1270字で投資を語りつくした

森本 紀行

キャッシュフローを生まないものは、資産ではない。逆に、資産とは、キャッシュフローを生むものである。故に、資産価値とは、キャッシュフローの現在価値である。


不動産の価値は、将来の賃料収入の現在価値である。債券の価値は、利息と元本償還金の現在価値である。株式の価値は、将来配当の現在価値である。配当をしないで内部留保された金額が事業へ再投資され、結果として、将来配当の期待値が更に上がる限りにおいてのみ、株式価値の上昇が生じる。

価格の変化は、将来キャッシュフローの金額や確実性(要は量と質)の変化が価値変化につながることを理由として、起こる。時価とは、あるいは取引の価格とは、原理的には、資産価値を基準にして形成される。基準にして、ということは、価値と価格は異なり得るということだ。しかも、価値と価格は大きく乖離してしまうことも珍しくない。

投資とは、第一に、資産から創出されるキャッシュフローを受け取ることである。故に、資産が価値をもつ限り、即ち、キャッシュフローを創出する限り、もっといえば、資産が資産である限り、投資が損失に帰着することはあり得ない。

もしも、投資が損失に帰するとしたら、資産のキャッシュフローを生む力がなくなったときである。また、キャッシュフローを生む力が低下すれば、その分、価値が下がる。つまり、資産の収益性が低下する。故に、投資とは、第二に、キャッシュフローを生む力を守ることである。

もちろん、資産のキャッシュフローを生む力が強くなれば、あるいはキャッシュフローの確実性が増せば、資産価値は上昇する。故に、投資とは、第三に、将来キャッシュフローの量と質を改善する努力である。このことは、資産の属性を変更できる場合には、より重要になる。

例えば、不動産。改修投資をしたり、テナント政策を工夫したり、あるいは管理費用を削減したり、そうした努力をすることで、将来キャッシュフローを増やすことができる。資産価値を上げることができる。同じことは、プライベートエクイティ投資にも当てはまる。積極的な経営関与は、投資先の企業の事業キャッシュフローの改善を目的にしたものに、他ならない。そうすることで、投資先の企業の価値を高くしているのだ。

公開株式や債券は、基本的には、属性の変更はできない。基本的には、というのは、一定の範囲では、積極的な関与も可能だということである。例えば、大株主として株主提案など行なうことは、株式の価値を高めようとする努力の現われである。ただし、そうした活動には、限界がある。だから、より価値の高い銘柄へ入れ替えるのである。より価値の高い銘柄とは、より多くの、より安定的な、将来キャッシュフローが見込める銘柄、株式ならば、将来配当期待の、より高いもののことである。

銘柄選択や資産選択において、より価値の高いものへ入れ替えることは、投資の基本である。それだけではなくて、価値と価格が異なり得るという前提に立てば、同じ価値なら、より価格の安いものへ入れ替えることも、重要な投資行動になる。これが、投資の第四の要素である。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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