相場があった。JBpressにも書いたが、自民党も似たようなもので、日本の政治家は「オール野党」なのだ。

そもそも法案は内閣が提出しているのだから、責任は官僚ではなく内閣にある。それなのに、すべて官僚に丸投げして答弁資料を棒読みすることが当たり前だと思っている。野党もそれに甘えて、質問の〆切に「質問権をしばる」などと反対している。官僚は彼らを「先生」と持ち上げているが、裏へ回ると「自民党以外の議員はゴミみたいなもの」と言っている。

このように形式的には最高の「国民主権」を代表して立法することになっている国会議員が、実質的には最低の総会屋でしかない状況は、形式的な権威と実質的な権力を分離する日本古来の知恵だろうが、何も決まらない国会を生み出している。

国会待機なんか廃止して、公務員は定時に帰宅すべきだ。それで答えられないような質問をする議員が悪い。立法能力もないくせに、テレビの前で「爆弾質問」して格好つけるために官僚の時間を浪費する議員は、議会政治を破壊する総会屋だ。