エネルギー需要は2100年に倍増へ--世界的・長期的視野の検討を・上

2014年06月14日 07:59

早瀬 佑一
エネルギー・環境研究会

エネルギーレビュー誌2014年3月号に掲載)

はじめに

産業革命以降の産業・経済の急速な発展とともに、18世紀初めには約6億人だった世界の人口は、現在72億人まで増加している。この間の化石燃料を中心としたエネルギーの大量消費は、人類に生活の利便さ、快適さ、ゆとりをもたらしたが、同時に、大気汚染、温暖化等の地球規模での環境問題を引き起こし、今やまさに全世界で取り組むべき大きな問題となっている。


世界の人口は、今世紀後半にも100億人を超すとみられ、これにともない、水、食糧と共にエネルギー需要は大幅に増加し、資源問題、環境問題がますます厳しくなることは避けられない状況である。

本小論は、試算に基づき、このような世界的・長期的なエネルギー問題について、いくつかの課題を提起するものである。

1・今世紀末のエネルギー事情

国連は世界人口推計(2012年改訂版)[1](引用は下に掲載)において、現在72億人の世界の人口は、2050年には96億人、2100年には109億人に達するとの予測を公表している。特に開発途上国(非OECD諸国)の人口増加が著しく、アフリカでは、現在世界の約15%(11億人)の人口が2100年には約40%(42億人)に達すると予測されている(図1)。

001

人類が幸福で快適な生活を営み、持続可能な社会を構築していくためには、水、食料と共にエネルギーが必要不可欠である。国際エネルギー機関(IEA)の世界エネルギー展望2013年報告(WEO2013)[2]によれば、現在世界人口の18%を占める先進国(OECD諸国)の人々が一次エネルギーの42%を消費しており、開発途上国の人々と比べて一人あたり3.3倍のエネルギーを消費しているとされている(図2)[3][4]。

002

先進国におけるエネルギー需要の伸びは、節電や省エネ、エネルギー効率の向上等の努力により抑えることが可能と思われるが、今後、開発途上国では、先進国並みの生活レベルへの向上を目指して一人当たりのエネルギー消費量が増えることは必至であろう。

ここで、WEO2013(2011年データ)と国連の世界人口推計をもとに、以下のような大胆な仮定をして2100年のエネルギー需要を予測してみた。

・先進国の一人あたりの一次エネルギー消費量は、今後も現在と変わらない(増加しない)。

・開発途上国の一人あたりのエネルギー消費量は、現在(2011年)の値から増加し、2100年時点で先進国平均の半分になる(注1)。

これらの仮定の下での試算結果を以下に示す(図3)。

003

・2100年の世界全体の一次エネルギー消費量は、現在に比べて倍増する。

・特にアフリカでは、一次エネルギー消費量が現在の世界全体の5%から33%にまで大幅に増加する。さらにインド、中国を加えると、世界のほぼ半分を占めることになる。

・一方、先進国の一次エネルギー消費量は、現在の世界全体の42%から23%に低下する。

すでに近年、開発途上国を巻き込んでエネルギー資源獲得競争が激化し、その結果、エネルギー価格が高騰している。かつての二度のオイルショック(1973年および1979年)やロシアによる欧州諸国への天然ガス供給遮断(2009年)で経験したように、国家間の利益のぶつかりあいや政治的・軍事的な思惑により、エネルギー供給が大きく左右される可能性が今後とも決して低くないことを忘れることはできない。

2・環境保護に必要な視点

IEAの世界エネルギー展望2012年報告(WEO2012)[5]によれば、現在、世界の一次エネルギー源の約80%は化石燃料に依存しており主要なCO2出源となっている。さらに約40%は発電へ利用されているが、その75%が化石燃料による火力発電が占めている(図4)。

004

世界各国の有識者らが気候変動に関する科学的知見をとりまとめた政府間パネル(IPCC)の第五次評価報告書(2013年9月)[6][7]においては、「地球温暖化については疑う余地がなく、このまま温室効果ガスの継続的な排出が続けば、今世紀末には平均気温が最大で4・8度上昇し、平均海面水位も最大で82センチ上昇する可能性がある」と警鐘が鳴らされており、エネルギー消費に伴う温室効果ガス排出の問題は、地球規模で対処すべき深刻な課題となっている。

