バロンズ誌 : 小売セクターの弱含みは、伝染性か? --- 安田 佐和子

2014年07月14日 13:35

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バロンズ誌、今週号はバーゲン状態の小売セクターを特集しておりました。年初来のS&P500構成銘柄でのワーストン・ランキングにはステープルス、ホールフーズ・マーケット、ベッド・バス・アンド・ビヨンドなど大手小売が並んでおり、リターンは2%マイナス。S&P500の約6%を大幅に下回るだけに、割安感もあいまってプライベート・エクィティ(PE)による株式取得、買収が盛んになると予想しています。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、特集と足並みをそろえ小売セクターに注目しています。小売セクターは米雇用統計が順調な回復を示す一方で、業績見通しを相次いで下方修正中。大寒波の言い訳でもできず、苦しい立場に立たされています。

例えば、こちらでお伝えしたように床材小売大手ランバ—・リクイデーターズの業績下方修正はホーム・デポやロウズの決算見通し引き下げを余儀なくしています。小売最大手ウォルマートは、ビル・サイモン最高経営責任者(CEO)はロイターのインタビューで「労働市場の回復は支出を促進していない」と発言する有様です。

ウォルマートは、同社のトラック運転手が引き起こした事故で重傷を負ったコメディアンから提訴。
Spike TV's "Don Rickles: One Night Only" - Show
(出所 : Time)

またディスカウント小売大手ファミリー・ダラー・ストアーズが10日寄り前に発表した3~5月(第3四半期)決算で、純利益は前年同期比33%減の8110万ドル、調整済みの1株当たり利益は85セントと市場予想の87セントを下回っていました。売上高は市場予想の26億1000万ドルを上回る前年同期比3.3%増の26億6000万ドルだったとはいえ、既存店売上高は1~4%減を予想。決して好調とは言いがたい内容です。

以前からお伝えするように賃金の伸びがイマイチなのですから、小売セクターにしわ寄せがいくのは当然の成り行きでしょう。米6月雇用統計ではフルタイムが減少しパートタイムが増加したという揺るぎない事実があります。新車販売台数が2006年来の高水準を滑らかに走り抜ける一方、Sワードがちらつく。アマゾンをはじめ安価なネット小売攻勢もあって、小売セクターは本当の意味で雇用が回復しないことにはトレンド脱却は困難でしょう。

しかも欧州では、エスピリト・サント銀行を発火点に銀行不安が浮上し、全世界では鉱工業生産の減速が確認されています。米国はラッセル小型株指数の上場投資信託「iSharesラッセル 2000 ETF (IWM)」が前週に3.9%も落ち込んでおり、米2年債利回りは米6月雇用統計後につけた0.516%をピークに0.452%まで低下しています。同コラムはこうした事情を踏まえ「マーケットは何かおかしなことが起こるリスクを伝えているのではないか」と結んでいました。

ストリート・ワイズは、一転して相変わらずブルです。タイトルからして「Climbing a Staircase of Fear(恐怖の階段を上る)」ですからね。ウォールストリートでは調整を指摘する声が優勢となりつつ、ウクライナ、イラク、シリアでの情勢緊迫化を乗り越え、S&P500は年初来から約6.5上昇してきました。従って足元で浮上するポルトガル大手銀の銀行不安も何のその、ウェルズ・キャピタル・マネジメントのジム・ポールソン投資ストラテジストの予想を引用し、S&P500は向こう5年間に3000pに到達するといいます。

ネッド・デービス・リサーチのストラテジストであるトム・ヘイズ氏は、足元のラリーが1987年10月のブラック・マンデーを迎えた当時と類似点があると指摘。1)過去5年間にわたって20%以上の下落なし、2)S&P500は当時18.9倍、現状で16.6倍と割高、3)バブルの飛沫を確認中——が、それにあたります。

しかし、ポールセン氏は「増益率は年間4%程度でも収益の22倍を支払う投資家が存在する」と説明。また「投資家の最悪のリスクは、小幅な調整リスクを注視するあまり強気マーケットを見過ごすことだ」と注意喚起していました。

強弱分かれるコラム対決、一体どちらが勝利するのでしょうか。

(カバー写真:money CNN)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年7月13日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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