安倍政権に「ちゃぶ台返し」はあるか --- 岡本 裕明

2014年11月10日 19:16

「ちゃぶ台返し」の意味を知っている人は巨人の星を見てきた世代でしょうか? ちゃぶ台そのものが何だかわからないという人も多い時代になってきたのですが、そちらの方は自分で調べてもらうとして、最近ふと思ったのが「前任者の全否定」でその傘下にいる人たちは右へ左への大騒動、という絵図であります。


まずはアメリカ。議会の上院、下院を握った共和党はそれまでのオバマ政策へのうっぷんを晴らすかのような「逆流」を起こすことを企てています。医療保険改革、移民制度改革、ロシア、中国、イスラム国などへの外交姿勢、エネルギー関連などについてオバマ大統領の方針と180度転換するような方向で進めるとしています。実際には大統領には最後の一手が残されていますが、選挙で選ばれた議員の意見結果である議会決定をいくら大統領とはいえ、そう簡単にNOを突きつけるばかりでは厳しいことになるでしょう。

とすれば、そこには昨日まではこちらの道、明日からはこちら、と様々な混乱と無駄な時間、エネルギーを費やすことになり、結果として「何だったのか?」ということになりかねません。

日経電子版に大きく取り上げられたのが「再増税延期はマーケットの朗報か」は12月に安倍首相が最終判断する消費税再引き上げについて「真剣に」検討し始めたという内容であります。そこには日経にしては珍しく、発売中の「週刊文春」がリファーされ、年内解散の可能性も指摘しています。追い詰められている、ということなのでしょうか?

全く同じように金融緩和に関して武者隆司氏がその寄稿で「今回の日銀の追加金融緩和に対する批判が多いことは驚きである。多くの学者や政治家、メディアあるいは市場関係者からも、ここまで出鱈目(でたらめ)な金融政策をやるのかという議論が高まっている。」という出だしで世論の流れを書き留めながら日銀の援護射撃をしています。これはやはり、何か違うと思っている方が多い証拠でありましょうか?

日本の政治でもこれからちゃぶ台返しがあるのかどうか、これは分かりませんが、日本人論的には「やりすぎ」は往々にして失敗することになっています。これは人のマインドはある刺激を受けて共鳴し盛り上がっても時間がたつとその刺激の効果が減退するどころか、逆効果すらある、という事であります。「やりすぎ」の人はあるヒットを飛ばすことで人気が上昇し、世間で認知され、それが続くことでカリスマ性すら持つのであります。ところがイチローだって田中将大だってずっと同じペースという事はなく、必ず途切れるのが世の常。あとはハイペースをどれだけ持続できるかにかかってくるかと思います。

会社経営でもそうです。例えば花王は今年の株主総会で社長の澤田道隆氏を除き、役員全員交代という「ちゃぶ台返し」をしています。それは尾崎元規前社長の経営体制を完全否定し、再出発を図るというものであります。業績が極めて悪化するなど目に見えての失態をしたわけではありませんが、カネボウ問題で最終的に尾崎体制を消し去るという強力なメッセージとなりました。

ということはある体制のもとでぐいと引っ張られていた者はある日突然、さかさまのことを言われ、右往左往し、昨日の常識は明日の非常識にすらなってしまうのです。これは皆さんの会社でも人事異動で上司が変わると運営方針がすっかり変わるのと同じです。それは前任者の否定もありますが、その上司が自分のテイストを出し、自分を演出したいという強い願望がそうさせるのでありましょうか? 逆にいうと人はあるものに引っ張られることに心地よさすら覚えているとも言えます。それは人々の変りたいという気持ちであり、そのツボを押すことで反応するという事でしょう。

ただ、あまりにもちゃぶ台返しが多いと国民は辟易としてしまいます。改革とは急にできるものではなく、時間をかけてじっくり攻めた方が副作用も少なく効果の持続性も高いものです。まさに西洋医学と東洋医学の差のようなものでありますが、政治家や企業の社長の様に賞味期限が数年と短い場合にはその間に効果を示さねば「無能」の烙印を押されやすいとすれば上に立つ者も実に大変な時代になってきたものです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年11月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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