バロンズ誌:ECBの政策決定は、Fedへの援護射撃? --- 安田 佐和子

2014年09月08日 14:52

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バロンズ誌、今週号の特集は下半期見通しです。同誌が選んだ株式ストラテジストによる2013年12月時点の予想中央値1977pを軽く超え、米8月雇用統計を経て2007.71pと過去最高値で引けただけあって強気スタンスに傾斜。2014年末のS&P500見通し予想中央値は、1.1%の上昇を見込む2030pまで引き上げられています。最もブルな予想では、18—24ヵ月後に2500pといいますから突き抜けた感すらありますね。現状の米株は割安でも割高でもない半面、2000年、2007年当時につけたピーク時点より過熱感はないとの認識が強気スタンスを支えています。

S&P500、現在と2000年および07年との比較
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(出所 : Barron’s )

バロンズ誌が選ぶ株式ストラテジストは、以下の通り。

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(出所:Barron’s)

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートのテーマは、もちろん欧州中央銀行(ECB)の政策決定。ドラギ総裁が2011年11月に利下げでデビュー戦を飾って行動力を見せつけただけでなく、2013年11月と同じく今年9月の定例理事会では「whatever it takes(出来ることは何でもする)」と述べた通り、有言実行の中央銀行家として存在感を存分にアピールしました。

ECBの利下げおよび資産買い入れ策という予想外の政策決定に反応し、スペイン10年債利回りは2%付近と過去最低を示現。早速、効果が現れているようにみえます。その半面、ユーロ圏が恩恵を被るのかを疑問視する声も。むしろユーロ圏以外こそ、甘い果実をすするとバロンズ誌は指摘します。

ドラギ総裁が4日、定例理事会後の記者会見でECBのバランスシートを現在の2兆ユーロから2012年初め頃の2兆7000億ユーロへ戻すよう「強く促す」と発言したことを踏まえると、資産担保証券(ABS)やカバードボンドを7000億ユーロ、ピーク時から縮小した13.7%相当を買い入れる方針です。

問題は2つ。ひとつに、ドラギ総裁が強調したように仏伊を中心に構造改革とファンダメンタルズの改革が必要であること。ウクライナ情勢緊迫化、ユーロ圏の銀行によるストレステスト結果も成長を阻害しかねません。

もうひとつは、買い入れ対象となる証券の供給不足が挙げられます。そのほか独、仏、オーストリア、オランダなどのマイナス金利で投資妙味に欠ける点も見逃せません。

ユーロが下落する過程で、ユーロのキャリートレードが加速する可能性も膨らみます。銀行がドル買いに走る流れは出来上がっており、ECB定例理事会を挟んだ前週末にユーロドルは2013年7月半ば以来初めて1.30ドル割れ。約2ヵ月間で4.8%も下落しました。逆に言えばユーロ安で競争力を強化し、ユーロ圏景気の刺激剤として機能する余地を残します。

Fedにとって、ECBの政策は掩護射撃とすら言えます。なぜなら1)ドル高はインフレ抑制要因→すなわち長く緩やかな利上げを正当化、2)米長期金利の低下を促進→ユーロ圏の長期金利につれて低水準で推移すれば米景気を支援——とあって、Fedにとって申し分ありません。

同コラムのタイトル「A Handoff From Janet To Mario」とのタイトルそのままに、NFLシーズン開幕直前を控えイエレンFRB議長が放った緩和策というパスをドラギECB総裁はしっかり受け止め実行に移しました。両者の綿密な連携は、ファインプレーとなって経済に現れるでしょうか。

ジャクソン・ホールでの満面の笑みは、こういうことだったんですね。
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(出所:AP)

ストリートワイズは、なぜ消費が伸び悩んでいるかの謎=conundrumを取り上げています。所得は2011年以来で最大の伸びを遂げる一方で、消費支出は7月までの年初来では年率3.2%と2009年以来で最低という有様。おかげで、貯蓄率は5.7%と2年ぶりの高水準に達しています。

まず思い浮かぶのは、第一に冷夏の影響。第2にベビーブーマーが続々と引退し貯蓄生活に移行する段階で、消費にブレーキが掛かっていることも一因でしょう。何より、金融危機がもたらした未曾有の景気後退=グレート・リセッションの余波も忘れてはなりません。小売セクターこそ消費意欲の後退を的確に反映しており、こうした状況が改善するのにまだまだ時間がかかりそうです。

(カバー写真:Fox Business)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年9月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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