朝日新聞は原発事故報道も誤りを認めよ

2014年08月11日 08:00

「福島で健康被害はない」事実を伝えるべき

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朝日新聞が慰安婦報道で自社の報道の誤りを認めた。朝日新聞の報道は、福島の放射能、原発問題についてもミスリードを繰り返している。従軍慰安婦報道をめぐる謝罪も大切だ。しかし70年前の外国の気の毒な売春婦に関心を向ける前に、福島を情報で汚している「今そこにある危機」を、是正してほしい。(プロメテウスの罠7。他人の自殺という悲劇と絡め、センセーショナルな見出しは彼らが軽蔑する「週刊誌化」「ネットメディア化」している。)


福島原発事故を語る上で、誰もが抑えるべき事実があると、筆者は考えている。

1・福島で原発事故の放射線を原因にした健康被害はこれまでもない。これからもない。これは科学的に一致した見解だ。それに反して危険とする情報、騒ぐおかしな人々によって風評が生まれ、福島と日本が傷つけられている。

2・原発について、どのような意見を持とうと、主張しようと自由である。しかし原発の是非と、まったく別の話である福島の事故のリスク評価と絡め、恐怖を過度に煽って原発反対を叫ぶ人がいる。これは卑劣な行為である。

3・放射能の防護政策、また原子力防護政策はコストがかかる。その投入コストと効果を見極めず、「リスクゼロ」を目指す過剰防備で、さまざまな弊害が生まれている。

ところが朝日新聞は、これら3つと真逆の情報を提供している。過度に危険を煽り、原発と放射能のリスク評価を絡め、エネルギー問題の多様な側面をみない。特にひどいのが、『プロメテウスの罠』という連載だ。これは福島原発事故をめぐるルポだが、健康被害があるとデマに近い情報を提供し続けている。

今年8月6日に朝日新聞はわざわざ連載1000回という告知を出した。同社自慢の連載らしい。絶賛の言葉を出した2人が、国会事故調総括で「事故原因は『メイド・イン・ジャパン』」とおかしな分析をした黒川清国会事故調元委員長と、風評被害デマの震源地の一人である歌手の加藤登紀子さんである。ちょっとずれた人が、この連載を好んでいることが、コメントの人選で分かる。

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この連載は2012年の新聞協会賞を受賞した。これは新聞各社の相互投票によって選ばれる。会員会社1社1票なので、地方紙に有利で、全国紙はなかなか取れないとされる。新聞記者らは、トンデモ連載の中身を知っているのだろうか。新聞業界が「私たちはデマをたたえます」と言っているようなものだ。

ちなみに13年、朝日は『手抜き除染』のスクープでも新聞協会賞をとった。しかし背景を知る必要がある。朝日新聞を始め一部メディアが「福島は危険だ」と繰り返したゆえに、国は過度に安全を追求する1mSv除染をする状況に追い込まれた。これは実施が不可能な計画だ。自らあおって、さらに起こった状況を糾弾するのはおかしい。まさに「マッチポンプ」という表現が当てはまる。落ちぶれつつある新聞業界がおかしな報道をたたえ、自ら知性の面から自殺行為をするのは滑稽さを感じる。

福島鼻血を「先駆的に」伝えるプロメテウスの罠

報道の具体例を示してみよう。「福島で鼻血」「被ばくすると慢性的にだるさが訪れる」。このような科学的に確認されていないデマ情報をプロメテウスの罠は早い段階から報じた。

「東京都町田市の主婦の6歳の長男が4カ月の間に鼻血が10回以上出た」。この母親に、原爆に被ばくした共産党の活動家(これは記事に書いていない)、肥田俊太郎医師が語りかける。「広島でも同じことがあった」。記事中に「こうした症状が原発事故と関係があるかどうかは不明だ」と逃げの文章を入れるが、読み手に不安を抱かせる記事だ。(2011年12月2日記事)

これは一例だが、他の内容もひどい。電子書籍化された、プロメテウスの罠の1と2から私のコメントをつけて、見出しを採録してみる。

「私死んじゃうの」(避難する9歳の女の子のコメント。恐怖を煽る。)
「「箝口令」とよぶ文章」(いくつかの医学会が会員に慎重なコメントを要請したことを「箝口令」と表現。しかし放射線量を、政府機関や放射線医学総合研究所はずっと公開している。線量や科学的事実を、民主主義国家で隠すことなどできない。)
「広島・長崎の悲劇が繰りかえされる」(遺伝リスクがある懸念を記事で強調した。ところが、原爆被災者に遺伝リスクはないという良い情報は伝えない。)
「チェルノブイリ、今も続く甲状腺異常」(この事故直後に被害はあった。しかし福島と同じ低線量被ばくでは健康被害は観察されていない。日本のおかしな反原発派と協力するウクライナの医師パンダジェフスキー氏が登場し、解説した。)
「放射能を体から抜く」(医学的根拠のない民間療法を紹介。これは健康被害を生みかねない)

