必要なのは戦争のない社会を作りあげる意志の「高貴さ」 --- 岡本 裕明

2014年08月15日 10:20

終戦記念日が近くなるとどうしても日本のあの過去について考えてみたくなります。勿論、私自身は戦争経験とは縁遠いのですが、幼少の頃、年長者、あるいは自分の親から聞かされてきた断片的な話、それが、書物やメディアを通じた知識と合体し、一定の体系となって自分の頭で戦争の像が描かれるようになります。原爆記念日から終戦というこの8月の10日間はそういう意味で一年の戦争に対する総集的な時でもあります。


バンクーバー郊外で恒例の航空ショーがあり、久しぶりに見に行きました。好天であったこともあり、大変な人出でイベントそのものも昔来た時に比べて「北米のエンタテイメント」具合がグッと上がっており、夏の一日を過ごすにはなかなか面白いと思いました。

そんな中、1940年代に活躍したとされる飛行機がいくつか、曲芸飛行をしていましたが、司会者が「ゼロ戦も彷彿させる…」と紹介していたのが聞こえてゼロ戦は北米で今でも語り継がれる名機であったのか、と改めて思った次第です。よく見ればあんなちっぽけな飛行機でよくぞ戦っていたのだろうと思います。B29がいかに恐ろしかったか、私なりによくわかります。

さて、日本がなぜ戦争の道を選んだのか、ということを考えた時、司馬遼太郎氏はそのきっかけが日露戦争の勝利にある、と考えていらっしゃいます。これは私なりに二つの意味があると考えています。一つはロシアという大国に勝ったという日本人の自負。もう一つは講和で小村寿太郎氏が賠償金を全く取れなかったことへの失望と反感。この二つの相容れない事実が日本人の高揚を推し進めていったとすれば時代背景からしても正しい答えの一つでありましょう。

結局日本は戦争を通じて何を求めたのか、といえば領土であり、支配する地域をより大きく、そして国を豊かにするという支配者の留まるところを知らない欲であります。豊臣秀吉の朝鮮出兵も同じ意味でしょう。それは強い日本を世界に認めさせるという力で圧す重要な外交手段の一つでもあったかもしれません。

ならば、日露戦争後の日本の支配者は誰だったのか、と考える時、それは日本人そのものであり、その存在感を世界に見せつけたかったのかもしれません。しかし、島国が大陸を抑えるというのはいかに難しいか、イギリスの例を見てもわかるでしょう。一時、世界を制覇し、大英帝国を築き上げましたが、ドーバー海峡をこえた対岸を支配することは出来ませんでした。

人々が偉くなりたい、金持ちになりたいという欲求や願望を持つのと同じように国家も一定の成長を望んでおり、世界195か国がみな、別の常識観、価値観で国家の成長を考えています。時としてこの価値観の相違が国家間紛争となるのですが、先進国の中では欧州と日本がその直接的経験者であり、悲惨さを知っているからこそ、戦争に明白な線を敷いています。アメリカは本土が戦場になっておらず、歴史的にはハワイ、ベトナム、あるいはアフガンに「留まって」いるのです。本当の意味でアメリカ人の精神に大きく響いたのは911だったのかもしれません。

先進国は今さら自国が戦場となるような愚かな選択はしないでしょう。それは自分の祖先から聞いた悲惨さ、はかなさをいまだ伝え聞き、より現実味があるからでありましょう。ただ、国家が十分に育成していないところでは残念ながら戦争は起きています。今でも少なくとも世界の三か所でアクティブな戦いを続けています。しかし、ほとんどの戦争が局地戦争で終わっているのは多くの人々は作り上げた富、名声、幸福を既に持ち、感じ、成長に対して一定の満足をしているからではないでしょうか?

戦争はもはやできるものではありません。ならば戦争をすると言ってもいけないし、挑発に乗ってもいけません。戦争に参加するというのは肉体的な健常さと共に不屈なハングリー精神、そして国家によるマインドコントロールがなければなりません。しかし、世の中にモノがあふれ、美味しいものを食べ、おしゃれができて、ITディバイスで人と人がつながるこんな素晴らしい時代になぜ、それでも戦争をしたいと思うのでしょう。もしもそれを口に出す者がいるとすれば不幸以外の何ものでもありません。

最も悲惨な負け方をした日本人だからこそやらなくてはいけないのは万全なる戦争へのpreventive(予防措置的)な対策なのではないでしょうか? これは経験者にしかできない崇高なタスクであるはずです。集団的自衛権が注目されている中、本来最優先され本質的に捉えなくてはいけないことは戦争のない社会を如何に作り上げるか、という高貴さではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年8月15日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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