どの社会課題に注力するか、選ぶのは個人の自由だ

2014年08月22日 10:55

氷水をバケツに入れてかぶる、そんなパフォーマンスが流行っているようで、インターネットだけでなく他のメディアなどにも著名人が氷水をかぶっている映像が流れていたりしています。これはALS(筋萎縮性側索硬化症)の支援を訴えかけるキャンペーンとして、アメリカ発で広まっているようです。

アゴラでも新田さんをはじめ、数人がこのキャンペーンに言及しています。兵庫県にも三田市の方にALS対応に取り組んでいる病院が三田市(「みたし」じゃないです)にあることを看護師の母親から聞いていますが、大変な難病であるというのはこのキャンペーンから知ることができ非常に有用な運動であることは間違いないと思います。

しかしネット上では武井壮さんが氷水をかぶらないと宣言し、一部で喝采を浴びているようにこのキャンペーン自体に反対している人は少なくありません。私もALSの認知を広めるという趣旨には賛同しますが、やり方は問題があると思います。それは他の人に回すと言うやり方です。これは問題があると言わざるを得ません。


バトンの回し方が氷水をかぶった人が3人を指名するというものですが、これはチェーンメールの方法であるという指摘もされています。一時期、ガラケーが当たり前だった時代には難病支援の寄付集めなどのチェーンメールが回ったりして、口座番号が全く違うものになっていたなど、いくつか問題点が指摘されてきました。難病支援自体は悪くはないのですが、その方法を悪用する人もチェーンメールでは出てきました。

また私が一番問題だと思うのがこのやり方は同調圧力を醸成することです。2011年に東北大震災が起こった時も、九州や遠く離れたところでのイベントが不謹慎だということで自粛すると言うムードが流れました。これも同調圧力でSNS上では「大変なことになっている人がいるのに音楽イベントとは何事だ!」という人がたくさんいました。私は当時「不謹慎・自粛ムードに関する反論 – 松本孝行」というエントリーをアゴラに寄稿させていただき、多くの方に賛同を頂きました。

今回もそれに近いことが起こっているように思います。例えば日本で有名人がパフォーマンスをする現在よりも、前の6月に、イザコザが起きたという話がありました(参照:facebookのアイスウォーターチャレンジで警察ざたになった話)。いわゆる「マイルドヤンキー」的な地元の人たちから回ってきたバトンを拒否したところ「なんだよ、ノリが悪いな」と言われ「じゃあ寄付しろよ」と圧力をかけられたという話です。脅されて寄付するなんてありえない話ですが、このまとめサイトにはそのようにあり全くの空想とは思えないリアリティ感があります。加えてこのまとめの時には寄付としか出てきていないので、ALSの認知を広げることには至っていないようです。

また最近だとお笑い芸人のロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが「行動を起こさずにネットで批判するのはどうか?」という投げかけをしています。確かに寄付などの行動を起こしている人もいますし立派だとは思いますが、これも同調圧力の一種です。このノリについていけない人はイケてない人間というようなレッテル貼りを匂わせる空気感があります。地元で警察沙汰になった話も地元のマイルドヤンキー的な人たちのノリを拒否したところでイザコザになっており、拒否しづらい雰囲気を醸成していると言えないでしょうか。

確かに氷水をかぶることでALSに関する認知が上がればいいでしょう。寄付が集まればいいことで、研究も進んで難病を治す方法が見つかる可能性もあります。しかし世界を取り巻く困難というのはALSだけではありません。少し前にはエボラの問題があり現在進行中ですし、マララさんが国連で中東で教育を受ける権利に関してスピーチをしました。今でも東北の復興のために尽力している人もいれば、自分の生まれた街に貢献するために自腹で町内会やイベントを頑張っている人もいます。

ALSが問題だと思う人、支援したいという人はそれに対して支援すればいいでしょう。しかし残念ながら誰しもがALSが最も最優先されるべき社会問題だとは思っていないのです。人によってその課題の重さを感じる濃淡があるのは事実です。仮に1万円しかお金に余裕が無い人が寄付をしたい時に、この氷水キャンペーンによる同調圧力によってALS支援に寄付をすることは果たしていいことなのでしょうか?そういう同調圧力によって集められた寄付は善意の寄付と言えるでしょうか?

私もまちづくりからNPOや若者教育の支援を小さいながらボランティアで自腹を切って行っているわけですが、「氷水をかぶるか、ボランティアをするか」という二者択一を誰かに迫られて、行っているわけではありません。あくまで自主的に行っているだけです。別にやりたい人はやったらいいと思いますが、わざわざ人に同調するような、そんな空気を醸成するのだけはやめた方がいいんじゃないでしょうか。何をするかどこに寄付するか、それは個人が決めることで誰かに指名されてやることではないと思います。

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松本 孝行
株式会社セカンドチャンス 代表取締役

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