予想が難しいアメリカの消費者マインド --- 岡本 裕明

2014年12月19日 00:19

アメリカ連邦準備制度(FRB)の今年最後の会議が12月17日まで行われました。このところの快調な雇用情勢を踏まえて声明文から「相当期間のちに(金利を)引き上げ」の「相当期間(Considerable Time)」が取れるのではないか、とみられていました。が、その言葉は残り、「…the Committee judges that it can be patient in beginning to normalize the stance of monetary policy…」と引き上げまでには辛抱強く(Patient)待つしかないとしました。これをハト派的発言と言ってしまえばそれまでですが、事前のタカ派的な状況の期待はあっさり萎んでしまいました。


日本の方にはわかりにくいかもしれませんが、通常、中央銀行の政策定例会議が行われるとその決定と共に声明文、更には総裁の記者会見が行われることも多く、政策に変更がなくても声明文や記者会見での言葉一つひとつから中央銀行のベクトルの向きを探ることが常とされています。

つまり、アメリカの今年最後のFOMCで来年の政策や方向感を占う何かがあるのか、それが市場参加者にとって極めて重要な判断材料となります。ちなみにグリーンスパン元議長はその声明が複雑怪奇、難解とされパズルを解くようだ、とされたのに対し、バーナンキ元議長、更には現在のイエレン議長は比較的わかりやすいとされています。

さて、この結果に先立つ同日朝、アメリカの11月のCPIが発表され、前月比でマイナス0.3%と事前予想のマイナス0.1%を下回る結果となっています。コアCPI(食料とエネルギーを除いたもの)は前月比プラス0.1%です。通年で見ると1.3%と1ノッチ下落、コアCPIも1.7%と1ノッチ下落しています。今回の下落の主因はエネルギー価格が2008年12月以来の前月比3.8%の大幅下落となっているなどディスインフレの傾向が止まっていないことに起因しています。

FRBとしては石油価格の下落がまだ続くと予想していれば少なくとも今後数か月のCPIはエネルギーセクターが弱含み、ディスインフレプレシャーはさらに強まることになり2015年にも想定されている利上げへの政策転換には踏み込みにくい状況も想定しなくてはいけません。一部のアナリストは利上げのタイミングを2015年春から秋に後ろに見直し始めています。

過去、先進国の一部では利上げにもう一歩という国がいくつかありました。カナダもその一つであったわけですが、国内の好景気に対して周辺国の景気と一種のダイリュージョン(希薄化)が起き、そのチャンスの芽は潰されました。同じことはイギリスでもありましたが同国のインフレ率の暦年の低下ぶりを見る限り利上げなど考えたことがおぞましいぐらいでありました。EUと日銀はかつて早すぎた利上げという間違えを犯し、その修正には苦労した経緯があります。

アメリカの場合、「ガソリン価格の下落により節約できたお金を他の消費に回す」という発想が根本にあるのですが、アメリカ人が本当にそういう消費者行動をとるのか、これが最大のチェックポイントになるかと思います。よってFRBとしては春ぐらいまでその判断をホールドしてもおかしくありません。消費とは民の消費意欲が強く、「腹いっぱいの状態ではない」という前提があればどこかの支出が減ったことでどこかの支出を増やす消費行動に出ます。

特に経済が成長期にあり、中流がより満足度の高い消費活動を求めている場合にはそのサイクルは期待できます。アメリカは成熟国である一方、健全な人口増加による消費の下支えがある点において机上では案外予想しにくく、消費者マインドの変化を時間をかけてモニターすることに越したことはない、という感じがします。これが「忍耐強く待つ」という意味なのかもしれません。

正直、本件は予想しにくく、経済の状況次第で微妙な判断を迫られると思いますが、地球儀ベースでみると今はタカ派的な見方の時期ではない気がします。

明日、このインフレについてもう少し、易しく、原点に立ち返って考えてみたいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年12月18日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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