悪質な懲戒解雇という人員整理を無くすには!?

2014年10月30日 05:09

昨今、中小企業を中心に懲戒解雇を悪用した人員整理が横行しているようです。懲戒解雇とは、違法行為や重大な違反行為を犯した社員に対して、会社から課せられる制裁罰です。会社の業績不振などによる整理解雇や普通解雇とは異なり、労働者は極刑ともいえるほどの不利益を受けることになります。


従って懲戒解雇は、厳格な判断のもとに慎重に有効性が判断されなければなりません。ところが、社員を解雇するために、事件を捏造して懲戒解雇に及ぶ手法が後をたちません。

●ある会社の事例

ある会社で実際にあった懲戒解雇の事例を紹介します。都内の某広告代理店に勤務する佐藤氏(仮名)は、営業部門の部門長として勤務していました。ある日、社長に呼ばれ、「会社の業績が悪いから今月末で退職してもらう。これは取締役会の決定事項だから拒否はできない」と、突然退職勧奨を受けました。

佐藤氏は、回答を保留し継続的な話し合いを社長に求めました。ところが社長が忙しいことを理由に話し合いを拒否しました。時期は既に12月中旬に差しかかっており、年末を前になし崩し的に強引に解雇されることを予見した佐藤氏は、知人の弁護士に依頼をして、話し合いによる協議を開始しました。

これを知った社長は激高し懲戒解雇を強行しました。懲戒解雇の理由は業務命令違反です。「現在の仕事は会社として認めないから懲戒解雇に処する」という理由です。佐藤氏は、解雇無効による地位確認と未払い賃金の支払い、損害賠償を求めて訴訟を起こしました。そして最終的に、勝訴を勝ち得るまでに2年を費やしました。ここで、佐藤氏が得たもの、失ったものを整理してみます。

佐藤氏が得たもの
1)懲戒解雇の履歴が消える
2)失業保険が満額支給される
3)国民健康保険、住民税の過払い分が返還される
4)未払い賃金及び賠償金

佐藤氏が失ったもの
1)2年という期間にわたり勤労の制限を受けたこと
2)本人及び家族の精神的苦痛
3)離婚による家庭崩壊

失ったものの大きさが分かります。しかし会社は、未払い賃金および賠償金の支払いを実行していません。敗訴をしても支払いに応じない事例は非常に多く、法務省によれば年間約5万件の強制執行の申し立てがされているようです。

私は、学生向けの就活支援や、企業の採用支援をおこなっています。就活や採用に関する書籍も上梓しています。これまでは、大企業偏重の採用市場に違和感を感じたこともありました。最終的には経営者の資質の問題ですが、大企業や上場企業は、株主をはじめとするステークホルダーの厳しい眼がありますから、このように悪質で人の人生を踏みにじるような行為はしないものです。

●解雇規制の緩和はさらなる議論が必要

一方で「解雇規制の緩和」という議論があります。人事コンサルトの城繁幸氏の「10ヵ月分の基本給を支払うことで金銭解雇を認める」という論点がありますが、これには一定の意味があると思われます。

現実的な問題として、大手企業といわれる企業群に勤務する人は1割にも満たないのが実状です。労働者にとって、10ヵ月分の賃金が支給されることが明文化されれば、今回紹介したような悪質な解雇は不可能になります。

ただし日本には労働三権が存在し、日本国憲法第28条にその規定が設けられています。これらの労働基本権との整合性が重要になってくることは明白であり、さらなる国民的な議論が必要であると思われます。

法律で労働者は守られていると言います。ところが経営者が開き直ると労働者はなかなか太刀打ちできません。究極のブラック企業には、社会全体で対処する仕組みが必要でしょう。私自身は、企業側、労働者側、双方の視点をもちながら、様々なケースについて取上げていきたいと思います。

尾藤克之
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尾藤 克之
コラムニスト/経営コンサルタント

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