石油価格「是正」と低インフレからの脱却 --- 岡本 裕明

アゴラ

アメリカの12月の雇用統計は事前予想を上回る25万2千人の純増で失業率は2ノッチ改善して5.6%となりました。年間を通してみれば労働市場の改善は1999年以来となり、ほぼ300万人分の仕事が増えたことになりました。統計的にみるとアメリカの人口のほぼ1%分の雇用を生み出したことになります。ちなみに日本ですが、あくまでも参考ですが、就業者数を過去1年で比べると52万人増(11月統計ベース)で人口比では0.4%となります。多分、日本の失業率が3.5%と非常にタイトな状況になっていますので雇用の弾力性が薄れている可能性があるのでしょう。


そう見ればアメリカの雇用はまだまだ改善の余地はあります。いわゆる雇用統計に出てくる失業率はU3指標ですが、U6という家事育児中の人、やむを得ずパートタイムで甘んじている人、職探しをあきらめた人を加えた指標ではまだ失業率が11.2%と高い位置にとどまっています。U6はリーマン・ショック前の2007年に8%程度でありましたので改善幅はまだまだあるということです。ちなみにイエレン議長はこの指標を重視しているとされています。

全般的には失業率うんぬんより労働の質に目が向き始めているように思えます。賃金の改善が悪く、「雇用を生めども給与上がらず」という流れはアメリカの製造業もグローバル化の波にのまれているとも言えそうです。このあたりにも低インフレに悩むアメリカのもう一つの原因がありそうです。

さて今週公表された12月のFOMCの議事録から「原油安は一時的」と論じているようです。最近、石油価格の先行きについてごく一部の専門家にもある方向性が出てきました。それはこの石油安も今だけで2015年半ばには戻るだろう、という予想であります。実は私もひと月以上前からそう考えていたのは今後はメリットよりも想定を超えたデメリットが大きくなる可能性があることをゲームプレーヤーが認識するはず、ということです。プレーヤーはアメリカとサウジであり、取り囲むのは市場参加者であります。

政策的に考えればアメリカとサウジが手を組み、石油減産をすれば石油価格は70ドル程度までの回復が期待でき、FRBとしては利上げへの最大のハードルであるインフレ率の改善に弾みがつく、ということになります。

さて、今週のニューヨーク市場では10年物国債のイールドがついに2%を割ってしまいました。金曜日の終値で1.97%です。これは2013年5月以来でありますが、この国債市場の人気とはリスクオフの姿勢の表れと言えましょう。では市場関係者は何に対するリスクを恐れているのか、でありますが、フランスで起きたテロのように世の中全体の動きに不審なところがあり、欧州をはじめ、東南アジア諸国も目標に全く達しないインフレ率を含め、経済の原動力に欠けていることであります。また、ドル高により新興国の経済が萎んできているようにも見え、地球儀ベースでプロテクティブになっていないでしょうか?

アメリカの株式市場もその揺れる心理を如実に表しているようで、月曜日の寄り付きが17774ドルだったものが下は17268ドル、上は17910ドルまであって17740ドルで終わっています。年初としては乱高下と言ってもよいかと思います。恐怖指数も今週火曜日には恐怖の基準とされる20を超えてほぼ23までつけるなど昨年10月からの恐怖指数チャートは特にブレが大きくなっています。

まさに一挙一動といったら良いのでしょう。

日本は三連休。良い連休をお過ごしください。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2015年1月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。