バロンズ誌:プーチン大統領はフルシチョフ書記長の轍を踏むのか --- 安田 佐和子

2014年08月18日 11:04

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バロンズ誌は、今週の特集号は石油関連サービス技術のシュルンベルンジェです。財務健全化に務め北米で12社を買収し、静かに着実に成長路線の礎を築いたと伝えます。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、地政学的リスク展望です。前週はガザ地区で長期戦闘停止の期待が高まり、ウクライナ情勢もロシアが国境での軍事演習を終了させ人道的支援を開始(ウクライナ軍がロシア軍装甲車両を砲撃した、人道支援向けトラックを攻撃したとの報道もありましたが)。イラク情勢ではイスラム教スンニ派の過激派組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS/ISIL)の掃討に向け空爆に着手するなど、一定の進展がみられました。マーケットは少なくとも前週は週足で陽線引けしており、ダウ平均は109ドル上昇(0.66%高)、S&P500は24ポイント上昇(1.22%高)。過去最高値から、2%以内まで戻してきています。

では、今後はどうなるのか。同コラム、バロンズ誌が「影のCIA」と呼ぶ民間調査会社ストラトフォーの設立者ジョージ・フリードマン氏に直撃電話インタビューしております。

フリードマン氏、ホロコーストを生き延びた両親のもとハンガリーで生まれました。
freedman
(出所 : moun.com)

中東では、サウジアラビアをはじめヨルダン、アラブ首長国連邦に紛争の火の粉が舞い落ちるリスクをにらみ、米国の関与は継続せざるを得ないと断言します。1916年のサイクス・ピコ協定を下地にオトマン・トルコ帝国の残骸から誕生した国家間で、フリードマン氏は自身が「レバノナイゼ—ション」と例える対立激化を予想するためです。スンニ派VSシーア派、部族VS部族、宗派VS宗派の対立はますます深化していき、イラクとシリアは現状の国勢を維持できくなくなる見通し。シリアのアサド大統領にいたっては、ごく限られた領土に追い込まれるシナリオを描きます。混迷の行き着く先は、1970年代半ばや1980年代のレバノン。血みどろの戦いを経て、疲弊するまで泥沼化は収束しないと見込んでいます。

ウクライナに対しては、見方が異なります。

プーチン大統領といえば老獪で、権謀術数の限りを尽くす百戦錬磨といったイメージが先行します。チェスで言うなら、先の先まで読んだ動きで相手を打ち負かす頭脳派といったところでしょうか。そんな無敵にみえるプーチン大統領ですが、フリードマン氏はウクライナ関与が命取りになると大胆に予想します。キューバ危機でソビエト連邦の顔に泥を塗った当時のフルシチョフ書記長のように。

理由として 1)地政学的に重要なウクライナのロシア離れを許したためクレムリンはいら立ちを隠せず、2)反ウクライナ政府への攻撃はルガンスクやドネツクなどごく一部で、3)降雨量の影響で秋には戦車での侵攻が困難になり、4)追加的軍事措置は米欧からの制裁強化を招く——ことから、八方ふさがりになるためです。

要約すると、ズバリ米国と株式市場にロング、ロシアにショート。久しぶりに強気スタンスで締めくくっていました。

ストリートワイズでも、米国のパフォーマンスが際立っていると指摘。ドイツの4-6月期国内総生産(GDP)が0.2%と2013年1-3月期以来のマイナス成長だったほか、日本の4-6月期GDPも6.8%減と消費税増税の反動とはいえ大きな落ち込みをみせていました。対する米国は4.0%増と、大寒波の打撃を受け2.1%減だった1-3月期から見事な回復を遂げています。

S&P500のリタ—ンを見れば火を見るより明らかで、6月末から足元までは0.7%のマイナスでした。ゴールドマン・サックスのストラテジスト、デビッド・コスティン氏いわく、「売上依存度が米国内の企業は不透明性が低い」ためです。しかし米株のうち海外売上依存度の高いバスケットでみると、海外動向の影響が色濃くにじみ3.1%のマイナスでした。ユーロStoxxは3.3%沈んでおり、日本とドイツを含めたMSCI EAFE指数が3.8%下落しています。

とはいえユーロ圏では欧州中央銀行(ECB)の追加緩和が期待されるほか、米国の場合ISIのデニス・デブシェール氏が主張するように「海外依存度の高い企業の下落は織り込み済みで、アウトパフォームする余地を残す」ともいえます。やっぱりストリートワイズは、強気スタンスですね。イエレン議長率いる米連邦公開市場委員会(FOMC)の出口戦略に、全幅の信頼を寄せているのでしょうか。過去2回にわたって確認した緩和終了時の米株の反応も、気にしていないかのようです。

(カバー写真 : World Economic Forum)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年8月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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