バロンズ誌:失業率低下、隠れた戦犯とは --- 安田 佐和子

2014年09月02日 16:05

イエレン・ダッシュボードのうち、失業率は2008年9月以来の水準まで改善してきました。半面、労働参加率は1978年以来の低水準を維持しており、第1弾の利上げ時期を見極めるべく両者の低下が構造要因なのか循環要因なのか熱い議論が闘わされて久しいですよね。ベビーブーマーの引退とともに労働人口が減少しており、構造要因は明らか。米労働分析局(BLS)によると、2022年には16歳以上の労働参加率は61.6%まで低下する見通しです。とはいえ金融危機後のジョブレス・リカバリーをみると、循環要因も見過ごせません。ジャクソン・ホールでのイエレンさんの講演が、両者を取り混ぜた内容だったのは記憶に新しい。

バロンズ誌は、医療保険制度改革(オバマケア)施行が失業率および労働参加率の低下要因とする持論を繰り返します。米議会予算局(CBO)も、2000万人相当のフルタイム従業員が減少すると試算していました。

しかし、ここに来て新たな戦犯をしょっ引いてきました。何かと申しますと、「障害者保険」です。

25—54歳の男性をみると、2014年5-7月の労働参加率は88—88.1%。前年同期の88.7—88.4%を下回り、66年ぶりの低水準でした。8人に1人、約730万人が労働市場から退出したことになります。

1940年代には97%だった働き盛り男性の労働参加率は、ここまで低下。
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反対に上昇しているのが、社会保障・障害者保険(SSDI)受給者の割合です。25-54歳の受給率は1970年の1.4%から2013年には3.3%にまで上昇していました。1970年当時から、約120万人相当の男性が労働人口から退出した計算になります。55—64歳の男性では1970年の7.1%から12.5%に跳ね上がり、女性の間でも上昇が著しいんですね。

受給率は男女問わず、右肩上がり。
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障害保険を受け取る理由も、様変わりしました。かつては心臓病やガンが主流だったものの、今では精神的障害や背中の痛みなど。日本で浸透した「新うつ病」に近いものがあります。身体に危険をもたらす職業が減少しているなかで、障害者保険の受給者比率が上昇している点も興味深いですね。

2011年11月に「米国における非持続的な障害者保険加入者の増加」を発表したマサチューセッツ工科大学のデビッド・オーター経済学教授は、「職を得れば受給資格を失うため労働市場に復帰するインセンティブは低い」といいます。障害者保険の気になる受給額は、2013年時点で毎月1146ドル(11万9180円)。とはいえ、低所得者層向け医療保険「メディケイド」が適用されるため、オーター教授の試算によると医療保険給付金は27万5000ドル(2860万円)分の生涯医療保険購入に相当するんですから。

気になる障害者保険の負担額はというと、1世帯当たり年間1500ドル(15万6000円)とオーター教授は弾き出しています。保守派の論客であるバロンズ誌、オバマケアと同じくらい社会保障にいかに苦虫を噛み潰しているかが読み取れます。

(文中写真 : Barron’s)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年9月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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