バロンズ誌:イエレン議長はイエレン・プット幕引きに着手したのか --- 安田 佐和子

2014年07月20日 11:06

今週号のバロンズ誌、特集号は日米欧が5年ぶりにそろって成長拡大が期待されるなか、見捨てられて来た景気循環株に投資チャンスがやって来たと指摘しています。ファンドマネージャーはこれまで逆張りを突き進み、バイオテクノロジーをはじめソーシャルメディア、公益など景気に左右されない銘柄を選好してきました。しかし、今後は割安感も手伝い1)テクノロジー、2)エネルギー、3)産業、4)金融——などのセクターがアウトパフォームする可能性を伝えています。銘柄としては、1)キャタピラー、2)ケンメタル、3)キャピタル・ワン・フィナンシャ、4)T・ロウ・プライス・グループ、5)チェサピーク、6)テラデータを挙げていました。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、弱気トーンを維持。17日に発生したマレーシア航空MH17便の墜落、イスラエルによるガザ地区への地上軍投入——に伴う地政学的リスクの高まりもさることながら、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言に注目しています。

議会証言に衝撃を与えたのは、「バイオテクノロジーとソーシャル・メディア株は割高」との発言でした。グリーンスパン元FRB議長による「irrational exuberance(根拠なき熱狂)」以来となる、株式市場の警句ですから。

それだけではありません、振り返れば、イエレン議長はあらためて15日の議会証言でオプション価格で算出されるS&P500のインプライド・ボラティリティに言及。1990年代半ばから2000年半ば以来の水準へ低下した背景として、投資家の「利回り志向(reach for yield)」を恐らく反映していると説明していました。

低金利政策と流動性供給策で、投資家は「プット・オプション=売る権利」という保険を必要としなくなり、VIX指数の低下につながったと示唆していたわけです。イエレン議長の先代は、その政策により「グリーンスパン・プット」、「バーナンキ・プット」の造語を生み出したことが思い出されますね。

またイエレン議長が高利回り債券のスプレッド縮小とレバレッジド・ローンの拡大および融資基準の緩和にも触れていたことも、忘れてはいけません。同議長の議会証言以前、7月3日にイエレン議長は国際通貨基金(IMF)の会合でレバレッジド・ローン、スプレッド縮小、利回り志向などについてあらためて懸念を表明しました。

こうした経緯もあり、7月7日週はジャンク債ボンド・ファンドから資金が27億ドルも大量流出。「iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF (HYG)」と「ピムコ0—5年高利回り社債ETF (HYS) 」から、5億ドル以上の資金が流出したといいます。2012年以降、株価に沿って好調を維持していたジャンク債ファンドには、異変が生じているのです。

マーケットの変化は、ルートホールド・グループのダグ・ラムジー最高投資責任者(CIO)の指摘でも明らかです。S&P100(時価総額上位100銘柄で構成される指数、OEX)でプットの建玉がコールを上回る半面、シカゴオプション取引所(CBOE)ではコールが大勢を占めており、対照的なんだとか。ラムジー氏によると「OEXのポジションは’利口なマネー(smart money)’と評価される半面、CBOEは ’能無しマネー(dumb money)’」と呼ばれるそうですが、両者のかい離は現在「過去10年間で最大」。なんだか、穏やかではありません。

利口なマネーVS能無しマネー、センチメントは1ヵ月前から大きくかい離。

capitalogix
(出所 : Capitalogix)

インベスターズ・インテリジェンスが調査するブルベア指数にも、不穏な影が現れています。前週時点で、強気派は60.6%から56.6%へ低下。過去7週間で5週にわたって60%台を維持してからの大台割れは、調査元によると「マーケットの天井をつけた」サイン。弱気派は15.1%で横ばいでしたが、調整を予想する向きが24.2%から28.3%へ上昇していたのも、不気味です。

ストリート・ワイズも、今週はイエレンFRB議長の議会証言に焦点を当てた上で小型株の下落リスクを指摘しています。そもそも、1)ラッセル2000は予想株価収益率(PER)は26倍と、S&P500の16.6倍を上回り、2)増益率予想も6%程度でS&P500と変わらず、3)Fedは出口政策へ向かって進行中——というネガティブ要因が控えます。3)については、1975年以降で第1弾の利上げを行ってからS&P500小型株指数は平均2.6%上昇してきたとはいえ、当時はバリュエーションは今より格段に低かった。

アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートとストリート・ワイズ、今回はそろって弱気トーンだったわけです。イエレンFRB議長の議会証言は、後にマーケットの分岐点として記憶に残るものになるのかもしれませんね。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年7月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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