バロンズ誌:アリババ・フィーバー、米株相場に波及せず --- 安田 佐和子

2014年09月21日 21:19

00001

バロンズ誌、今週の特集は老後について。「うろたえるな!(Don’t panic)」のタイトル通り、支出動向やら積み立て年金の引き出し法、税金対策を論じながら必要以上に不安視する必要なしと説きます。

当サイトで定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、Fワードで始まります。といっても、米連邦公開市場委員会(FOMC)ではなく、米食品医薬品局(FDA)のF。身近になった男性ホルモン補充医薬品に、FDAが規制強化に向けメスを入れる方針を固めつつある——。このニュースをなぜ同コラムが取り上げたかというと、テストステロンこそマーケットの原動力だからなんですね。ちなみに、アメリカでTVをつけると「Low T」という言葉を聞かない日はないほど、テストステロン低下に悩む男性のための補充医薬品のCMが流れています。

ウォールストリートの元トレーダーで現在はケンブリッジ大学の神経科学者であるジョン・コーテス氏いわく、「テストステロンはトレーダーの『根拠なき熱狂』に大きな影響を与えている」というから、聞き捨てなりません。テストステロンの高まりは、戦闘に向け自信を与え「勝者効果」を発揮する傾向があるのだとか。最終的に、過剰な自信から2008年のように金融危機の引き金を引く側面も否定できませんけどね。

アリババの上場初日こそ、「熱狂(exuberance)」という言葉がふさわしい。80ドル付近への上昇が予想された一方、IPO価格から45%もの急騰を経て38%高で引けたのですから。半面、アリババ・フィーバーは局地的にとどまり、S&P500とナスダックは下落。iPhone 6とiPhone 6 Plusの発売を開始したアップルですら0.8%安で取引を終えたのは印象的でした。

iPhone 6販売での長蛇の列、アリババIPOの陰に隠れてしまった感が。
apple
(出所:My Big Apple NY)

興味深いことに、アリババIPOの迎え上場投資信託(ETF)のiShares ラッセル2000(IWM)も1.3%安、ダウ平均で言うなら200ポイントもの急落に相当する水準で引けていたのです。小型株指数ラッセル2000といえば、S&P500の構成銘柄とは正反対で売上依存度は米国内であるにも関わらず、この体たらくでした。

9月FOMCでドット、つまりFF金利見通しが上方修正されたからというわけではなさそうです。マーケットは「Fedに決して歯向かうな(never to fight the Fed)」の市場格言に反し、2016年末FF金利につき19日時点で1.865%とFOMCメンバーの金利見通しからまるまる1%下回る水準を織り込む程度で、緩和的政策の継続を予想していることが分かります。

忘れてならないのは、中銀の政策が必ずしも実体経済に恩恵を与えるとは限らないということ。欧州中央銀行(ECB)が鳴り物入りで開始した「的を絞った長期流動性供給(TLTRO)」第1弾での供給額は826億200万ユーロにとどまり、市場予想の1500億ユーロに大きく届かず。中国人民銀行が同国内の大手銀行5行に対し大型連休を控え5000億元(814億ドル)の融資を決定し、18日に14日物レポ金利を引き下げる半面、日銀の流動性拡大政策は奏功しているようには見えません。2008年以来の109円乗せまでドル高・円安が進んだ一方で、バンク・オブ・アメリカは貿易赤字8兆—10兆円のうち製造部門海外移転の影響は5兆—6兆円に及ぶと試算しています。

アリババのIPOも終わり、米株相場からはある種のテストステロン補充剤を失ったかたちです。FOMC声明文で「長きにわたる」低金利の文言が維持されたとはいえ、視線の先に利上げがあることに間違いはなく。19日の米株相場は、ブルの荒かった鼻息が静まってくる兆しなのでしょうか。

ストリートワイズは、自社株買いがテーマ。上半期の自社株買い総額は3383億ドルと、金融危機後の最高を示現しました。とはいえ1-3月期が押し上げており、4-6月期は前年比マイナス。息切れ感が漂います。

それでも、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの米株ストラテジスト、サビータ・スブラマニアン氏は「ブル相場の終焉を意味しない」と強気です。自社株買いの縮小こそ「企業の業績拡大への自信を表す」というのが、その理由です。

2013年の動向は、彼女の自信を裏打しています。S&P500構成銘柄のうち自社株買い縮小に踏み切った50社は、指数のリターンを20%上回っていました。2014年に入ってからも、0.3%の小幅下落にとどまっています。

シティグループの米国株担当主席ストラテジスト、トビアス・レブコビッチ氏は「買収・合併(M&A)は金融危機以前の水準へ戻している」と指摘。自社株買いが縮小しても、企業はうず高く積もる資金の有効な振り向け先を常に検討しており心配は無用と論じます。

慎重なアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートに対し、ストリートワイズはあくまでブルな見解でした。

(カバー写真:AP)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年9月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