ヘッジファンドのヘッジらしくないヘッジ

2015年01月13日 11:30

市場リスクを厳密にヘッジして価格の非効率をとらえること、これにヘッジファンド戦略は帰着する。この原則を守る規律さえあれば、あとは運用者の考えで自由にやればいい。投資対象も、手法も、好きにすればいい。この自由さは、ヘッジファンドの特色であり、発展の原動力である。


典型的なヘッジファンド戦略である転換社債裁定の場合、転換社債のロング、株式とクレジットデリバティブのショートという組み合わせにより、厳格にヘッジファンドの要件を充足している。

また、株式等のロングショートは、割安な銘柄をロングする一方で、市場リスクはショートによりヘッジされている。ヘッジには、いろいろな方法があり得る。割高な銘柄をショートすれば、二重の投資機会を獲得できることもあろう。ある割安な銘柄に対して、その銘柄と価格変動パタンの似た別の銘柄をショートする、いわゆるペアトレードでもいい。ある程度の数の銘柄をロングするなら、インデクスのショートも有効かもしれない。

手法はどうあれ、ヘッジファンドの本質は、市場リスクを厳密にヘッジして価格の非効率をとらえるという規律にある。しかし、このようにヘッジファンドの本質を狭く定義すると、ヘッジファンドでなくなるヘッジファンドができてしまう。そういうときには、ヘッジの概念を拡張する、ここに、ヘッジファンドの自由さがある。ただし、運用者は、決して、この原則の規律を忘れてはならないのだが。

例えば、ディストレストである。ディストレストにヘッジはない。ところが、究極の逆説として、デフォルトした社債には、信用リスク自体もない。信用リスクとは、デフォルトするかどうかのリスクだからである。しかも、市場取引が行われなくなるから、市場価格変動もなくなる。

では、何のリスクが残るのか。それは、法的手続きにかかわるリスク、手続き終了後に分配される金額の見込みにかかわるリスクである。その見込み金額よりも安く破綻証券を取得すれば、それが利益になるというのが、ディストレスト戦略の基本なのである。

つまり、ディストレストの場合、投資機会そのものが、市場リスクを遮断しているのだから、ヘッジがなくとも、ヘッジファンドの要件を充足している。ある意味、完全なヘッジファンド戦略である。

では、マクロはどうか。唐突だが、金に投資することを例に考えてみよう。金に投資することは、金という商品の市場価格変動リスクそのものを取り込むことだから、ヘッジファンドの投資戦略の基本からはずれている。しかし、金に投資することが、何か別の大きな市場リスクに対するヘッジだとしたら、どうであろうか。

例えば、信用秩序そのものの崩壊、というような大きなリスクのことである。ユーロやドルをショートし、金をロングするということは、信用秩序の不安という投資の機会を切り出すという意味で、一つのヘッジファンドの手法として成立し得るのではないか、ということである。

つまり、その名の通り、マクロな視点に立って、様々な投資対象を売りかつ買うことを通じて、大きな投資機会に賭けていくこともまた、ヘッジファンドの一つのあり方として、認め得るのである。もちろん、この同じ方向に、マネッジドフューチャーズもあるのである。

しかし、ヘッジ概念を拡張するといっても、どこかに限界があろう。その限界の先には、多数の似非ヘッジファンドが存在しているのである。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
twitter:nmorimoto_HC
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