米バロンズ誌:債券ファンドに出口なし? --- 安田 佐和子

2014年06月23日 08:32

6月17~18日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)がいくらノーサプライズだったからといって、出口政策(exit policy)に進路を取っているのは事実。では、ファンドのexit fee(解約手数料)問題はどうなっているのでしょう。


イエレンFRB議長は、18日に会合後の記者会見で債券ファンドの解約手数料について問われ「Fedではなく、米証券取引委員会(SEC)の管轄である」と明言していました。とはいえバロンズ誌は、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙の「Fed looks at exit fees on bond funds」の記事を紹介。利上げに伴う金利上昇および債券価格の下落に備え債券ファンドからの資金流出を協議し始めており、投資家の資金流出を防ぐねらいで「解約手数料」の設定を検討中だというのです。社債市場が10兆ドル(1020兆円)規模であるだけに、資金流出が起これば金融市場に雪崩を引き起こしかねませんからね。

金融安定監視委員会(FSOC)が一部の資産運用会社をシステム上、重要な金融機関(SIFI)の対象に含む可能性も協議したことでしょう。バロンズ誌の同コラムニスト、ランダル・フォーサイス氏が債券ファンド界のウォーレン・バフェットと称えるルーミス・セイラスのダニエル・ファス最高投資責任者(CIO)は、「観測気球であり顧客の抵抗を想定すれば確率はゼロに等しい(snowball’s chance)」と言います。ただし「不評なのは承知だが、個人的には賛成だ」と言います。コラムでも、上場投資信託(ETF)を含むジャンク債ファンドや銀行ローン担保ファンドに対し、スターン前FRB理事が「非流動的な資産から成る流動債券(a liquid claim on illiquid asset)」と表現したのは非常に的を得ていると同意しています。

モーニングスターは、09年「フィクスト・インカム・オブ・ザ・イヤー」に選出。

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(出所 : Loomis Sayles)

過去の例を見ても、債券ファンドの資金流出は見過ごせません。リーマン・ショックが破綻した2008年9月15日の翌日、リーマンのコマーシャル・ペーパー(CP)に投資していたMMF「リザーブ・プライマリー・ファンド」の基準価額が元本である1ドル割れに見舞われました。あろうことかMMFの父いわれるブルース・ベント氏が経営するリザーブ・マネジメント社がMMFの歴史が始まった1970年代以来初という未曾有の事態を引き起こした結果、MMFから資金が急速に引き揚げられ事態がさらに悪化してしまいましたよね。

インベストメント・カンパニー・インスティチュートによると、債券ファンドは3.5兆ドル(360兆円)。Fedのバランスシート4.1兆ドル(420兆円)に劣らない規模へ膨れ上がっています。バンク・オブ・カナダ(BOC)のエコノミストが指摘したように、低金利の状態ではリターンを得るためにポートフォリオの信用リスクを高めてきました。利回り上昇局面で債券ファンドに組み入れられるジャンク債をはじめ賭した債券が急落しファンド価額が急落すれば、投資家はファンドから資金を引き出すこと必至です。そのとき、解約手数料は投資家が資金引き揚げを止める役割を果たすのでしょうか?

答えは、皮肉にもニューヨーク連銀が提示しています。同連銀の調査によると、償還への障害こそ投資家に解約を決定させる——つまり解約手数料や解約の制限こそ、裏目に出るというのです。

債券ファンドの投資家を最終的に襲うかもしれない危機は、解約手数料という人質への支払いではなく、利回り上昇とファンド価額の下落に捕われること——ジャン=ポール・サルトルの名作「出口なし」では、地獄こそ「他人」という表現が思い出されます。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年6月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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