バロンズ誌:原油先物が弱気相場入り、米株も追随するのか --- 安田 佐和子

2014年10月13日 17:20

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バロンズ誌、今週号はサムスンを特集に取り上げています。7-9月期決算の速報値で大幅減益を発表するなど投資家のお気に入りから外れた感が強いものの、1)年末の株価収益率(PER)はたったの8倍で、4-6月期末のキャッシュ・投資利益を除いた場合でも5倍と割安感が高い、2)半導体部門と現金だけで足元の市場価値を上回る——などが、その理由。スマートフォン部門で辛酸を舐めるブラックベリーをはじめ、モトローラ、ノキアよりも、2013年秋に株価下落を経験したアップルに近いと説明します。特許問題で法廷闘争を繰り返したアップルと比較するなんて、興味深い指摘ですね。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、テーマはもちろん米株安。足元の下落は、原油先物に追随していると説きます。WTIが83.59ドルと2012年半ば以来の水準まで、ブレントも一時88.11ドルと2010年12月以来の水準まで落ち込みをみせ、弱気相場入りしました。同時にエクソン・モービルは足元の下落で9%、6月に示現したピークからは15%も沈んでいます。「ロックフェラー・ブラザーズ・ファンド」は奇しくも9月に、原油関連銘柄の投資からの撤退を発表。ロックフェラー家といえば原油で巨万の富を得たことで知られ、エクソンがジョン・ロックフェラー氏が創業したスタンダード・オイルにつながる事実を踏まえると皮肉そのものです。

原油安はガソリン価格の下押しにつながり、家計にとってはうれしいニュース。米国内総生産(GDP)も、0.3%ポイント押し上げられる見通しです。半面、マイナス要因も見捨てておけません。原油採掘関連業者のほか、頭を抱えているのはディスインフレに悩まされるユーロ圏や原油生産国。原油が足元で20%下落したものの、ドル高の余波からユーロ圏の場合は15%の下落にとどまります。

ロシアともなれば、西側からの経済制裁も重なり打撃は深刻そのもの。原油安につれ通貨安に直面し、ロシア中央銀行は8日に15億ドル(約1600億円)もの外貨を売却しています。ロシア編入の是非をめぐり、クリミア半島が住民投票を実施する3月時点の44億1000万ドル(約4760億円)以来で最大の介入規模となりました。財政悪化も予想されるだけに、国際通貨基金(IMF)がロシア成長見通しを下方修正したのは当然です。

S&P500(青) VS 米国原油ETF(緑、USO)、6ヵ月間のリターン比較をみると雲泥の差。
spx vs uso
(出所:Yahoo! Finance)

原油安は世界経済だけでなく、米連邦公開市場委員会(FOMC)政策見通しにも影響を及ぼしつつあります。世界経済の鈍化とドル高に懸念を表明した9月FOMC議事録公表後、FF金利先物動向が示す2015年7月の利上げ織り込み度は36%に過ぎません。同年9月でようやく57%を超える程度。3ヵ月前と比較すると、違いは歴然です。

利上げ前倒し懸念が後退しても、米株が下落の一途をたどっているのはなぜか。ルイーズ・ヤマダ・テクニカル・リサ—チ・アドバイザーズ創立者のルイーズ・ヤマダ氏は、足元の原油関連銘柄の下落が「2006年当時の金融株に似ている」と指摘します。2007年10月に当時の最高値を更新する前、リーマン・ショックの元凶となる金融関連は他セクターに先駆けて上昇・下落したからです。

ヤマダ氏は、52週安値を更新する銘柄数にも注目。足元では、2011年以来の水準まで増加しているそうです。さらに、相場をけん引してきたテクノロジー関連もついに足場を崩しました。10日の相場は、ナスダックの急落にみられるようにマイクロチップ・テクノロジーを引き金とした半導体銘柄の下落に端を発していましたよね。

ここまで下落してくれば、押し目買いを期待したいところ。ただし、足元の下降局面で1.5兆ドル(約160兆円)が吹き飛んでしまっており、投資家は買い場探しに慎重にならざるを得ません。決算シーズンに入り、業績見通しにも楽観的な見方が後退している事情もあります。バークレイズのアナリストも「企業は、ドル高や世界景気鈍化を十分に利益見通しに反映させていない」と警告を発していました。

それだけではなく、9月FOMC議事録では楽観視されていた企業支出のうち設備投資に翳りが出てくるリスクも。エネルギー関連企業だけで設備投資全体の27%を占めるだけに、決算発表でのガイダンスにはアナリストから投資家まで従来以上に関心が集まること必至です。

ストリートワイズも、米株安に焦点を置いています。最近のニュースといえばイスラム国、エボラ出血熱、さらにはIMFの警告など、「恐れ」を煽る内容ばかりでした。ただマーケットフィールド・アセット・マネジメントのマイケル・シャオル氏は、むしろ「市場がS&P500をあらためて通過するには、『恐怖』が必要だ」と歓迎しています。市場に溜まりつつある「泡」を取り除く、絶好の機会だからです。

シャオル氏は、足元の相場下落が1997年10月当時に類似しているとも説きます。あの頃も最高値圏を謳歌し7年にわたって調整を経験しておらず、米経済は世界各国のなかで最も好調でした。そこへ「恐怖」が台頭。タイ、インドネシア、韓国を始めとしたアジア危機が席巻し、ダウ平均は1日で554.56ドルもの急落を示現してしまいます。しかし、マーケットはまもなく見事に回復へ反転。米GDPが世界経済の鈍化をはね除ける立派な数字を叩き出した結果、S&P500は1000pを突破。翌年の3月までに30%も急騰したのです。

もちろん、現状では海外依存度の高いフィリップ・モリス・インターナショナル(PM)、売上の69%を海外が占めるアナログ・デバイシズ(ADI)は避けた方が賢明でしょう。逆に百貨店大手メイシーズ(M)やディスカバリー・フィナンシャル(DFS)など、米国内銘柄が狙い目と言えます。ウルフ・リサーチのクリス・セニエック氏は、特に内需関連でPERの低い銘柄に注目。13.1倍のコールズ(KSS)、14.9倍のコナグラ・フーズ(CAG)、10.7倍のウェスタン・ユニオン(WU)、14.4倍のクエスト・ダイアグノスティクス(DGX)などを候補として挙げていました。

両コラムをみると、弱気派と強気派で米株安の解釈がいかに異なるかがお分かり頂けたかと。どちらに軍配が上がるのか、ひとまず決算発表がカギを握ります。

(カバー写真:Breaking Energy)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年10月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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