ローマ法王のアジア重視政策 --- 長谷川 良

アゴラ

オバマ米大統領はアジア重視政策を強調しているが、世界に12億人以上の信者を有するローマ・カトリック教会の総本山、バチカン法王庁もここにきてアジア重視政策を鮮明化してきた。アジア教会は南米教会に次いで信者数が急増している地域だ。信者離れが加速する欧州エリート教会から信者の増加が続くアジア地域にバチカンの重点がシフトするのは当然かもしれない。具体的には、フランシスコ法王は8月に韓国訪問、来年初めにスリランカとフィリピンの訪問が控えている。同時に、法王の中国訪問がバチカンの現実的課題となってくると予想されている。イタリア日刊紙ラ・レプブリカが6月10日報じたところによると、アジア重視政策の中でも、法王の中国訪問実現が最大の優先課題という。


フランシスコ法王は5月24日から3日間、ヨルダンの首都アンマンを皮切りに、イスラエルのベツレヘムとエルサレムの中東の3都市を訪問したばかりだが、8月14日から韓国訪問が控えている。フランシスコ法王は4月24日、韓国の天主教(カトリック教会)大田教区長の兪興植主教と会見し、韓国の珍島沖で起きた旅客船「セウォル号」沈没事故の犠牲者を哀悼し「韓国民すべてに深い哀悼を表す。若者に会いに行く訪韓を控え、多くの若い生命の犠牲を非常に残念に思う。韓国民がこの事故をきっかけに倫理的・霊的に生まれ変わることを望む」と強調している。

フランシスコ法王は8月14日から18日の韓国訪問中、大田や忠清南道一帯で開かれる「第6回アジア青年大会」に参加する。同時に、北朝鮮の地下教会で苦しむキリスト信者たちへの連帯を表明する機会として、北への平和の祈り集会が計画されている。

スリランカの日刊紙コロンボ・ページによると、フランシスコ法王は来年1月13日から15日まで、シンハラ人とタミル人が対立するスリランカを訪問する。そこでは殉教したJoseph Vaz (1651~1711)の列聖式が挙行されることになっている(ヨハネ・パウロ2世が1995年、同司教を列福している)。バチカンは法王のスリランカ訪問の公式日程をまだ公表していない。

フランシスコ法王はブラジル訪問からの帰国途上の機内記者会見の中で、アジア重視政策を吐露している。その理由として「前法王べネディクト16世はアジア教会を司牧できなかった。だから、私はアジア教会を訪ねていきたいのだ」と述べている。

ところで、べネディクト16世が中国との関係正常化に力を入れてきたことは良く知られている。中国の地下教会の信者宛への手紙を発表し、連帯感を表明してきた。中国当局側とは外交関係樹立に向けた交渉が行われたが、関係改善には到らなかった。両国の最大の障害は中国側がバチカンの司教任命権を内政干渉として拒否していることだ。中国カトリック教会は1950年以降、ローマ忠実の地下教会と中国官製聖職者組織「愛国協会」に所属する聖職者・信者とに分裂している。

なお、中国政府の公式統計では信者数は570万人だが、非公式では1200万人と推定されている。その他、地下教会に所属する信者数は約1000万人だ。カトリック信者を含む同国の宗教者総人口は今日、中国共産党員数をはるかに上回っている。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。