バロンズ誌 : 労働市場のたるみとインフレ、Fedは操縦できるのか --- 安田 佐和子

2014年08月04日 08:58

バロンズ誌で当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート。もちろんテーマは、米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定と株価急落です。ダウ平均は7月31日に300ドルも急落し、年初来リターンはマイナスに転じましたしね。

7月米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文では、労働市場だけでなくインフレも二大統治目標へ回帰する見通しを表明し出口政策への地ならしを進めました。同時に米4-6月期国内総生産(GDP)速報値が4.0%増と市場予想の3.0%増を大幅に上回り、米4-6月期雇用コスト指数は約6年ぶりの水準へ急伸。市場は量的緩和(QE)終了の先にある利上げを見据え、狼狽したようにみえます。

雇用コスト指数ショックはマーケットに冷や水を浴びせました。

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(出所 : Business Insider

ただしバロンズ誌によると、FF先物動向では2015年末に0.75%を織り込む状況。2016年末でも1.75%と急激な利上げシナリオを想定していないんですね。6月FOMC時点で公表された見通しと比べれば、断然低い水準ですが……。

というのも、マーケットが過剰な金利引き締めと同時に利上げ前倒しを不安視している点が挙げられます。バンク・クレジット・アナリストの調査ではFedがビハインド・ザ・カーブとの意見のほか、早期に大幅利上げに踏み切るリスクに懸念を示していました。なぜか。

米7月雇用統計は予想以下だっただけでなく、JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストが指摘するように「労働市場のたるみ」、あるいはカール・マルクスのいう「労働力の予備軍」に課題を残す内容でした。PIMCOに復帰したばかりにポール・マカリ—主席エコノミストも、「イエレン議長はインフレを上回る名目賃金の上昇を望んでいる」と説明します。労働市場は、依然として利上げに対応できる回復が進んでいないというわけです。

PIMCOのいう「ニュー・ニュートラル」のごとく潜在成長率がかつての4%から2%へ低下するに従い、FF金利の中立水準も引き下げは回避できず。そうなるとどこまでのFF金利引き上げが正しいのか不透明という事情もあります。市場関係者が良好な米指標に悲観的な反応を示すのも、致し方ない?

ストリート・ワイズ、今回は病院銘柄に強気スタンスを打ち出しています。

医療制度改革(オバマケア)を通じ通院が手頃になり来院数が増加する上、再編の波もってM&Aが株価を押し上げる期待が高いんだとか。米連邦政府がオバマケアを通じた医療保険加入者に与える補助金につきワシントンD.C.巡回裁判所が制限すべきとの判断を下したものの、影響は限定的としていました。その上で、ライフポイント・ホスピタルズ( LPNT)、HCAホールディングス(HCA)、ユニバーサル・ヘルス・サービス(UHS)が年初来でS&P500のリターンを4倍以上を遂げていると伝えます。健全な経済に健康な医療保険加入者の増加で、処方箋いらずというところでしょうか。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年8月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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