バロンズ誌:ECBが大規模QE開始宣言、Fedへの影響は? --- 安田 佐和子

2015年01月26日 01:27

バロンズ誌、今週の特集号はマーケットの重鎮10名によるラウンドテーブル第2弾です。今年のベスト投資アイデアについて、ヒントを与えてくれていますよ。ご興味のある方は、ぜひ本誌でどうぞ。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、テーマは欧州中央銀行(ECB)が発表した大規模量的緩和(QE)が与える米連邦公開市場委員会(FOMC)の影響です。

欧州でも米国でも、直近は”デフレ”が焦点の1週間となりました。米国では、米12月消費者物価指数コアが予想外に鈍化しただけでなく、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)で奇しくも”デフレゲート”が浮上。アメリカン・カンファレンスの覇者となりスーパーボウルへの切符をつかんだ対インディアナポリス・コルツ戦で、ニューイングランド・ペイトリオッツが使用したボールの空気が抜けていた問題が発覚したのです。通常アメフトではそれぞれのチームが12個のボールを用意しますが、そのうち11個の空気圧が規定以下で捕球しやすくなっていました。

ニューイングランド・ペイトリオッツといえば、今から13年前の2002年に遡ると不正にぶつかります。スーパーボウルで対戦したセントルイス・ラムズの練習風景をビデオテープに収め、劣勢とされたペイトリオッツが悲願の初優勝を飾るに至りました。撮影したとされるペイトリオッツのスタッフが沈黙を守り、事件は闇に葬られたんです。それから5年後の2007年、またも事件が起こります。ペイトリオッツVSニューヨーク・ジェッツで迎えた頂上戦では、有利とみられたペイトリオッツがジェッツのサインをビデオ撮影したス問題”スパイゲート”が発覚。しかしNFLのコミッショナー、ロジャー・グッデル氏が証拠を破棄し、ペイトリオッツはコーチのビル・ベリチック氏に罰金50万ドル、チームに罰金25万ドル、そしてドラフト一巡目の選択する権利が剥奪されるだけで実質お咎めなしで幕引きしました。

オートレースには「ズルしないのなら、勝ちにいこうとしていないのも同然(if you’re not cheating, you are not trying)」という格言があるとか。まさにペイトリオッツの姿勢は、この言葉を踏襲したものと言えます。

欧州でのデフレと言えば、もちろんECB。デフレと闘うため月額600億ユーロ、総額1.14兆ユーロの国債を含む資産買入を決定し、市場の期待に応えました。ドラギ総裁は「できることは何でもする」との自身の発言を実行に移したかたちです。Fed型のQE開始宣言のおかげで、ユーロドルは定例理事会後の23日には一時1.1115ドルと2003年9月以来へ沈みました。

ペイトリオッツのクォーターバック、トム・ブレイディ選手の脳裏にはチームの不正問題だけでなく家計事情もよぎったことでしょう。妻のジゼル・ブンチェンさんといえば2007年、新規契約には「ドル建てではなくユーロ建てでギャラを払って」と要求したことで知られます。ユーロドルといえば、金融危機が発生したばかりの2008-09年は1.40ドル割れですら推移しており、2012年半ばに1.20ドル台まで下落する程度でしたから、彼女の選択は当時であれば間違ってなかったわけです。2014年から夫に追随してアンダーアーマーの広告塔として活躍してますが、こちらもユーロ建てなんでしょうか。

スーパーカップル、セレブ夫婦長者番付の常連であります。

gisel
(出所:giseleofficial/Instagram)

ECBの決定を受け、ユーロ圏各国の金利は過去最低を更新しました。独10年債利回りは0.36%、仏10年債利回りは0.54%、スペイン10年債利回りは1.37%、イタリア10年債利回りは1.52%。対して米10年債利回りは1.79%ですから、米国への資金流入は当然の成り行きにみえます。ただマクロメイブンズのステファニー・ポンボイ氏は、レポートで「米欧の実質金利差は0.55%で、ユーロ圏のインフレが0.4%からゼロあるいはそれ以下になれば実質金利スプレッドはさらに縮小する」と指摘していました。為替市場での急速なユーロ売りで、米欧金利差を織り込んだきたとも考えられます。

今後のカギを握るのは、米連邦公開市場委員会(FOMC)でしょう。2014年12月FOMC後の会見でイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は「少なくとも向こう2回の会合で」利上げに着手しないと明言しました。つまり、来週27-28日会合と3月17-18日には行動しないことを意味します。足元のFF金利をみると早期利上げの可能性はほぼゼロとされ、6月16-17日開催のFOMCでの利上げ織り込み度はわずか12%にとどまる状況。7月28-29日開催のFOMCで28%、9月16-17日開催のFOMCで44%、10月24-25日開催のFOMCでやっと62%にいたる程度にとどまっています。

Fedのゼロ近辺金利政策と3度に及ぶQEは流動性を拡大させ、市場を市場をゆがめ、資産価格を引き上げ、労働参加率の低下という副産物を招きながら失業率を改善させました。流動性拡大は水圧破砕(フラッキング)を通じたシェール・ブームやITブームを生み、23日にはクラウド・ストレージ会社ボックスが新規株式公開(IPO)を通じ、初めて時価総額数十億ドル単位企業の仲間入りを果たします。賛否両論あるでしょうが、一定の効果が現れたのは間違いありません。

欧州はどうでしょうか。ユーロ安を除いて効果が及ぶかは不透明で、金利差と信用スプレッドは最低水準にあり、企業は借り手探しに四苦八苦しています。別の中銀も軒並み利下げに踏み切り、ユーロペッグ撤廃を決断したスイスのほかデンマーク、カナダに続いてスカンジナビア諸国も追随する公算。イングランド銀行は利上げ票を投じた2名の参加者が据え置き派にまわり、利上げ開始時期を今年7-9月期から10-12月期に後ろ倒しさせる示唆を与えました。利下げ・緩和策競争は、通貨戦争の様相を帯びてきています。

今のところ、通貨戦争に米国は我関せずといった面持ちです。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のFed番、ジョン・ヒルゼンラス記者のFOMC予想記事でも、出口路線は変わらずと報じていました。とはいえ、ドル高が米経済に悪影響を及ぼせば、黙っていられないでしょう。10-12月期の決算発表および見通しこそ、ドル高のマイナス効果を見極める試金石となりそうです。

ストリートワイズは、あらためて強気の芽を伸ばしております。足元、株式ストラテジストは2015年見通しをニューイングランド・ペイトリオッツのボールよりしぼませており、S&P500構成銘柄の1株当たり利益見通し平均はエネルギー関連が重しとなり126ドルと6.5%の上昇しか見込んでいません。約3ヵ月前の136ドル、14%の上昇とは隔世の感があります。これこそ、グッドニュースなんです。

S&P500の構成銘柄のうち、決算発表を実施した企業はわずか20%以下で1株当たり利益の伸び率は4%増に過ぎません。とはいえ、このうち81%が予想を上回る利益を計上したにも関わらず、株価は年初来でわずか0.2%。特に裁量消費財、すなわち自動車セクターやホテル関連、服飾ブランドなどは2%の下落を示しており、ガソリン価格の下落という恩恵が反映されていません。そう、伸びしろは大きいんですね。

JPモルガンのストラジスト、デュブラウコ・ラコス=ブジャス氏は原油安を背景にエネルギー関連が過去2四半期S&P500構成銘柄の利益を5%押し下げたといいます。ただし、向こう数四半期に10-12%の上昇を予想。原油安に伴い1世帯750ドルの実質所得の増加が期待されるだけに、今が押し目買いのチャンスといったところでしょうか。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年1月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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