日本よ、失敗を許容できる社会へ変化せよ --- 岡本 裕明

2014年12月25日 10:45

すっかり2014年話題の人となったSTAP細胞の小保方春子研究員。検証実験の結果、その細胞の確認をすることができず、小保方氏は理研を退職、それが受理され、噂された更なるステージの戦いもなくなることとなり、氏の名前は年が明けるとともにほとんど耳にすることはなくなりそうです。

私は科学的内容が分かりませんので外野として見ていただけですが、どうしても解せないのは小保方氏だけがなぜ、そこまでやり玉に挙がったのか、という事であります。日本では比較的チームワーク主体であり、組織がその顔となる中で本件は本人だけがまるで週刊誌の格好のネタ扱いにされた点はしっくりきていません。


私としては氏がこれから苦節の時を過ごすかもしれませんが、研究者としてSTAP細胞の存在をそこまで信じているなら人生を賭けて探し出してもらいたいと思っています。そのためには彼女が研究し続ける環境を提供することが必要でしょう。多分ですが、国内では厳しいでしょうからアメリカかどこかで続けるのが選択肢としてあろうかと思います。私は研究者としての彼女の次の成長を見てみたいと思います。

日経ビジネスに「社長が選ぶベスト社長」の1位に日本電産の永守重信社長が選ばれました。氏の1位は私も至極同感でありますが、私がそう思う理由の一つにシャープの元社長、片山幹雄氏を幹部として招き入れたことであります。永守氏も70歳ですからそろそろ後進について考えなくてはいけない頃かと思います。片山氏は多分、その候補の一人になるはずです。永守氏は片山氏がシャープという売り上げ3兆円規模の会社社長を40代で経験し、チャレンジし、苦労したことを最大の武器と考えています。

これは永守氏とユニクロの柳井正氏の対談にもあるのですが、両氏に共通しているのは失敗を評価していることであります。永守氏は8勝7敗、とか9勝6敗ぐらいとしているのに対し、柳井氏は自分を1勝9敗と自著で評しているぐらいであります。また、永守氏は片山氏を「たまたま失敗した」と仰っていますが、逆に言えば失敗できる環境が与えられていただけでも素晴らしいのであります。

多くの企業にお勤めの方は失敗経験がないかも知れません。それは企業経営が失敗をしないよう、何重にも対策を施しているからです。よって社員がちょっとしたヘマを犯しても必ずどこかでフォローされるようになっています。これは上司からお目玉を食らうことはあっても社会的に責められるようなことにはなりにくいのです。

その歯止めがかからなかった珍しい例が今年4月、JTBの社員が岐阜県の高校のバス旅行の手配をミスし、社員がそのミスを隠ぺいしようとした事件でした。あれも不思議で社員一人だけが全てをコントロールしている状態がJTBという企業規模で起きうるのだということでした。本件は組織そのものに問題がある場合でこれは褒められる失敗ではありません。

私はもはや、失敗できるのは経営者だけではないかとすら思いたくなるほど失敗への対策が十分にとられつつあります。経営とは道なき道を進むことであり、大きな賭けも存在するでしょう。我々は企業の成功話や研究者の功績、ノーベル賞などを「さも華やかな世界」と思っているかもしれませんが、当事者となれば血尿が出る思いで歯を食いばって頑張って来ているのです。

小保方氏のニュースが私にとってとても嫌な響きに聞こえるのはこれを聞いて多くの研究者、チャレンジャー、経営者、起業家などいわゆる挑む人々にとって失敗した時のさらし首の絵図を見せられてしまい、萎縮しやしないだろうか、という点であります。

このブログで何度も書かせていただいているように日本では失敗者はその十字架を一生背負わされる運命となりやすいことであります。人事異動で新たに部署に配属になった人を見て「あの人、以前、あの問題を起こした人よ。」とこそこそ話でその人の過去がいつまでたっても消えず、挙句の果てにその人のしゃべる言葉そのものの信頼性がどこにも存在しない世界となりやすいのです。

ノーベル賞を取った中村修二氏がアメリカの大学の教授に収まり、日本に比べてどれだけ心地よいかと述べられていたのは氏が日本で戦った裁判ぐらいは北米ではごく普通であるからであります。私のカフェによく来るお客さんの一人に私と10年続く裁判の原告がいます。しかし彼とはごく普通に会話をし、コーヒーを楽しみ、サンドウィッチを食べてもらい、笑顔で送り出しています。唯一、裁判の話の時だけギアが変るのです。でも日本ではそんなことは絶対にありえないはずです。絶対に。

失敗は本来、誰でもするものです。ところが今は失敗すらさせてもらえない社会だから失敗にぶつかると日本人の態度は異様に豹変します。私にはこれは恐ろしすぎて日本の一番嫌いな部分であります。心をもっと広く持ってもらいたい、常にそう思っています。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年12月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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