日本は対イスラム戦争の泥沼に足を踏み入れたのか --- 岡本 裕明

2015年01月21日 15:47

実に厄介なことになった、これが私のイスラム国からの2億ドル(約240億円)の身代金要求ニュースに接した際の第一印象であります。

もちろん人質に取られたお二方、そしてご家族やご友人にとってはとてつもない憤りと共にこの問題が平和裏に解決することを望んでおられると思います。これは政府も日本国民もそして私も全く変わりない気持ちでありますが、この解決への道筋は相当苦戦しそうな気がすると共にこれを契機に日本が否が応でもイスラム国との接点をより深めてしまった感が否めません。


先ず、あのビデオを見る限り、イスラム国側の実に周到な準備が見て取れます。まるで安倍首相があそこであの演説をするのを待っていたかのごとく、それを受けて見事なタイミングで身代金要求を行っています。しかも人質のお二方は昨年から行方が分からなくなっていたという事はこの時がくるのをずっと待ち構えていたのか、という事になります。

しかし、正直、それはないだろう、という気がします。ビデオの合成の可能性も指摘されていますが、(少なくとも昨日のNHKの夜7時のニュースではビデオそのものは本物とし、合成の点は触れませんでした)私はあまりにも出来過ぎた話そのものが不自然ではないかと考えています。また、お二人の顔はそれほどやつれていません。人質として何か月も拉致されていたらあのような状態ではあり得ません。

人質の一人、後藤さんの家族に昨年時点で既に身代金要求をするメールが届いていたとの最新情報とすり合わせればビデオそのものは昨年に既に撮影されてその準備をしていたとする方がナチュラルな気がします。

次に安倍首相の今回の中東訪問、そして2億ドルの支援表明が紛争国に要らぬ刺激をした、というのが私の見立てです。日本がいまだ金満国家で経済的に成功しているイメージは強く、その上、日本のお得意の手法である資金提供という手段で外交貢献するやり方を相手方は見透かしたのではないでしょうか? わざわざ、イスラム国と敵対する地で大々的に資金提供を表明したのはテロとの対決姿勢を前面に打ち出すプラスの面に対してその防御の脇が甘かったとも言えます。

イスラムの地域、国々ではその教義の解釈を巡り様々な部族や派閥が入り乱れています。イスラム国の主導はアルカイダとは切れているグループとされています。つまり、誰が味方で誰が敵かその関係すら複雑怪奇な状態になっているとも言えます。その中で経済的結びつきを基調に日本側の理論を無理くり押し出すと泥沼にはまるという事ではないでしょうか?

アメリカがイスラム国への対策に今一つ踏み込み切れないのはそのあたりにも理由がありそうです。

イスラム国の画像を見ていて思うのはこの人たちの生活はどうなっているのだろうか、という事であります。いくら人質から取った身代金や銀行強盗、更には産出した石油の売却代金があったとしても食料などの物資は相当必要であり、どこからか「購入」しなくてはいけません。となれば、その物資の補給路を完全に断つのは一つの戦い方かもしれません。

豊臣秀吉が水攻めをしたのは補給路を断つ戦法で、時間がたち、城に籠城した者は食料がなく、空腹のあまり、戦意を失ったとされています。

安倍外交は非常に押し出しが強く、分かりやすい半面、敵も作りやすいというのが私の印象です。勿論、敵が49人いても51人を見方につければ多数決の原理で勝ちではあります。しかし、外交とは選挙活動ではありません。選挙は票数の理論ですが、国際社会における立ち振る舞いとは長期的視野に立って戦略的に且つ、狡猾に進めなくてはいけません。この原点に立ち返りながらテロリズムが発生するその本質までさかのぼってみる必要がありそうです。

実に厄介な問題ではありますが、国際紛争解決に長けている諸国の支援を貰いながらどうにか、この難局を乗り越えてもらいたいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2015年1月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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