東京の未来を予測するな

森本 紀行

東京の都市再開発は、驚嘆に値する。この勢いで2020年のオリンピックまでいくのか。東京の将来の姿は、もはや想像もできないが、確かなことは、再開発により、不動産の投資価値が大きく変動することだ。


不動産の場合、積極的に将来価値を変えることも可能らしい。しかし、投資の科学の問題として、どこまで将来の変化を現時点での価値評価に織り込んでいいのか。やはり、保守主義の原則は、はずせないのではないか。できるだけ禁欲的に将来を見積もって、それでも、投資価値がある、ということが基本的投資判断なのではないか。

私は、1964年、オリンピックの年に、北海道の小さな町の小学校へ入学した。北海道の町は、明治初期の人が川に沿って海から入植し、建設したからだと思うが、川沿いにある。私の町にも、大きな川が流れている。

役場などは川の北に作られたので、古くは、町の中心は、北側であった。ところが、後に鉄道ができたとき、川の南を通ったのだ。だから、街の中心は、駅のある南に移った。そして、更に歴史は展開し、鉄道は廃線になり、駅の周辺は廃れた。

古くからある主要道路は、町を南北に走っている。川を渡るところに橋がある。結局、この橋の両端が、今も昔も、町の中心であり続けている。基幹交通が、川舟、鉄道、自動車というふうに変わるにつれて、町も変わったのである。

時代は変わる。舟運や鉄道は、今後、見直され、再評価されるのかもしれない。また町は変わるだろう。

東京だって同じだ。都市景観を変貌させる大規模な開発。裏には、都市機能の拡充と、それに伴う不動産価値の上昇期待がある。しかし、冷静に考えてみると、都市機能の充実が、不動産価値を高めているのか、それとも、不動産価値の上昇を見込むことが、都市機能の充実へ向けた投資を誘発しているのか、よくわからない。

投資と投機に間には、明確な一線が画されていなければならない。一線は、予測を巡って引かれているのだ。明るい将来への希望のなかでは、投資判断は、科学性を失い、情動性を帯びる。予測するな。保守的であれ。今の価値を見つめろ。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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