バロンズ誌:ECBの政策決定とFed、そしてボラティリティ --- 安田 佐和子

2014年06月08日 15:03

バロンズ誌、今週の特集はモルガン・スタンレー。同社の低リスク・債券トレーディング縮小戦略が、ウォールストリートの「新たなモデル」として定着するか試されると伝えています。

アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、欧州中央銀行(ECB)の政策決定を取り上げていました。

▽欧州中央銀行(ECB)の政策決定と、評価と金融市場見通し

>リファイナンス金利10bp引き下げ、中銀預金金利マイナスへ引き下げ、証券市場プログラム(SMP)で不胎化停止、貸出に焦点を置いた長期流動性供給オペ(TLTRO)の始動、現行のオペでの応札額全額供給を2016年末まで延長、融資促進をねらい資産担保証券(ABS)の市場育成——などを決定

>量的緩和(QE)は見送り

>長期にわたる低金利継続を表明した一方、融資促進策は十分ではなく日銀やFedと同じくQE実施の道筋たどる可能性

>BCAリサーチの為替戦略レポートにあるように、ユーロ建て資産上昇も

>ドラギ総裁の思惑と裏腹に、ユーロ高加速か

>ECBの政策決定の翌日にイタリア10年債利回りは2.642%と過去最低、ドラギECB総裁が「ユーロを守るために何でもする」と発言した2012年7月は7.75%

>2009年から160%、年初来から7%上昇してきた欧州株の株価収益率(PER)は17倍でも、シティ欧州部門は低金利こそ「適正な水準」を超える場面でバリュエーションを補強する要因と予想

ECBが行動を起こしてから約2週間後、米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えます。

▽FOMCの注目点と、米株相場のセンチメント

>イエレン体制は米5月雇用統計に支えられ着実な政策運営を継続し、17—18日開催のFOMCは追加で資産買い入れ額を100億ドル減額へ

>QE終了後も低金利を継続するとの見通しが主流となり、VIX指数は11と金融危機以前である2007年2月以来の低水準で引け

>おかげでインベスター・インテリジェンスの強気センチメントは62.2%と、1955年に統計を開始してから2番目の高水準

>上記の強気指数は高値形成時点に60%を超える傾向があり、1987年8月は60.8%、2007年10月は62%、2004年12月の62.9%は過去最高

>FOMCでの焦点はFF金利誘導見通し目標を示す「点」に注目、2015年見通しの上方修正もありうる

ECBの低金利維持、ユーロ高に伴うQE期待で欧州株はゆるやかな上昇トレンドを保ち、米株も支えられる公算大。ただしVIX指数が示すようにボラティリティが低下し続け、市場のセンチメントも強気に傾くなか、FOMCが3月当時のようにFF金利見通しを前倒しさせ相場に冷や水を浴びせるシナリオも想定しておきたい。

ストリート・ワイズも、VIX指数の低下と株式相場の関係に注目。VIX指数は32営業日連続で14以下を保ち、S&P500はその間に2.4%上昇しています。2007年2月26日までVIX指数は140営業日連続で14を下回っていたことを踏まえると、ボラティリティの低下は株価下落につながっているようにはみえません。

VIX指数は中国シャドーバンクのデフォルト懸念やエマージング通貨安で上昇を経て、低下

vix

(出所 : Stockcharts)

むしろ足元のVIX指数の低下は、マーケット関係の「読み間違い」を現している可能性も。Fedのテーパリングで米金利上昇、エマージング株下洛を見込んだものの逆を行く展開となり、UBSのストラテジストであるジュリアン・エマニュエル氏は「困惑が不安をあおり、投資家は様子見スタンスを決め込んでいる」と現状を分析しています。

では今後どうなるのか。マーケット・フィールド・アセット・マネジメントのマイケル・ショール最高経営責任者(CEO)は、通常の場合こそボラ低下は強気相場終焉を示唆するものの今回は違うと予想。米経済に死角は見当たらず、Fedが低金利政策を維持し、企業業績も堅調な今なら、ボラ上昇こそ「欠乏していた買い意欲の源泉となりうる」と強気なんです。

シティグループのスティーブ・イングランダー為替ストラテジストは、別の認識をもっています。Fedがボラティリティを活用する可能性に着目。低金利を確約したためボラティリティの低下を招いた結果、米株相場をはじめ米債相場、不動産など資産価格を押し上げてきました。ダドリーNY連銀総裁やフィッシャー・ダラス連銀総裁をして、低いボラリティティこそ不適切なリスク・テークをけしかける要因と警告する始末。経済を安定成長軌道に乗せたいFedとしては利上げこそ控えたいものの、バブルも防ぎたいはずで、だからこそイングランダー氏は経済・金利見通し(SEP)のFF金利見通しを高めに設定し市場にボラティリティを加えることで、泡(froth)を取り除くと見込んでいます。そういえば、2013年12月FOMC議事録から14年4月FOMC議事録でも、警戒を払っていましたよね。

▽アップル、頭打ちの予感

アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートへ話を戻します。アップルの株価は、1対7の株式分割を発表した4月23日から6月5日までに24%上昇してきました。市場から大歓迎という趣きの株式分割、アップルの歴史をひも解くと意外な実態が浮かび上がります。

アップルはこれまで、3回にわたって株式分割を実施してきました

・1987年4月22日

・2000年4月19日

・2005年2月11日

以上3回とも、株価は分割実施後の3-10営業日以内に高値を遂げてから下落へ反転していたんです。50日移動平均線を割り込むにいたりました。特に1987年はブラックフライデー、2000年はITバブル崩壊という大激震に見舞われたので、なおさらです。

6日に米証券取引委員会(SEC)に正式分割を申請し、アップルの発行済み株式数は現在の約8億6100万株から、60億株以上へ急増します(発行可能株式数は18億株から126億株へ増加)。株式分割を通じ、株価は6日の終値645ドルから9日には97ドル付近へ下がる見通し。お手頃になってファンが株式取得に回る期待も大きいですが、株主は増えた株数分を売却し分割以前の水準を維持する傾向があるのも事実。分割後にリンゴが甘みを失うリスクに注意したいところです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年6月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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