バロンズ誌:中銀の助け船、スコットランド問題の緩衝剤に --- 安田 佐和子

2014年09月15日 15:05

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今週号の特集は、アメリカン・エクスプレス。今年は年初来で3%マイナスのリターンに甘んじるものの、1)クレジットカード利用の増加、2)安定的な経済成長、3)中低所得者層への顧客サービス拡大——などを通じ、収入増加と株価上昇が期待できるといいます。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ウォールストリートでは、英国とFedに注目。18日のスコットランド独立をめぐる住民投票でイエスの投票が過半数を占めれば、英国との約3世紀に及ぶ関係に終止符が打たれ、英国はもうグレート・ブリテンの名を返上し「Not So Great Britain」と呼ばれかねません。

もちろん、金融市場と景気への影響が最大の懸念事項。世論調査結果の衝撃がポンド安と英国債安で体現される一方、バロンズ誌は英国株を不安視していません。理由として、「iシェアーズ・MSCI・英国ファンド/iShares MSCI United Kingdom fund (EWU) 」を例に挙げます。このETFのうちロイヤル・ダッチ・シェルの2社が全体的な比重の9%を占め、HSBCにいたっては7%。英国に売上を依存していないグローバル企業であるため、最悪のシナリオを迎えても影響は限定的と論じます。

主なEWUの構成銘柄、トップ一覧はこちら。
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(出所:iShares)

世界全体を振り返ると、スコットランドのほかスペインのカタルーニャ、ベルギーのフランドルなどが独立問題を抱え、現在の潮流とすらいえます。ウクライナ緊迫化や、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国(ISIS)」が標榜するイスラム圏再統一などは、最悪の事例でしょう。

一方で、世界は中銀が供給する流動性で溢れ返っています。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのグローバルリサーチ部門主席投資ストラテジスト、マイケル・ハートネット氏などによる分析をみると、世界人口ざっと70億人のうち14億人が実質マイナス金利(インフレ調整ベース)の状態にあり、世界株式市場の時価総額81%がゼロ金利政策によって支えられ、45%の国債利回りが1%以下ですから。

異例の低金利を継続するFedは、16—17日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を予定します。市場の焦点は、1)経済・金利見通し(SEP)、2)イエレンFRB議長の記者会見、3)インフレをめぐる文言、4)長きにわたる低金利(consinderable period)。1)ゼロ金利政策解除後の道筋、2)複数の腕をもつヒンドゥー教の神のごとき様相を呈するイエレン・ダッシュボードへの採点、3)足元で緩和するインフレ圧力への認識、4)経済指標の改善に合わせた長きにわたる低金利の文言への対応——に注目というわけですね。

現状、マーケットのフェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標の織り込み度は、2015年のメモリアル・デー(5月25日)に0.25%、レーバーデー(9月7日)に0.50%、クリスマス(12月25日)に0.75%。2015年12月末時点は6月FOMC時点の経済・金利見通しを下回っていますが、さて今回はどんな数字が並ぶのでしょうか。

ストリートワイズも、FOMCを取り上げます。大胆にも、「経済指標重視の政策からカレンダー式の政策への回帰」の可能性を指摘。経済指標および労働指標の改善を踏まえ座して待つ姿勢がタカ派に反旗を翻らせ、イエレンFRB議長の尻に火を点けると読みます。

利上げシナリオが明確になったとしても、心配は無用と説きます。2004年の例を踏まえれば約2年間で17回の連続利上げを行った当時、米株は12%上昇していました。緩やかな利上げなら、利回り上昇でも堅調な成長が実現するためです。

かつてFedは確かに早急な利上げで、政策運営に失敗してきました。世界恐慌からわずか3年後に引き締め政策に踏み切った1931年こそ、最たる例でしょう。1981年にポール・ボルカーFRB議長(当時)がインフレ退治のため決断した大幅利上げでさえ、失業率の急伸とS&P500の急落を招き猛烈な批判を招いたものです。ただしボルカーFRB議長の功績は、今となっては明白ですね。同氏が振るった大鉈は、過去20年間に及ぶインフレ高進の連鎖を断絶させたのですから。

翻って現在、インフレ見通しは低水準にありボルカー議長が施したような荒療治の必要性はナシ。時間軸政策がカレンダー式に戻ったとしても潜在成長率の低下もあって長く緩やかな利上げシナリオとなる公算は大きく、ドイツ銀行のデビット・ビアンコ主席株式ストラテジストは米10年債利回りが数年にわたり4%以下で推移すると予想しています。

そうなれば、実質株式保有コストは従来予想の6.0%から5.5%へ低下。S&P500に対する見通しを楽観的とさせ、同氏は2014年末につき1850pから2050pへ上方修正しました。2015年末も、2000pから2150pへ引き上げています。

暦の上では秋に差し掛かっておりますが、米株はこの世の春をまだまだ謳歌するという見通し。逆に言えば量的緩和(QE)の終了に全く言及しておらず、Fedによる小幅利上げ策がバブル延命につながる——バロンズ誌の読みは、的中するのでしょうか。

(カバー写真:AP)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年9月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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