バロンズ誌:ロシア、イスラム国、スイスの共通点は? --- 安田 佐和子

2014年11月24日 14:03

バロンズ誌、今週の特集は米国の州債。リセッションで打撃を受けた各州の財政は6年を経て立て直され、今では格付け会社S&Pやムーディーズから15州が最上級の「AAA」を冠しております。企業ではマイクロソフト(MSFT)、エクソン・モービル(XOM)、ジョンソン・アンド・ジョンソン(JNJ)のみですから、対照的ですね。ちなみにアップルはS&Pから「AA+」、ムーディーズから「Aa1」を付与され、最上級の1つ下。逆に米国の州で「AA」以下は、イリノイ州とニュージャージー州のみだといいます。

当サイトが定点観測する「アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート」、今回はこう始まります。世界史に残る著名エコノミストは、共通点がありました。ジョン・メイナード・ケインズ氏はかつて政府が発行する通貨に対し「未開の遺物」と批判。ミルトン・フリードマン氏も、カネを使用するなら「豚の腹肉を使った方がましだ」と豪語しており、そろって金融システムの根幹である「お金」を蔑視していたのです。

現代ではプーチン大統領率いるロシア、イスラム国、そして一部のスイス人の間で共通点が存在します。

「金」、カネではなく「ゴールド」です。

ロイターが国際通貨基金(IMF)のデータを元に報じたところ、ロシア中央銀行(CBR)は7ヵ月連続で金を積み増した結果、10月時点の金準備高は18.9トン増の1168トンに達しました。世界5位の座を維持しております。

イスラム諸国は圏内の共通通貨として金貨、銀貨、銅貨の発行を検討中。国家としての正当性に欠けているだけに、紙幣を発行しても信用不足ですから裏打ちが必要というわけですね。

スイスは11月30日、1)金準備の売却禁止、2)準備資産の20%を金で保有することを義務化——などをめぐり国民投票を実施します。仮に可決した場合、リンゼー・グループの主席マーケット・アナリストであるピーター・ブックバー氏の試算では、スイス国立銀行(SNB)は1500トンの金を購入しなければなりません。

19日時点の世論調査で、支持率は38%で不支持率は44%。10月の44%対39%から逆転。
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(出所:American Bullion)

翻ってSNBはユーロ・スイスフラン(CHF)での防衛地点を1.20CHFと掲げ、一段のスイスフラン高を抑制。通貨安定と退避通貨としての地位を守る意味もあり、Fedのようにバランスシートを5倍に膨らまてきました。しかし、金準備高強化法案を採用すれば中銀の政策運営に制限を課すことになり、「金準備高の積み増しで通貨価値を高める政策=金本位制度」への回帰を担うものとなりえます。

ブックバー氏は、こういいます。「つまるところ金は通貨であり、金の後ろ盾を得ることはアンチ・ドルとしての対抗手段ではない。世界史上で前例のないアンチ・横並び通貨制度への対抗手段」だと。

Fedが量的緩和(QE)を終了させた一方で、日銀は10月31日に黒田バズーカ第2弾を放ち、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用指針見直しとの合わせ技を仕掛けました。11月21日には、中国人民銀行がサプライズの利下げを断行。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁もFed型のQE実施の可能性を点灯させ、バランスシートをピーク時点の2012年3月の水準へ戻すため1兆ユーロ拡大させる意向を表明済みです。

各中銀が行動に出る以前から、金先物は2011年9月の高値1922ドルで天井をつけてから3年以上にわたる下落相場から脱しつつありました。バロンズ誌のテクニカル担当、マイケル・カーン氏は数週間に1250ドルの抵抗線を試し、まもなく1500ドルを目指すと予想します。

FedがQEを終了させたとはいえ、世界の中銀は未だかつてない勢いで紙幣を印刷する状況。1930年代のディスインフレ・デフレ環境当時のように、金は輝きを取り戻しつつあります。

ストリートワイズは、10月FOMC議事録を受けた株式戦略を提示しています。Fedがどんな議論を展開したところで、利上げシナリオは変わらず。ボラティリティまで低い環境も踏まえると、ゴールドマン・サックスのデビッド・コスティン米株ストラテジストは、流動性の低い大型株に注目します。

同氏によると1985年以降、過去12ヵ月平均取引高から発行済み株数を割った回転率が低い銘柄こそ年間で平均8%上回っていました。足元、回転率が0.4以下の銘柄はジョンソン・アンド・ジョンソン(JNJ)、P&G(PG)、バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)、ゼネラル・エレクトリック(GE)、IBM(IBM)。年末にかけたサンタ・ラリーも期待されており、強気シナリオも変化なしといったところでしょうか。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年11月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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