文昌克氏にみる「韓国メシア思想」 --- 長谷川 良

2014年06月16日 08:43

韓国の聯合ニュース(日本語電子版)は6月13日、「韓国の新首相候補に指名された文昌克元中央日報主筆が2011年、在籍するキリスト教会での講演で、日本による植民地支配と南北の分断は『神の意思だ』と主張したほか、民族をおとしめる趣旨の発言をしたとして批判されている」として、同氏が実際、首相に任命されるかどうかは流動的となったという。


同じように、産経新聞は12日電子版で、「文氏は過去に教会での講演で『怠け者で自立心が足りず他人の世話になることがわが民族のDNA』とも発言。首相就任には国会の公聴会を経る必要があるが世論は急速に悪化、就任できるか不透明な状況になった」と報じている。

日韓両国メディアが報じた「日本による植民地支配と南北分断は神の意思だ」という文氏の発言内容を日本の読者には理解しにくいかもしれない。韓国のキリスト教会には久しく「メシア思想」がある。受難の歴史を歩んできた韓国民族にイエスが再臨し、救済してくれるという思想だ。ちょうど、ユダヤ民族が民族解放者として救世主の降臨を期待していたようにだ。

文氏は一般国民の前で語ったのではなく、キリスト教会で信者たちを前に語ったということを忘れてはならないだろう。韓国に救い主が再臨するという預言書がある。著名な預言書「鄭鑑録」には具体的に記述されている。だから、メシア待望論は韓国民族にとって決して特異な思想ではないわけだ。

例えば、世界基督教統一神霊協会(通称統一教会)の創設者文鮮明師は生前、神が韓国民族を「第3イスラエル」に選んだと主張している。同師によると、神が韓民族を選民として選ぶためには、韓民族は「40数に該当する試練の期間」(「40日サタン分立基台」)を体験しなければならない。第1イスラエルが選民として神のみ旨を履行するためサタンの地エジプトで400年間苦役した後、モーセを中心に出エジプトをし、イスラエル民族の基盤を形成していった。ユダヤ民族がイエスをメシアとして受け入れずに殺害した後、イエスの福音を信じるキリスト信者が第2イスラエルの立場に立ち、当時サタンの世界であったローマ帝国下で400年間迫害をを受けた。同じように、第3イスラエル民族として韓国民族は約40年間、日本の植民地化を体験し、世界的カナン復帰を成し遂げる使命があった、というのだ。具体的には、1905年の韓国保護条約(乙巳保護条約)から1945年の解放までの40年間だ。

韓国首相候補者の文昌克氏が文鮮明師の選民思想を知っていたかは不明だが、文氏の「神の意志」という表現は明らかに文鮮明師の再臨論の内容と一致する。その意味で、「日本の植民地支配が神の意志に基づく」という内容は韓国民族のメシア思想と理解すべきだろう。繰り返すが、日本人には理解できにくい内容だが、韓国キリスト信者にとって決して奇抜な内容ではないのだ。

「南北分断」についても、神は最終的救済摂理では、世界を神側とサタン側に分断し、神側代表の韓国、サタン側の北朝鮮が対立する情勢が生まれてくる。だから、「『南北分断』は神の御心にかなったものだ」という文昌克氏の発言となるわけだ。

文氏の立場からいえば、韓国で今日みられる反日運動は、「神の意思」に反対する運動ということになる。「日本の植民地支配」を「神の意志」と受け入れることで、韓国民族の誇りを保つことができる一方、日本を許す心も生まれてくるのではないか。その意味で、文氏の発言は韓国民族の過去問題を乗り越えていくうえで大きなインスピレーションを与えている。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年6月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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