いずれもセンセーショナルであり、放射能と原発の知識がある人にとっては、異様な話題ばかりをつらねている。ただし、さすが朝日新聞だ。いろいろなネタを仕入れてくるし、おもしろくまとめる。さらに「可能性がある」と逃げの文章を入れ、意図的な嘘はつかない。印象操作だけを繰り返す。

有名記者、本田雅和氏の「活躍」

朝日新聞の他の紙面も、ひどい記事が目立つ。反原発の社論に、記者が合わせているのだ。一例を示そう。同社に本田雅和氏という、有名記者がいる。福島総局勤務だ。彼はあちこちで取材トラブルを起こすので著名だ。私も東京のある記者会見で演説を始めた彼をたしなめ、にらまれたことがある。

自民党がNHKに「女性戦犯国際法廷」という慰安婦がらみの番組で圧力をかけたという報道をして、大騒ぎを起こし、現安倍首相、故中川昭一代議士に批判されていた。(NHK番組改編問題

彼は福島で、科学的事実に反する低線量被ばくの危険を訴えるシンポジウム、自称専門家の意見を大量に書き続けている。ようやく東京版の署名記事で名前を見たと思ったら、とんでもない報道をしていた。

2013年9月16日、約3カ月ぶりに再開された福島県北部の試験漁業の話。「取っても海へ、漁師の気持ち分かるか」。さらに「9割捨てる試験漁」の大きな横見出しが付き、取った魚を海に捨てる漁師の写真が載っていた。

放射能で汚れているから、取った魚の9割を捨てたように思える構成だ。ところが他紙を見れば違う。試験操業は16種の魚が対象。いずれも放射能は検出限界以下で、対象の魚以外の9割の魚を海に返していた。

つまり真逆のことを伝えている。ところが本田記者はずるく、写真説明で小さくその事実を書いていた。その情報操作はあまりにもひどい。本田記者は一例だが、この他にも大量のおかしな報道が、放射能問題で朝日新聞に存在する。

誤った情報は人々に「呪い」をかける

朝日新聞は記者のレベルが総じて高く、質の高い報道もきちんと行っている。ストレートニュース、解説はわかりやすい。『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版)などは、東電の公開した画像をチームで分析し、事故の混乱を伝えている。経済部・大鹿靖明記者の『メルトダウン』(講談社)は、私の知りたかった東電の事故処理をめぐる政府内の動きを詳細に明らかにしており、一人でこんなものが書けるのかと筆者は驚愕し、自分とのジャーナリストとしての実力の違いに恥ずかしくなった。

ところが、そうした優れた人材がいても、チームをつくり変な方向性を与えると、『プロメテウスの罠』のようにおかしな形に暴走する。優れた組織でも(失礼ながら)本田記者のような「バグ」人材が存在する。朝日新聞はこうした危険を知り、自制して、事実に基づく冷静な報道に切り替えてほしい。

これは、朝日新聞だけではない。すべてのメディア、いや今はインターネットで「誰でもメディア」の時代だから、すべての情報発信者に対して呼びかけたいと思う。

誤った情報は、人々を苦しめ、問題を複雑にする。情報伝達における誤報、思い込み、煽り報道は状況を混乱させる。そうした混乱を発生させた後に訂正させても遅い。

朝日新聞の慰安婦をめぐる誤報は32年放置したゆえに、戦時売春制度という話でなく「性奴隷」という、当初は想像できない話に発展した。そして日韓関係をたたき壊し、日本に対する「性奴隷を集めた」という国際的批判を生んで、今の日本人が「性犯罪者」とののしられている。朝日新聞は慰安婦問題で「意図的ではなかった」と逃げているが、結果の重さを考えれば、そんな弁解で済むわけがなかろう。

同じことは福島事故をめぐる放射能情報についても当てはまる。日本の国土、そして福島に対して、事実に反して「穢れている」と騒ぐ人は、今を生きる人だけではなく、過去この国土を作り上げてきた父祖、そして未来、この国で生きる子孫に呪いをかけている。そして大変な負担を日本に加えつつあるのだ。

福島原発事故をめぐって、誤った情報を拡散した人は自己検証をしてほしい。慰安婦騒動の混乱、そして朝日新聞の哀れな弁解という愚行を、原発事故報道で繰り返してはならない。

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