金融危機から6年、「Sワード」復活の兆し --- 安田 佐和子

アゴラ

金融危機から、はや6年。未曾有の危機への引き金をひいた「Sワード」が再び、その姿をぬっと現してきました。

ウォールストリート(WSJ)紙が、以下のように伝えております。

「信用力が低く貸し倒れリスクの高いサブプライム層において、クレジット・カード・ローン残高が増加中だ。高利で貸し出せるサブプライム層に焦点をしぼり、銀行などが積極的に顧客開拓にいそしんでいるためだ。

クレジット・カード関連事業大手エキファックスによると、銀行など金融機関は1~3月期にクレジット・カードを370万枚も発行しており前年比で39%も増加した。2008年以来で最大となる。そのうち3分の1はサブプライム層が占めており、こちらも2008年以来の高水準。ネイビー・フェデラル・クレジット・ユニオンのバイス・プレジデントのランディ・ハーパー氏は、『信用力の高い市場は概して飽和状態にあり、成長を見込んで信用力の低い顧客を狙うのは自然の流れ』と語る。

カードハブによると、サブプライム層の1~3月期の金利は21.1%と、前年同期の20.2%から上昇していた。信用力の高い借り手の利率が前年同期比ほぼ変わらずの12.9%とは、対照的だ。サブプライム層とは、最高信用スコア850点のところ660点以下となる。

米銀の1~3月期営業収入は前年同期比4%減だった。トレーディング部門の減収に加え、住宅ローン貸出減速も痛手となっている。またクレジットカード事業自体も、規制強化を背景に残高に対する金利上昇を制限しのびしろが少ないことも、金融機関がサブプライム層に活路を見出す一因とされる。」

思い出して下さい。住宅ローン組成額は、大手銀4行の間で大幅減少を記録していましたよね?規制強化でトレーディング収入も減少トレンドに突入しており、業績改善を掲げる上で背に腹は変えられないのでしょう。

クレジット・カード以外でも、不安要因が横たわります。WSJ紙から、気になる記事をもう1本。

「通貨監督局(OCC)は25日に発表した報告書で、自動車ディーラーの組成したローンを銀行が買い取る『間接的』自動車ローンに懸念を表明。信用力の低い借り手を中心にローンが増加中で、『融資基準の緩和に合わせリスクが高まりつつある初期の兆候が顕著』と警告した上で、『懸念』を示した。

銀行の自動車ローン融資は2013年10~12月期に前年同期比で約13%増加。OCCは銀行が抱える貸倒損失の増加を憂慮している。OCCによると、自動車1台当たりの平均貸倒損失は『この2年で大幅に増加した』という。

エクスペリアンが発表した5月の調査リポートによると、デフォルトとなった自動車ローンの平均貸倒損失額は1~3月期に8500ドル(約86万円)となり、前年同期の7400ドルから増加した。

地銀として資産規模で全米1位のUSバンコープのリチャード・デービス最高経営責任者(CEO)は、今月初めの投資家会合で『自動車ローン事業を積極的に展開している』と述べた。資産ベースで国内4位のウェルズ・ファーゴも、自動車ローン事業を大幅に拡大。同社の自動車ローン債権は1~3月期に11.3%増加し、526億ドルとなった。」

エクスペリアンの別のデータによると、自動車ローンに占めるサブプライム層の割合は1-3月期に45.2%と2008年同期とたった1%しか違いません。また1-3月期に6-7年物ローンを組んだ自動車購入者は4人に1人と、統計開始以来で最高だったんです。

自動車ローンで、サブプライム層の復活が見て取れます。
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(出所 : International Business Times

残念ながら、債務不履行率も上昇中。1-3月期に回収された自動車台数は前年同期比17%増でした。

米5月新車販売台数は2007年2月以来の高水準だった一方、高級車がけん引していたのです。サブプライム層といわなくても、比較的信用スコアが健全な層が無理をしてローンを組んでいなければよいのですが……。どうも嫌な予感は拭えません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年6月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。