さらに同報告書は、図-5に示すように、各種シナリオを分析・評価した結果として、21世紀末の気温上昇を産業革命前と比して2度以下に抑えるためには、2050年までに全世界のCO2排出量を1990年レベルと比して50%削減、2100年には実質ゼロにすることが求められるとしている。

このような状況を踏まえ、世界(先進国および開発途上国)の政治のリーダー達は、温室効果ガス削減に向け解決策を模索し、国際的な合意を図ろうと努力を重ねている(注2)。

3・エネルギーの選択肢と今後の課題

一次エネルギー源としては、化石燃料を利用する化石エネルギー(石炭、石油・シェ-ルオイル、天然ガス、シェ-ルガス、メタンハイドレ-ド)、非化石燃料を利用する原子力エネルギーと再生可能エネルギー(太陽光、太陽熱、風力、水力、バイオマス、地熱等)がある。

一方、一次エネルギーの利用先は図-4に示すように、主として電気(発電)、輸送用燃料、熱の三種類に区分される。これら以外にも燃焼時にCO2を排出しない水素利用などもあるが、水素は一次エネルギーではなく、一次エネルギーあるいは二次エネルギーである電気を使って生み出された二次エネルギーないし三次エネルギーと言えるので、ここでは特に言及していない。

利用先に対してエネルギー源を見ると、発電利用については、前記三つのエネルギー源が適用可能であるが、輸送に関しては化石燃料(一次エネルギー)あるいは電気、水素等の二次、三次エネルギーが主流になると考えられる。ここでは一次エネルギー源に焦点を当て、上記三タイプの中から、将来のエネルギー需要とCO2対策に着目して検討する。

(1)化石エネルギー

化石燃料を燃やす火力発電は、大規模かつ安定供給が可能であり、産業革命以降の産業・経済の発展を支えてきた。一方、発電過程等で大量のCO2が生成されるため、環境保護の観点からその排出量を極力抑制することが必要である。

その方策として、石炭から石油、天然ガスへと炭素含有量の少ない化石燃料へと転換が進められてきたが、資源量及びその入手の容易さ、経済性の観点から石炭はその重要性を未だ失っていない。このため発電所の排気(煙)中からCO2を回収、貯留する技術開発(その典型はCCS:Carbon Capture & Storage)が国内外で進められている。温暖化防止に有効となるほどの膨大な量のCO2を安全に処理することは、そのために大量のエネルギーを必要とし、容易なことと思われない。シェ-ルガス、メタンハイドレ-ト等新しい資源の活用も考えられているが、CO2発生源という点では従来の化石燃料と同じ問題を抱えている。

(2)原子力エネルギー

原子力発電は、燃料物量が圧倒的に少ないことによる輸送・備蓄の容易さや、ほとんどCO2排出のないこと、さらに経済性も火力に比べ遜色のないこと等の特長を生かすと共に、エネルギー資源の拡大・多様化の観点から、先進国が先鞭をつけ、発展途上国も着々とそのウェ-トを高めてきた。

そのような中、三年前に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故は全世界に衝撃を与えた。世界各国は、この過酷事故を教訓とした安全基準の再評価等を実施し、必要に応じて安全対策を講じた上で、自国の原子力プログラムを着実に進めることとしている。

国際原子力機関(IAEA)の世界の原子力発電炉2013年版[8]によれば、2012年12月末現在、運転中の発電用原子炉は計437基、建設中が67基、計画中が102基で、うち開発途上国がそれぞれ100基、54基、70基となっており、新設における開発途上国のウェートが高くなっていることが分かる。

原子力エネルギー利用でのもう一つの大きな課題は、高レベル廃棄物の処分であるが、政府が前面に立ち、これまで以上に社会的・国民的な合意を得なければならない。

以下(下)に続く。

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