米バロンズ誌 : インフレはサマーラリーの障害となるか --- 安田 佐和子

2014年06月24日 14:11

00001

ニューヨークに夏が到来し、市場関係者の間では米連邦公開市場委員会(FOMC)後にダウ平均からS&P500が過去最高値を更新しており、サマーラリーの期待が熱を帯びてきています。

バロンズ誌のアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、今週号で出口政策と債券ファンドの資金流出問題の他にサマーラリーをめぐる思惑を取り上げていました。

アパルーサ・マネジメントのデビッド・テッパー氏が約2年前に指摘したように、6月米連邦公開市場委員会(FOMC)後のイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見では、金融政策が米経済次第であることが確認されました。すなわち1)経済が鈍いペースで拡大するなら緩和的政策が継続しリスク資産に強気、2)成長加速を見届けるまで利上げしないなら強気——と解釈できます。

イエレンFRB議長の見解に背中を押されたのか、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのチーフ投資ストラテジストのマイケル・ハートネット氏によると、投資信託のフロー動向では株式に130億ドルもの買い越しを確認しています。反対に債券フローは15週ぶりに23億ドルの流出に転じていました。

投資家が株式市場への自信を取り戻したのでしょうか?同コラムによると判断は難しいところです。なぜなら、流入先は公益セクターが顕著で12億ドルに及んでいたのです。2014年に16%も上昇したほか、配当が期待できクーポン受け取りが可能な債券と近い点が魅力なのでしょう。成長銘柄や景気敏感銘柄でないのがポイントです。

グラスキン・シェフのチーフ・エコノミストであるデビッド・ローゼンバーグ氏は、個人投資家が参入しても「根拠なき熱狂」の明確なサインが点灯していないと説きます。

第1に、メリルリンチの伝説のアナリスト、ボブ・ファレル氏のいう投資の10原則の5番目に抵触していないんですって。つまり、「個人投資家は高値で買い、底値では買えない」というもの。ローゼンバーグ氏のいう高値とは、30日間で11%もの上昇を意味しこれが最初の高値となります。調整局面で後追いが現れ、2番目の高値を形成するんです。これは1980年の11月、1987年の8月と10月(ブラック・マンデー発生時)、1990年6—7月、2000年の4—9月(ITバブル崩壊前)、2007年7—10月(ダウ平均当時の高値)で発生していました。

ただし7番目の「相場は幅広く買われる時は最も強いが、一部の優良株に集中する時は最も弱い」には、当てはまりつつあります。インターナショナル・ストラテジー・インベストメントのジョン・メンデルソン氏は前週、ニューヨーク証券取引所(NYSE)で取引される銘柄で200日移動平均を下回るものが減少してきたというのです。その上で、同氏は「マーケット全体でモメンタムが衰えつつあるサイン」であり「弱含みの分岐点」と指摘。相場が頭打ちしつつあるとの見方を下しているのです。

奇しくもイエレンFRB議長は、米5月消費者物価指数(CPI)が前年同期比2.1%とインフレ目標値「2%」から上振れした点につき、PCEデフレーターと異なるとしながら「上向きしているが、データにはゆがみがある(noise)」と発言していました。金先物が約2ヵ月ぶりに1300ドルを超えて上昇した背景は、インフレの先取りだったのか。

金先物、確かにFOMC以降の上昇が目覚ましい。
gold
(出所 : Futuresmag)

ストリートワイズは、一転して「インフレは恐るるに足らず・・今のところは(Inflation Is Nothing to Fear…for Now)」との記事を配信。イエレンFRB議長が5月CPIの上振れに警戒を表明しなかったため金先物が週足で3.3%も上昇し、インフレ連動債が「ビハインド・ザ・カーブ」を巻き戻した一方で、S&P500が22番目の最高値を更新して引けたのは理由があるというのです。背景として、

1)FedはCPIより、PCEデフレーターを重視する
CPIが住宅関連の比重が大きい一方で、PCEは医療保険が大きい。従って5月コアCPIが前年同月比2.0%の上昇だった半面、5月コアPCEは1.6%の上昇にとどまる見通し。

2)2011年の経験則
2011年にCPIが急速に上向いた当時、Fedは耐えて利上げを見送った。反対に欧州中央銀行(ECB)は利上げ政策に転換し、ソブリン危機もあって景気後退入りを招いた。

3)賃金の伸びとの比較

ソシエテ・ジェネラルのエコノミストであるアニタ・マルコウスカ氏によると、1999年当時、PCEは1.3%にとどまっていたもののFedは利上げを敢行。当時はCPIが2.2%程度だったものの、賃金の伸びが3.5%と双方を大きく上回っていた。

4)株式市場に打撃を与えるほどインフレは上昇していない

ネッド・デービス・リサーチのネッド・デービス氏によると1925年以降、S&P500はインフレが同株式指数の配当利回りを2.1%上回った場合、平均5%低下してきた。現時点で5月CPIは2.1%に対し、当利回りは1.9%。S&P500が6%の上昇が期待できるレンジにある。

5)成長拡大局面で株価は利上げ開始でも下落せず

UBSのストラテジスト、ジュリアン・エマニュエル氏は利上げ局面でも経済が拡大し続ける限り株価への影響は限定的と指摘。1998年以降、インフレ上昇に従い成長も拡大していれば平均の株価指数のリターンは17%上昇してきた。

以上、バロンズ誌は名物コラムのアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートで弱気、ストリートワイズで強気の見方を呈しバランスを取ったといえるのかもしれません。何だか、Fedみたいですね。

(カバー写真 : CNBC)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年6月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