もはや問題は「強制連行」ではない

2014年09月28日 09:28


朝まで生テレビで、朝日新聞OBと私の意見が一致し、秦さんと一致しなかった点がある。「もはや強制連行の有無は争点ではない」ということだ。これまで朝日が「慰安婦は軍に連行された」というデマを流してきたから、それが争点になっていたが、彼らが強制連行を否定した今となっては、それを論じることには意味がない。


もちろん朝日はその点を訂正して記事を撤回すべきだが、問題の本質はそこにはない。まず大事なのは、請求権の問題である。韓国は1965年の日韓請求権協定で賠償請求権を放棄しているので、日本はこれ以上つかみ金を出すべきではない。佐々江案のような中途半端な形で出すと、また挺対協が「日本は国家責任を認めていない」と騒いで、韓国政府は対日非難をやめないだろう。

これはほっておけばよい。そこまでは秦さんと一致したのだが、彼は「売春婦や人身売買は戦前はどこでもあったのだから、当時の各国を比較して採点すればいい」という。私は、それではだめだと思う。NYTのタブチ記者に代表されるように「性奴隷=人身売買は絶対悪だ」というのが欧米メディアの立場だからである。

この主張は、韓国政府とは違う。韓国の主張は吉田証言などに依拠した嘘だから、「強制連行なんかない」といって拒否すればいいが、朝日がこの20年間に世界に広めた誤解が誤解を呼んで、国連で「日本軍の性奴隷制」を非難する報告書が出て、27ヶ国の議会で「慰安婦非難決議」が出ているのだ。この国際社会の常識が最大の問題である。この点では、東郷和彦氏の認識が正しい。

この問題は厄介である。タブチ記者に「連合国にも戦時売春はあったし、ドイツには国営売春があった。人身売買は今でも世界中にある」といっても、彼女は「他国が何をやっても日本軍の悪行は許されない」という。「女性の人権が問題なら、70年前の日本軍よりいま世界中で起こっている人身売買を批判しろ」といっても、理屈抜きに「国際社会の常識」をくり返す。

これは吉見氏の言い訳と同じだ。彼らはおそらく自分の論理が成り立たないことを知っているが、日本を道徳的に非難することで大衆の共感を得られると思っている。つまり問題は論理ではなく大衆の感情なので、まず朝日新聞が「強制連行は嘘だった」という謝罪広告をNYTなどに出すべきだ。これによって慰安婦像などの初歩的なデマは止められる。

最終的な目的は、国連や各国議会の慰安婦非難決議を撤回させることだ。このためには外務省が改めて反論し、朝日もそれに協力すべきだ。彼らも20年以上、嘘をついた罪を認めたのだから、その贖罪に今後20年は努力する義務を負う。それが朝日の地に落ちた信頼を回復する道でもある。

われわれもTruth about Japanというサイトを立ち上げて、国際社会の誤解を解く努力をしているので、ボランティアを募集します。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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