「維新の党」の外交安保政策(上):日本防衛以外は無関心

2014年09月23日 06:42

一昨日、「維新の党」が誕生した。
「民権」という初期自由民権運動の精神を党の綱領に盛り込み、議会の構図を「官権・藩閥」VS「民権・小さな政府」としたことは戦略的に見事であるだけでなく、歴史的な快挙と言うべきだろう。ただ、外交・安全保障に限れば、その綱領と基本政策とそこから見えてくる価値観には多々問題が多いのも事実である。以下ではそれについて論じたい。


1.「維新の党」の外交安保政策
「維新の党」が発表した綱領と基本政策は以下である。

A綱領
法と秩序に基いた現実的な外交・安全保障政策を展開する
・維新の党は、我が国が国際社会において名誉ある地位を占めたいと願う。自国の防衛を万全なものとするとともに、世界に覇を求めず、「法の支配」「自由と民主主義」等の価値を共有する諸国と連帯し、平和の増進に貢献する
・また、持てる人材と技術(技術基盤と技術革新力)を駆使し、文明の発展と世界の繁栄に寄与する

B基本政策
[Ⅳ] 集団的自衛権の検討を含む「自衛権」行使の範囲の適正化と法整備、「ソフトパワー外交」の積極的展開
・日米同盟は外交・安全保障の基軸。同時に沖縄の基地負担を軽減
・我が国の主権と領土・領海・領空を徹底的に守る自主防衛力を強化
・防衛出動に至る前のいわゆるグレーゾーンの事態対処を含めた法制度の整備
・尖閣諸島はじめ南西方面の対処等離島防衛に万全の体制を構築。北方領土問題は外交交渉、竹島問題は国際司法裁判所等を通じた平和的解決の実現
・自国への攻撃か他国への攻撃かを問わず、我が国の存立が脅かされている場合において、現行憲法下で可能な「自衛権」行使のあり方を具体化し、必要な法整備を実施
・北朝鮮の核・ミサイル、拉致問題については国際社会と連携して断固たる措置を実施
・日本の強みである技術力と人材を活かし、ODAや経済連携を戦略的に推進
・特定秘密保護法は見直し、第三者機関の権限強化等の歯止めを追加。あわせて情報公開を促進

ここから透けてくるのは、「維新の党」の三つの無関心である。
すなわち、(1)日本防衛偏重で外交に無関心、(2)外交防衛における予算及び組織的マネジメントには無関心、(3)地域秩序及び国際秩序に無関心である。その理由を以下で論じていこう。

2.日本防衛偏重で外交に無関心
まず、「日本防衛偏重で外交に無関心」の理由だが、基本政策を見ても外交問題への言及がほとんど皆無で離島防衛のための法整備や防衛力強化の話と日本防衛の話題ばかりだからである。最近、防衛省がかなり注力している軍事力を用いた外交政策、すなわち能力構築活動、PKOのあり方はおろか用語すら出ていない。

外交自体も領土問題の直接的な二国間問題が議論されているだけであり、目指す秩序観すらなく、いわんや今後の日米や日中関係のあり方すら出ていない。東南アジア等との関係もない。あるのは北朝鮮をどうするかだけである。

また、日米同盟は基軸とあるが、これは「日米関係」の一部分であるし、どのように同盟を運用したいのかわからない。日米同盟を使って、どのような地域秩序や国際秩序を目指すかが大事であって、その為の方策を書くべきであろう。基軸と書いて、鳩山政権の過ちを繰り返さないとPRしたかったのかもしれないが…

これでは外交政策や安全保障政策ではなく、防衛政策ですらないだろう。もっとミクロな軍事政策と言うべきだ。故に「日本防衛偏重で外交に無関心」と評価するのである。

むろん、「価値を共有する諸国と平和の増進に貢献する」「ソフトパワー外交の積極的展開」とちゃんと書いてあるじゃないか、との反論があるだろう。しかし、両者とも具体的な戦略指針すら基本政策には書いていないので、どのように目指すのかよくわからない。

「日本の強みである技術力と人材を活かし、ODAや経済連携を戦略的に推進」が「ソフトパワー外交」の中身に当たるのかもしれないが、これは5年以上前のODA政策とあまり変わらず新規性がないばかりでなく、安倍政権よりも後退的な内容である。せめてスマートパワー外交とでも書けば多少の新規性はあったと思うのだが。

もし今後の野党再編なりでアップデートされるのであれば、日本防衛だけでなく、近年の能力構築に代表される軍事力活用や民間活力も含めた「スマートパワー外交の積極的展開」の中身を論じるべきであろうし、「維新の党」が目指す平和や秩序を論じられるべきだろう。勿論、その為の外交政策がもっと追加されるべきなのは間違いない。

3.外交防衛における予算及び組織的マネジメントには無関心
第二は「外交防衛における予算及び組織マネジメントには無関心」なことである。これはいつもの「維新の党」らしくない。

従前より、橋下共同代表は予算及び組織マネジメントを日本の政治家の中では珍しく重視し、その結果には議論が多々あるものの、効率化を目指してきた。そして、彼は結党大会でも、「こういう細かな予算が大事」「主婦目線で予算を洗い直していく」と明言したと聞く。当然、外交防衛でもこうした感覚が発揮されると思っていたし、期待もした。

が、こうした論点は他の分野と違い余り論じられていない。のみならず基本政策には「徹底的に守る自主防衛力を強化」とあり、これでは予算の無限化を表明したに等しい。

何故ならば、中国相手に「領土・領海・領空を徹底的に守る自主防衛力」を考えてみても、米軍のアセットを一揃いそろえねばらならなくなってしまうからだ。むろん、防衛予算の拡充はされるべきだが、単純に増やせばよいものではないし限度がある。であるならば(1)予算の優先順位付け、(2)人員及び年齢構成の見直し、(3)ボトムアップレビューによる見直し等の組織マネジメントによる効率化が必須である。

しかし、一文字たりともそうした文言はなかった。防衛予算が無限にあればそれでも良いのだが現実はそうではない。そもそも「維新の党」のアイディンティティは予算効率化を細かくやっていくことにあるのだから、今後の基本政策等の改訂では外交防衛における予算及び組織的マネジメントへの言及を望みたい。

「維新の党」の外交安保政策(下):地域秩序及び国際秩序に無関心」に続きます

站谷幸一(2014年9月23日)

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