ビットコインが究極の資産逃避アイテムである理由

大石 哲之

アルゼンチンで、自国通貨の値下がりにあわせてビットコインが買われているようだ。

もともと、ビットコインが注目されたのは、キプロスの通貨危機の時であり、そのあと、中国が買った形で、価格が大きく上昇した。

日本にいるとビットコインは、危険な資産としか写らないが、有事の時の資産退避先として、これ以上にすぐれたものはない。

ビットコインよりドルや、ゴールド(金)を買ったほうがいいという指摘があるが、それよりもビットコインのほうが優れている。

・預金封鎖になった場合

自国通貨が下落しているだけなら、外貨に変えてしまうのがいい。ドルに変えればいいというわけだが、自国通貨が下落すると、その国のなかでドルが容易には手に入らなくなる。

そして、為替取引や、国外送金に制限がかかった場合、もうなにもできなくなる。たとえいくら国内にドルをもっていても、海外に送金ができなくなったり、そのドルも、没収されるということにもなりかねない。

預金が封鎖され、いきなりペイオフが実施される可能性もある。

現在のお金は、すべて銀行システムを経由している。そして、現在の銀行システムは国のさじ加減でいかようにもすることができる。

なので、ドルよりも、ゴールド(金)を好む人がいる。

・持ち出し

ドルに変えたところで、海外に送金できなくてはどうしようもない。そこで、現金を隠して海外に脱出しようにも、空港で見つからずに持ち出せる現金などはたかが知れている。国が100万円以上の現金の持ち出しを禁止して明日から施行すれば、いくらお金を持っていてもすべてアウトだ。

ゴールドも同様に持ち出せない。物理的な存在は、すべて空港でチェックして没収することができる。

ビットコインはそのような制限はない。

・完全に記憶として保持する

ビットコインの正体は、アドレスの秘密鍵といわれる256bitの情報だ。1と0が256個ならんだ組み合わせに、自分の保有するビットコインの残高が反映される。

究極のことをいうと、これを記憶しておけば、あとは何も要らない。財産をビットコインに変え、1と0の暗号を覚えたら、あとは何もなくていい。貴方の頭の記憶がビットコインそのものであり、あなたの頭の記憶のなかにビットコインを保持することができる。

なお、256桁の1と0を覚えるのは極めて大変なので、もっと覚えやすいものからそれを再現するという方法がある。たとえば一定の記憶しやすい文字列や、もしくは12個の単語の組み合わせといったようなものだ。これらをブレインウレットとよぶ。頭のなかの財布だ。

銀行も不要であるので、送金で引っかかることはないし、空港のセキュリティ検査であたなの頭の記憶をスキャンすることはできない。そしてビットコインがどこにあるのかはまったくだれも知りようがないし、貴方が行きて海外に逃げられる限り、ビットコインは貴方のもとにある。

これが究極の方法である。怪しい運び屋を使うことなく、12個程度の単語を覚えておくだけで、何億円でも何百億円(相当のビットコイン)でも、その情報が貴方の頭のなかに存在するだけの状態で、自由に持ち運びができる。

ビットコインは究極の資産であるとはこのことだ。

ビットコインは決済手段であって、資産の保全にはまったくむいていないという批判も多いが、わたしはむしろ、ビットコインの本質は資産の保全にあると思う。コンシューマの決済手段としては普及しないだろう。

コンシューマの決済手段としては、自国通貨建てのスマートプロパティが有力だ。ビットコイン自体は、それらの暗号トークン同士の交換のお金としてつかわれ、直接プロダクトやサービスを購入するのは、それ専用のコインができるだろう。