松島法務大臣の高等な辞任戦略 --- 増沢 隆太

2014年10月23日 00:55

第二次安倍改造内閣の目玉である「女性の活用」がもろくも崩れ去った、小渕経産大臣、松島法務大臣のダブル辞任は、安倍政権への本格的逆風を感じさせる。絵に描いたような典型的二世政治家・小渕優子氏と、東大出・朝日新聞出身のエリート・松島みどり氏は、大きくその属性や立場を違えど、安倍政権の「女性活用」という看板であり、その広告塔としての役割を担っていた点は同じである。


早くから「チラシ」と称した「うちわ」の大量配布で大騒ぎになっていた松島氏だが、ノラクラと弁明をして時を稼ぎ、あわよくばウヤムヤ決着を狙っていたのかと思いきや、今回、後から出てきて大騒動に発展した小渕問題で、松島氏は、その見事な戦略性を見せつけたといえる。

断っておくが、松島氏の行為は倫理観からも、そのノラクラした逃げの態度からしても、何一つ政治家としての是認できる点がないことはいうまでもない。ただし、起こった事態を収拾するためのコミュニケーション戦略として、謝罪を引き伸ばし、辞任カードを切ったタイミングは見事としかいいようがないといえる。

もし小渕氏辞任のタイミングを狙っての作戦だったとしたら驚きだが、恐らくそれは結果論であり、辞任カードの切り方を練りつつ、最高のタイミングを図っていたと見るべきだろう。つまり、辞任はいずれせざるを得なくなるとの判断は既にしていたものの、その「ベスト」タイミングを探っていたのである。

そのベストとは何か? 最も自分への批判が低くなるタイミングである。

飽きやすい大衆は、一時盛り上がった批判も時の流れで忘れ去ってくれる。要はもっと大きな事件が起きれば、国民は簡単に注意をそちらに向けてくれることを見切っていたのである。

小渕氏辞任は事件としてはたいしたものではなくとも、同じ安倍内閣閣僚であり、なおかつ広告塔となった看板大臣であることから、現時点で考えられるベストタイミングだと判断できる。有名2世議員であるが故に、松島氏より大きな関心を集まる可能性が高く、ダブル辞任によって松島氏は、最大でも全体の半分の関心しか集めずに済むことになる。

上手くすれば、「将来の女性首相候補」「清廉イメージ」の小渕氏の方に関心が集まる可能性も少なくない。

ここを見切って、正に電撃戦の如く辞任を発表という流れに持って行ったことは、松島氏の判断力とタイミングを見る能力の高さだといえる。これは皮肉ではない。

撤退戦は、あらゆる戦いにおいてもっとも難しいといわれている。ゆえに「殿(しんがり)」戦を成功裏に収められるのは有能な武将だけっだった。

辞任という、「撤退戦」を展開するための戦略として、野党やマスコミの批判をじっと受けつつ、ノラクラと受け流して時間を稼ぎ、ひたすら時を待った姿勢は、松島氏の戦略性の高さを示すものだ。批判にさらされながらも「時機を待つ」ことは簡単ではない。書生や秘書上がりの、たたき上げ政治家でなければ、恐らく2世政治家のような温室育ちでは耐えられない苦痛ではないだろうか。ひ弱なエリートかも知れないという松島氏のイメージが、今回この皮肉な結末によって、結果として氏の能力の高さを証明できたことになったといえる。

増沢 隆太
東京工業大学大学院 特任教授
組織コンサルタント

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