「地方再生」は自主的に特色を活かすことから --- 岡本 裕明

2014年10月07日 12:39

10月4日の日経夕刊のトップは「人口減 もがく自治体 移住・子育て支援、『消滅可能性都市』4割が予算増、『成果』2割どまり」とあります。つまり、地方再生に対して今一つ、成果がない、という事でしょう。安倍首相は今国会で地方再生を主題としようとしています。しかし、今のところ、これという決め手になるような話題は聞こえてきません。

日経によると地方都市が対策として打ち出しているものとして空き家対策、雇用場の確保、移住者積極的受け入れ、給付金、PR広報、Uターン促進といったものが並んでいます。個人的には全部、付け焼刃的な気がします。


地方の根本問題は若い人が都会に出てしまい、年齢構成が非常に悪いことが主因の一つだと思います。何故都会かといえば仕事と刺激を求めるわけです。ご近所は高齢者ばかりで子供の友達すらおらず、集落内のどこどこの誰ちゃんの噂話は家族内部情報よりも早かったりすれば若い人には居心地が悪いでしょう。

とすれば、まず、集落や町に年齢ミックスを作り上げなくてはいけませんが、今さらUターンといっても都会の高層ビルから田舎暮らしとなって何が不安といえば仕事がない、というのが私の知る30~40代の人たちの声であります。物価が安ければよい、空気がきれいならよい、広々とした家…といった魅力は一部の人には刺激になるでしょうが、本質的ではなく付随的理由な気がします。

私が以前から成功例として注目していたところをご紹介します。それは徳島県の神山町。グーグルの地図を見てもらえば分かりますが、徳島から剣山に向かって30キロも行く果てしなき田舎であります。私も四国はかなりぐるぐる回っていますが、ここはさすが山奥過ぎて行ったことがありません。しかしそこにはITベンチャーが9社も立ち上がったとか。

なぜ、徳島かといえば私の記憶が正しければ「一太郎」のソフトで有名なジャストシステムが徳島発であったことが大きな理由だったと思います。徳島とITというある意味、もっとも結びつきが少ない関係、ITと田舎という相反する関係が実はキーだったという事になります。そして、徳島県は200億円もかけて県内のすべての集落に光ファイバーを敷くのです。恐ろしいほどの賭けだったと思います。しかし、その結果、林業で細々と賄っていた神山町のようなところにIT、起業、若者、田舎暮らしという正に理想的な状況が生まれてきているのです。

これは年齢ミックスを作り上げた好例だと思います。私は神山町は極端な例にしても徳島県がITの県としてベンチャーがベンチャーを呼び込む形がつくられれば非常によい環境になると思っています。また、徳島県は実は関西地区まではクルマで2時間もあれば到着するアクセスの良さがあります。つまり、淡路島経由で一直線なのです。また、徳島の南の海岸沿いはサーフィンのメッカとしても有名で若者を惹きつける魅力は多いのではないでしょうか?

では徳島のような例を他県でどう展開していくか、でありますが、その地方にしかできない産業の育成の仕方もあるのではないでしょうか? 例えば風力発電に適している県は単に発電施設を作るだけでなくその研究施設や関連企業を誘致するという事もあるでしょう。あるいは原発のある県には原発をいかに安全に稼働できるか、関連企業をインセンティブをもって誘致するのです。地熱発電もあるでしょう、北海道なら日本最先端の農業研究とか、食物工場を誘致するなどそれこそいくらでもアイディアは湧いてくるものです。

風力発電施設にしろ、原発施設にしろその施設の周りには人を近づけないようにしています。勿論、安全対策ではありますが、これはマーケティング的には逆にそこにその施設が存在することを覆い隠してしまい、町おこし展開できる機会を喪失しているともいえるのです。

つまり、私の地方再生案とはまず、その地方に特化した産業を掘り起こし、税などのインセンティブをつけたうえで10年、20年かけてそれを育成していくことだと思います。

シリコンバレーはサンフランシスコ郊外ですが、そこから始まった産業と街はどんどん北上し、サンフランシスコに向かって街が伸びてきています。これもある産業のきっかけから人や企業がどんどん集積していった好例であります。私のイメージする地方再生とはこういうことであります。いきなり空き家対策だとか、移住者誘致といっても無理な話なのですが、中央政府がそういう方針だから地方都市は否が応でも何かやらなくてはいけないという「いやいや感」が漂っているのであります。

本来なら政府が言うからやるのではなく、県なり地方都市が自主的に創造し、考え、実行するべきなのです。そこが欠如している気がします。ならば地方再生のキーとは地方の役人の人事刷新も効果的なのかもしれません。若い人たちしか持ちえないユニークな発想は結構価値があるものだと私は信じています。

地方再生、それは首相発でもないし、中央政府発でもないのです。国会の主題でもなく、もっと地元からの声を受けて中央が全面的サポートをするものではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年10月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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