東京電力にみる、したたかな「日本人の復活力」 --- 岡本 裕明

2014年12月24日 11:16

関西電力の八木誠社長が2015年3月期に4期連続の赤字になる予想を踏まえ、来年度更なる値上げをしないと16年3月期も赤字になる、と記者会見を行い、同社の悲鳴が聞こえてきそうな状況にあります。これは高浜原子力発電所の3号機、4号機が審査通過を受け、地元の了解さえ取れれば来年春以降の再稼働が見込まれているにもかかわらず、であります。

一方の東京電力。数土文夫会長が来年一年間は値上げをしないと明言しました。理由はコストカットの効果が大きいことが他社との圧倒的な差異であります。しかも東電は来年の柏崎原発の再稼働は見込まない前提になっています。

これにより仮に関電が値上げした場合、モデル料金は関電管轄が日本でもっとも高くなりそうです。


東電と関電の簡単な比較をすると売り上げベースではほぼ倍半分と考えていただいてよろしいかと思います。今年3月決算の売上でざっくり東電が6兆5000億円、関電が3兆円です。ところが東電の場合、2013年3月期の決算で3800億円ほどの赤字を計上し、底打ち、今年の3月では432億円の経常黒字となり、15年3月期には1790億円の黒字を見込み、一般企業であればV字回復と称してもよい状況にあります。なおかつ、昨今の原油安、LNG安で他社との共同仕入れを含め、かつての東電にはあり得なかったフレキシビリティをもってコストカッターの名をほしいままにしております。このままでいけば来年3月の決算の上方修正も大いに期待できるほどになっているのです。

一方の関電は経常利益が12年3月期から3000億赤字、13年4000億赤字、14年1200億円赤字と赤字体質から抜け出せる見込みが立っていません。

資産を見ると12年の東電の資産は5275億円まで縮小していたものが14年3月には1兆2300億円まで回復しているのに対して関電は12年が1兆2000億円だったものが14年には8000億円まで縮小しているのです。

この違いを財務諸表を通じて細かく見ていくことも面白いのですが、もう少し俯瞰して考えてみると日本独特の復活劇が東電にも当てはまる気がしています。

日本航空が2010年1月に会社更生法を出した時、あの半官半民でプライドの高い航空会社がどうやって復活するのだろうと誰もが思ったことでしょう。そしてその再生請負人が稲盛和夫氏でありました。鼻っ柱が強いJALの社員を深い人間力ですっかり違う会社にし、全日空から差別だと強い批判を受けながらも日本のフラッグシップとして確かな復活を遂げたことは疑う余地はありません。

過去、ボロボロになった会社が復活した例はいくつもあります。日産自動車とカルロス・ゴーン氏、家電御三家の復活劇で勝ち抜けしたパナソニックと津賀一宏社長、重電の雄、日立と中西宏明社長などなど皆様の記憶にあるものも多いでしょう。

電力業界はある意味平和だった江戸時代のように各藩がお互いを侵攻しないという安定感の上に経営が成り立っていました。ところが震災、原発事故を契機に東電の責任問題から電力業界の在り方、更には非従来型の発電などこの数年間に恐ろしいほどの変革を遂げています。この改革始まったばかりで更に続くはずですが、政府は東京電力の大手術を通じて日本の電力業界を変えようとしていることは容易く見て取れます。つまり、東京電力が電力業界では最終的には絶対的なエリートになるはずです。但し、多額の税金を投入している以上、ずっと低姿勢でもあるはずです。

そのうち、必ず聞こえてくるのが恨み節。その一番の声が関電になるかもしれません。しかし、東電は今、あらゆる挑戦をして生き残ろうとしています。多少の利益が出ていますが、同社の負っている負の遺産は決算書の数字だけでは見て取れません。

例えばLNG。震災後、日本の電力各社はLNGの安定調達に走りました。その結果、相対の取引において単位当たり20ドルという金額を飲まざるを得ない状況でありました。今、東電は来年から中電と国際入札を通じて劇的に安い価格を得ようとしています。その目標は10ドル以下。これはアメリカやカナダが輸出を計画しているLNGのコストを下回ってしまう可能性すらあるのです。北米の天然ガスは2ドルを切っている中で工夫をすればさまざまなコストカットは可能でしょう。

それ以上に東電の体質が変わってきていると思います。社員は昔の高給、プライドを捨てざるを得ず、福島で罵倒され続けました。私の大学の同期もその一人です。それはJAL再生の際の稲盛和夫氏の影響力に勝るとも劣らぬ「社会人人生への否定」だったはずです。しかし、だからこそ強くなれるのも日本の歴史なのです。人は生まれ変われる、という信念さえ持てば同社は必ず日本の電力業界のリーダーとしていつか戻ってくるはずです。その辛苦を舐めながら耐え、次世代につなげるパワーこそが東電の本当の力であると思っています。

関電に足りないのは小手先の対応だけでなく、抜本的なリストラを含めた改革かもしれません。その差はあと数年もすれば歴然としたものになるし、江戸時代のような安定感をもった経営はもはや存在しなくなるはずです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年12月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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