海外で仕事をする、ということ --- 岡本 裕明

アゴラ

海外から羽田なり成田に着くと必ず思うことがあります。それは空港職員がやたらに多いこと。まず、飛行機を出たところに空港職員が最低でも5、6名。車いすの人が多い時は十数名がずらり。ついで荷物受取場も乗り換え先ごとに札を持って声を上げている職員から荷物担当の職員、税関も羽田なんて時間帯によってはほとんど飛行機が到着しないのに税関の端の方まで全レーンオープン。暇だろうな、と思います。


海外の空港は職員が少なく、用があれば窓口に自分から行くようになっています。カナダは在住者の場合、入国審査、税関申告が日本のように分かれていない上にパスポートや移民カードと税関申告書を機械に読み込ませればそれで終わり。読み取り機は30台ぐらいありますからまず混みません。

日本の家電量販店。平日はさすが店員も手持無沙汰ですから法被を着た人がやたらに目立ちます。冷やかしでも十分相手にしてくれます。一方でこれではネットビジネスに勝てないだろうな、という勝手な心配もしてしまいます。

ぱっと見ればこんなに人が必要なのか、と思われることもありますが、忙しい時は猫の手も借りたい状況となり、人が足りなくてサービスが十分でなければ苦情の嵐となるのが企業側は怖いのか、「すき家」の二の舞にはなりたくないのかもしれません。これは逆に職を探している人からすれば就職しやすいとも言えます。

他方、日本人が外国で仕事をゲットするのは特殊な技能を持っている場合は別としてハードルはかなり高くなります。理由は言語もありますが、それ以上に就職口が少なく、機会が限られるという事でしょうか? 海外の大学を卒業しても日本のような新卒を採用してくれる仕組みがある企業はごくわずか。ではどうやって就職口を探すかといえば大学時代のアルバイトなどの伝手、卒業後のバイト時代を通じて正社員に採用してもらうなど一定の経験を経た上でようやくまともな仕事をゲットします。

結果として次々と転職しないと自分のキャリアアップにつながりません。給与も定昇があるわけではなくできる人には給与の上昇と仕事への責任の抱き合わせのオファーが来ます。キャリアアップを望まない場合、その会社のその職が無くなった時、自分の仕事もなくなるリスクを抱えるほか、クビになる(リストラされる)ケースも多々あります。

つまり、海外での就職は実に疲れるし、タフネスが要求されるのです。

海外で活躍する日本人の女性。二通りのケースがある気がします。一つは国際結婚後、子供も作らず夫婦ひたすら働き、共にキャリアアップを図るケース、もう一つが結婚後すぐに子供を作るケースなのですが、気になるのは子供をもうけた日本人の奥様が職場復帰しないことが割と多いのであります。

長年見てきたその心理の陰には国際結婚による「疲れ」を自分の子供と過ごすことで楽になろうとしている気がするのです。一方で私の会社にかつていたフィリピン人の女性。出産2週間ぐらい前まで普通に勤務し、出産後1か月ぐらいで職場復帰しています。彼女は二人子供ができましたが両ケースともそんな風にしてすぐに職場復帰しています。子供はナニーに預けるか託児所に入れます。

多分、日本の常識では考えられないでしょう。子供をほかの人に抱っこされるのすら嫌がる人もいるぐらいですから。

「やっぱり働こうかな」と思う日本人が見つかる職は人の出入りが比較的多く「日本語の技量を要求される」飲食店などに限られてしまい、職の偏りが大きくなっています。男性の場合も意気揚々として移民して起業しても成功する確率は数%程度でしょうか?(何をもって成功というかといえば10年間自分の仕事だけで飯が食える最低限をクリアすることとしておきましょう) 起業で食べられない男性は結果としてアルバイトに精を出し、アルバイトがいつの間にか主たる収入源となってしまうのです。そんな人を何人も見てきて「例の仕事はどうしましたか?」と聞けば「残念ながら休業です」と寂しそうに答えるのです。

もちろん、起業して成功する確率は洋の東西を問わず、極めて低いのですが日本人の外国での起業した人の成功率は感覚的には日本国内の10分の1ぐらいまで下がる気がします。アメリカなどには日系人としてビジネスで成功し巨万の富を得た人も結構聞きますが、移民となると少ないでしょう。

今、仁川のアジア競技大会で日本人の大活躍ぶりが連日大きく報道されています。何十年ぶりの金といったものもあるようです。しかし、オリンピックとなると歯が立たなくなるのは単にレベルが上がるだけではなく、目線の違いがありそうです。日本人が白人慣れしていないような気もします。つまりメンタルな強さの欠如です。

一昔前、日本男子ゴルフ界は国内では連戦連勝でも海外に行くとからっきし勝てないと言われました。これもメンタルな面が弱すぎ、雰囲気に飲まれてしまうから、と解説されていました。その結果、多くのゴルフプロが「外国では飯が食えないから国内ツアーで稼ぐ」という情けない状況がありました。

私はカナダで面接をする際、志願者によく言うことあります。「このポジションに応募者は20名います。採用枠は1名です。つまり2番じゃダメなんです。一番以外は全員アウトなんですよ。でも日本で就職するなら同じ20倍でも10人採用のところ200人来ますから10番でもOKなのです。この違いは大きいですよね」と。

海外で仕事をゲットしてある程度稼いだり、ましてや成功者となるハードルは異様に高いというのは言語の問題ではなく、あらゆる仕組みそしてハングリーさを含めた精神力との戦いになるという事でしょうか?

それでも10年でも20年かけても構わないので日本人が少しでも海外で挑戦し、成功の栄冠を得られるようになることは老いゆく日本に於いて重要な若者の選択肢となるはずです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年9月28日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。