高齢者の所得が上がるような政策を --- 岡本 裕明

アゴラ

今年最後の大きなイベントが終わりました。結果を今さらコメントするまでもないので特段、何も申し上げませんが、この投票率でアベノミクスの信任と言われるとすっきりしない気はします。ただ、野党があまりにもだらしなく、挙句の果てに海江田万里氏や渡辺喜美氏の落選、橋下氏の選挙前からの敗北宣言などを見る限り安倍首相の作戦勝ちとされますが、あまりにもふがいないの一言です。一党の独走は決して良い方向ではないのですから今後は野党の頑張りに期待したいと思います。

それから沖縄での自民党の完敗は要注意だと思います。


さて、北米もいよいよクリスマスムード真っ盛りとなり、法人のクリスマスパーティーもピークを過ぎたところであります。今週からはぽつぽつお休みの人も出てきてビジネスは半休状態になります。日本もクリスマス、年末に向けていつもの賑やかでせわしい年の瀬を迎えることでしょう。

新政権が絶対的に進めなくてはいけないのは経済の構造的改革であります。黒田日銀総裁のバズーカは強力な円安を招いたため、春以降、更なる物価の上昇が見込まれています。それに対して多くの庶民が防衛の姿勢を見せていますがこれでは経済全体の成長がありません。今さら所得倍増論とは申し上げませんが、一年で所得が10%上がる様な施策が必要です。

首相は来年も賃金の引き上げを促すことでその達成を図ろうとしておりますが、今年も大手と中小の間の差は広がるばかりで非正規雇用が中心となった今、賃金上昇を図る為の車輪は増え、一つ、二つ押しても全体が引きあがらない状態になっています。

所得倍増論は池田隼人首相が1960年に掲げた10年で二倍の経済政策でありました。これは達成しています。主には輸出産業を勃興し、雇用を増やし所得を増やすという流れでありますが、所得倍増論が発表される前、「月給二倍論」が検討されていました。ただ、月給という言葉が給与所得者を特定していると思われやすかったことから所得倍増論となったいきさつがあります。

当時と今で大きく変わるのは既にリタイア、ないし、リタイアしそうな高齢者が人口の大きな部分を占めているという事であります。1960年当時は日本は若かったのです。平均年齢は28.5歳でした。今は大体45歳程度になっています。ここから見えるのは高齢者にも一定の所得が増える仕組みを作らなくてはいけないのがポイントなのです。つまり、給与所得者の賃金引き上げだけでは完全に片手落ちになっています。

高齢者が得る所得は投資収入、アパートなどの家賃収入、金利収入の割合が労働収入に比べて多くなってくるかと思います。私ならば一定年齢以上の人の所得に対する税を極めて低廉なものしてしまい、実所得が増えやすい仕組みを作ったらどうかと思います。

憲法第25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあります。安倍首相は憲法改正に意欲的でありますが、私はほとんど話題にもならないこの25条の「最低限度の生活」を「成熟国の国民として健全で引けを取らない生活」に引き上げ、それに対して「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と続ける文言に変えてもらいたいと思います。戦争中ではないのですからこれこそ今の時代にマッチしていないのであります。私はこの条文が小学生の時からずっと不思議であったのです。

そうすることで国の責任はより明白になり、いかに国家を安らかに永続的に成長させられるかはっきりすることでしょう。

多くの信任を貰った政権ですから禍根を残さない運営を期待したいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年12月15日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。