構造的問題に苦しむ欧州経済 --- 岡本 裕明

2014年06月06日 12:10

マリオ・ドラギ欧州中央銀行総裁が金融緩和をようやく決めました。政策金利は0.25%から0.1%ポイント落として0.15%としました。特筆すべき点は市中銀行が余った資金を中央銀行に一時的に預けておく際の金利付与(利付)がマイナス0.1%となり、預金をすればお金を払わなくてはならない形としました。これで退蔵されている市中銀行の貸し出し意欲をそそるという趣旨のようです。


悪戦苦闘する欧州経済、そして、ドラギマジックとも言われ金融政策の手腕を買われたECB総裁にしても欧州経済のドライブは手品のようにはいかないようです。

欧州の三重苦と言われているのはデフレ(ディスインフレ)、低成長、ユーロ高であります。金融緩和はユーロ安に方向転換すると考えられていましたが、為替市場は見事にそれを裏切っています。この24時間のユーロドル相場を見るとECBの政策が発表された瞬間、ユーロはドルに対して1%程度安くなりました。同じことはユーロ円でも見て取れます。ところが、それから3時間後には元の水準どころか、ユーロ高に転換してしまっているのです。明らかに織り込み済みで政策発表の効果は無視されたということになります。

利付をマイナスにするという発想は欧州中央銀行のみならず、日銀の更なる緩和手法の一つの手段として残されています。日銀の0.1%の利付撤廃は白川総裁時代から取りざたされていたにもかかわらず、黒田総裁になった今でも行われていません。多分ですが、その効果と悪影響を考慮したものではないかと思います。

悪影響とは無理に貸出先を増やし、その結果、不良債権を増やせば最終的に逆効果ということになり、無意味な対策と考えた節があります。ところが、欧州ではそこに踏み込んだのであります。これに対して市中銀行は金利を払ってでもブタ積みと称される中央銀行への預け戻しはし続けることになるでしょう。なぜなら不良債権発生のコストより逆利付の方がまだまし、と考えられるからです。

では、欧州はなぜ、日米のような大胆な量的緩和を行わないか、でありますが、これは量的緩和を受けて国債を買い付ける場合にユーロ圏のどの国債を買うか、そのバランスや戦略が難しいからだと思われます。寄り合い世帯の難しさとはこういうところにあるのでしょう。

欧州経済の根本的問題は総需要不足にあるとされています。総需要不足は単に景気が悪く、個人消費が上向かないだけなのか、成熟した経済の中、消費性向が下がっているのか見極める必要があります。これは日本の経済の運営を考える上でも非常に参考になる検証にでしょう。それは欧州が移民受け入れによる経済的刺激をつづけたにもかかわらず、総需要不足、消費の力が足りないということは移民の目的やタイプによっては経済全体への刺激を伴わないということになりうるのです。

つまり富裕層移民に伴う資産の移動がある場合には移民の経済効果は大きいですが、労働力確保のための移民は経済効果を生みにくいということになり得るのです。この点は学者の研究が待たれるところでしょう。

欧州は労働力の硬直化、アングラ経済、高賃金、伝統からの変化力欠如など構造的問題が多く、金融政策では表面的対処はできても政策的変化、抜本的変化を伴わない限り長期低迷どころか、没落する欧州ということになりかねません。これ以上低迷を続けるとヌリエル・ルービニ教授あたりが「再び始まる欧州解体の危機」などとさも自信ありげに言い出しかねない気がします。

市場では早くも第二段の金融緩和を期待する声が出ています。マリオ・ドラギ総裁の頭痛の種は取れるのでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年6月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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