ベージュブック、原油安の影響の捉え方はニュートラル --- 安田 佐和子

アゴラ

米連邦準備制度理事会(FRB)が14日に公表したベージュブック(11月末から1月5日までカバー)は、2014年12月分に続き緩やかな成長軌道をたどっていることを確認しました。景気動向に対し「経済は、拡大を続けた(continued to expand)」と総括。前回の表現で据え置いています。全体的に「数ヵ月先に小幅な成長加速(somewhat faster growth over the coming months.)」を予想する地区連銀が多いなかで、カンザスシティ連銀は「わずかな(slight)」成長にとどまり、原油安を背景にダラス連銀は「成長の鈍化(growth slowed)」を報告していました。原油安については、強弱両面の効果を示しニュートラルなスタンスを表明。ガソリン価格の下落が消費と観光・旅行を押し上げたと指摘した半面、採掘活動や設備投資の減速を報告していました。物価に対しては、米11月PCEデフレーターの鈍化に反し「わずかに(slightly)」上昇したと明記し、過去2回の「抑制されている(subdued)」から上方修正。賃金は、引き続き特殊技能職の間での上向きを報告していました。


今回、サマリー部分で使用されたキーワードの登場回数(同じ単語の変化形を含む)は以下の通り。

「増加した(increase)」 →33回、前回は38回
「強い(strong)」→8回、前回は20回
「緩やか(moderate)」 →17回、前回は2回
「穏やか(modest)」→15回、前回は1回
「弱い(weak)」→3回、前回は1回
「底堅い(solid)」→2回、前回はゼロ回
「安定的(stable)」→1回、前回はゼロ回

BNPパリバのデレク・リンゼー米エコノミストは、今回の内容を受け「各連銀の報告を含めたベージュブック全体で『弱い (weak)とする文言の登場回数は17回と前回と変わらず、過去平均を大幅に下回る水準を保った」と評価しています。バークレイズのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストは、「米経済見通しを明確に変更する内容ではない」とまとめていました。全体的にアップビートな文言が減少し「緩やか」「穏やか」が台頭してきましたが、12月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で明らかになった通り出口を見据えるFedの方向性は維持される公算です。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年1月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。